2018 Fiscal Year Annual Research Report
Framework and Methodologies of Seismic Design for Anti-Catastrophe Property
Project/Area Number |
16H02357
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
本田 利器 東京大学, 大学院新領域創成科学研究科, 教授 (60301248)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
高橋 良和 京都大学, 工学研究科, 教授 (10283623)
秋山 充良 早稲田大学, 理工学術院, 教授 (00302191)
野津 厚 国立研究開発法人海上・港湾・航空技術研究所, 港湾空港技術研究所, 領域長 (60371770)
片岡 正次郎 国土技術政策総合研究所, 道路構造物研究部, 室長 (40356118)
宮本 崇 山梨大学, 大学院総合研究部, 助教 (30637989)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 危機耐性 / 耐震設計 / 免震 / 入力地震動 |
Outline of Annual Research Achievements |
危機耐性の設計手法のフレームワークとして,想定される損傷フェーズの発生頻度に基づく手法について,臼型滑り面を用いた免震支承を対象にした基礎的な検討を行い,その妥当性について検証した. 危機耐性の要素技術としては,昨年度の検討を継続し,5種類の異なる臼型滑り面形状を製作し,提案橋梁の水平二方向震動実験を実施することで,最適な摩擦振子と滑り面形状を同定した.また,外力条件の変化に対する感度の低い構造についての検討を継続した.設計基準外の地震動に対しても,柱の挙動の不確定性を最小限に留めるため,埋込コンクリートヒンジRC構造にUBRC機構を付加した埋込メナーゼヒンジUBRC柱を提案し,それらの性能を正負交番載荷実験により検証した.その結果,設計基準外の大変形が生じた場合でも,柱基部の軸変形,せん断変形を抑制することができるとともに,UBRC化によって,大変形領域におけるP-Δ効果を打ち消す復元力を発揮することができることを確認した. 入力地震動については,2016年熊本地震の際に断層近傍で観測されたような永久変位成分を含む強震動の計算に適用可能な強震動シミュレーション手法を開発するともに,設計地震動の設定手法に,人工知能技術を応用する検討を行った.構造物の応答から入力波形を逆解析する人工知能モデル等を構築し,入力波形中の支配的な特性の抽出や,任意の応答値を引き起こす入力波形の合成法を提案した. 深刻な外力として断層変位をとりあげ,その予見性および統計的性質の分析、断層変位による構造物の被災事例および断層変位対策事例の分析等を実施するとともに、断層の影響を受けにくい構造形式・設計の考え方を整理した。また,震災後の復興プロセスにおけるインフラの影響について,チリやネパールの復興プロセスについても調査した.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
危機耐性の設計手法のフレームワークについてその有効性を確認したが,実用に向けた定量的な精度検証等の検討を継続する必要がある. 要素技術の開発においては,順調に実験計画を消化しており,3次元震動台で実験可能な大きさの模型を用いた一連の検討の結果,地震時の安全性を確保し,一方で地震後の残留変位を小さくするための摩擦振子と臼型滑り面を見出すことができた.危機耐性を有する構造形式の一つを得ることができたと考えている.一方で,より大型の実験供試体を用いた場合には,寸法効果の影響が表れ,期待した性能を確保できない可能性はある.また,設計基準外事象に対する構造物の挙動の不確定性が小さい構造を鈍構造として概念化し,それを具体的に実現するために埋込メナーゼヒンジUBRC柱を提案し,載荷実験により期待する性能を有していることを確認できた.ほぼ順調に研究が進捗していると考える.一方,実験により,安定的に緩やかに耐力を低下させるためには靱性を小さくさせることが有効であることが分かり,望ましい動的応答を実現するための靱性率と耐力低下率の設計手法に関する課題が明らかとなった. 震源特性の情報がある既往の大地震については,強震動シミュレーション手法の適用性は概ね良好である.また,仮想的な地震動波形群と対象構造物を元に,深層学習モデルを構築したが,被災に対応する応答値を与える地震波形の設定法については課題も明らかとなった.深刻な外力としての断層変位に対して危機耐性を確保するための方策については,状況に応じて望ましい対策も変わることが多く、方策の一般化に課題がある。また,震災復興プロセスの分析においては,インフラ構造物以外の影響がかなり大きい結果となっており,事例の選定や分析に課題が残る.また,本研究の成果を中心に,国内外で海外の研究者とのシンポジウムなども行い,成果の共有をはかった.
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Strategy for Future Research Activity |
危機耐性の設計手法のフレームワークについて,適用事例を増やし,手法としての具体化をめざす.要素技術の開発としては,他の研究機関が有する震動台を借用し,これまでよりも大型(2倍の寸法を想定)の模型を製作し,寸法効果の有無を詳細に確認する.この実験結果を得ることで,実橋梁を想定した,摩擦振子型免震機構を有するRC橋脚の試設計が可能になると思われる.危機耐性構造の設計に用いるべき地震動の設定方法,あるいは要求する安全性や地震後の復旧性について,研究代表者および共同研究者との議論を重ね,危機耐性構造の具体的な形を提示することを目指す.鈍構造を実現するための具体的構造技術開発を推進するとともに,社会全体のレジリエンス向上に資する構造技術の重要性を,構造技術者のみならず計画技術者との共有を図る. 危機耐性を考慮するための入力波については,これまでに開発した深層学習モデルにおいて,特に中間層における出力に注目し,任意の応答を与える入力波形の再現に取り組む.このような深層学習モデルの特性を利用することにより,従来の解析では困難であった,入力波形や構造物の応答にとって支配的な性質の抽出を実現するとともに,任意の性質を有する波形の再現に取り組む.また,ひきつづき極大地震動の計算に適用可能な強震動シミュレーション手法の開発と検証をすすめる. 深刻な外力の考慮について,断層変位の対応を対象にした事例収集と分析を進め,実務に使える形での成果をとりまとめる.また,震災復興の事例について,危機耐性の社会的要素の観点から知見を整理する. そのうえで,本研究の全体の成果と課題をとりまとめる.
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