2016 Fiscal Year Annual Research Report
UHP chromitite and microdiamond first reported from Japan
Project/Area Number |
16H02238
|
Research Institution | Kumamoto University |
Principal Investigator |
西山 忠男 熊本大学, 大学院先端科学研究部(理), 教授 (10156127)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
吉朝 朗 熊本大学, 大学院先端科学研究部(理), 教授 (00191536)
森 康 北九州市立自然史・歴史博物館, その他部局等, その他 (20359475)
石丸 聡子 熊本大学, 大学院先端科学研究部(理), 助教 (60464046)
磯部 博志 熊本大学, 大学院先端科学研究部(理), 教授 (80311869)
大藤 弘明 愛媛大学, 地球深部ダイナミクス研究センター, 教授 (80403864)
|
Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2020-03-31
|
Keywords | ダイヤモンド / 石墨 / コース石 / 超高圧変成作用 / 蛇紋岩メランジュ / 沈み込み帯 |
Outline of Annual Research Achievements |
長崎県の白亜紀低温高圧型変成岩、西彼杵変成岩ならびに熊本県の白亜紀高温低圧変成岩、肥後変成岩より、ダイヤモンド―石墨集合体の微細な包有物を変成鉱物中に発見し、鉱物学的検討を行った。まず西彼杵変成岩中のものは、これまで蛇紋岩中のクロミタイトに包有されることを確認していたが、今年度の調査で蛇紋岩メランジュに伴われる泥質片岩ならびに、蛇紋岩がCO2の作用で炭酸塩岩化した岩石(石英炭酸塩岩)中のシュードタキライト中にも産することが確認された。泥質片岩中のものは強く変成された黄鉄鉱中の包有物として産し、クロミタイト中のものと同様に、顕微ラマン分光法では1330cm-1付近のダイヤモンドのバンドと、1580cm-1, 2680cm-1付近の石墨のバンドを示すことが特徴である。またこの試料を東北大学の寺内正己教授の協力により、EPMA-SXES法で検討した結果、sp2,sp3の両方の構造が混在していることが判明した。このことより、この包有物はダイヤモンド―石墨集合体であると結論した。このことは西彼杵変成岩が超高圧変成岩であることを示すが、一方、超高圧変成岩に特徴的なコース石が発見されていないことが我々の発見に批判的な意見を生んできた。今回我々は、コース石類似の組織をしめす石英包有物(放射状クラックを伴うもの)をザクロ石中発見した。現在は石英に転移しているものの、コース石包有物特有の組織を示すことから、今後探索を続ければ、コース石そのものの発見も可能と考えている。 一方、肥後変成岩からは、これまで発見していたクロミタイト中のもの以外に、ザクロ石からもダイヤモンド―石墨集合体を発見した。これは、二重累帯構造を示すザクロ石に特徴的に産する。西彼杵のものと同様のラマンスペクトルを示し、EPMA-SXES方でもsp2, sp3構造の共存が確認された。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
西彼杵変成岩と肥後変成岩の両方から、新たな産状のダイヤモンド―石墨集合体を発見することができた。これまで蛇紋岩中のクロミタイトからの発見のみであったが、蛇紋岩の周囲の堆積岩起源の変成岩からもダイヤモンド―石墨集合体を発見した。このことは、蛇紋岩だけでなく周囲の変成岩全体も、超高圧変成作用を受けたことを強く示唆するものである。また、顕微ラマン分光法による同定だけでなく、今回東北大学寺内正己教授の協力を得て、電子顕微鏡に装着したソフトX線回析装置により、sp2,sp3が混在する物質であるとは判定されたことで、ダイヤモンド―石墨集合体であることが独立した2つの手法で確認された。これはわれわれの主張に対する信頼性を大きく増す、重要な進歩であった。今後は透過型電子顕微鏡による確認を行えば、だれからも文句のつけようのない結果となると期待される。 また、西彼杵変成岩においては、地質調査によって、ダイヤモンドー石墨集合体を産するのが、雪浦周辺の強い変形構造を示す地質体に限られていることが分かってきた。この地質体と周囲の変形の弱い地質体(同じ結晶片岩であるが)との関係、ならびに、ダイヤモンド―石墨集合体を産する地質体の分布範囲を明らかにすることも重要な仕事となる。 肥後変成岩の場合は、二重累帯構造を示すザクロ石中の包有物としてダイヤモンド―石墨集合体が発見されたことで、新たな調査対象が得られた。これまでの調査で、肥後変成岩の分布地域のかなり広い範囲からダイヤモンド―石墨集合体が産するらしいことが分かってきた。その分布範囲を抑えることが今後の重要な仕事となる。
|
Strategy for Future Research Activity |
1.西彼杵変成岩中の泥質片岩中のダイヤモンド―石墨集合体は10ミクロンほどの大きさのものが発見されており、これまでクロミタイト中の1ミクロン程度のものと比べ、研究が容易な試料が手に入ったことになる。これにより、これまでうまくいかなかった透過型電子顕微鏡による観察と構造決定も可能と期待される。研究分担者の愛媛大学大藤弘明と協力して、透過型電子顕微鏡による検討を進める。また肥後変成岩の泥質片岩中のダイヤモンド―石墨集合体も10ミクロン程度のものが発見されたので、これについても同様の検討を進める。 2.西彼杵変成岩の泥質変成岩からのコース石の産出を確認する。これにはかなり多量の薄片作成が必要で、運も味方につける必要があるが、発見の可能性はかなり高いと思っている。肥後変成岩は高温の変成作用を受けているので、コース石発見の可能性はかなり低いが、やはり発見にむけて多数の薄片を作成し、努力する。 3.西彼杵変成岩は典型的な沈み込み帯であるが、その中の蛇紋岩メランジュに伴った部分だけからダイヤモンド―石墨集合体が発見されている。ダイヤモンド―石墨集合体を産する地質体を超高圧ユニットと呼ぶことにすると、その超高圧ユニットがどのように分布しているのか、周囲の非超高圧ユニットとの関係はどうなっているのか、地質調査によって解明し、そのテクトニクスについて考察を深める。肥後変成岩については、かなり広い範囲でダイヤモンド―石英集合体の産出が確認できそうで、まずはその分布を明らかにする。現在のところ、ザクロ石―コーディエライト帯のみからその産出を確認しているが、他の鉱物帯からの産出がないかも確認する。肥後変成岩の場合は、全域が超高圧変成作用を受けた可能性が高く、白亜紀の高温低圧型変成作用との関係を明らかにすることも重要な課題である。
|
Research Products
(2 results)