2016 Fiscal Year Annual Research Report
哺乳類のゲノムインプリンティング機構とインプリント遺伝子の機能解析
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16H02478
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Research Institution | Tokyo Medical and Dental University |
Principal Investigator |
石野 史敏 東京医科歯科大学, 難治疾患研究所, 教授 (60159754)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
石野 知子 (金児知子) 東海大学, 健康科学部, 教授 (20221757)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | ゲノムインプリンティング / インプリント遺伝子 / Peg10 / Peg11/Rtl1 / ゲノムインプリンティング疾患 / PGC / DNAメチル化 / EnIGMA法 |
Outline of Annual Research Achievements |
ヒト染色体14番の父親性2倍体症候群(Kagami-Ogata syndrome)、母親性2倍体症候群(Temple syndrome)の原因遺伝子PEG11/RTL1の機能について解析を進めた。Peg11/Rlt1欠失マウス及び過剰発現マウスをモデル系とした解析で、Peg11/Rlt1の胎盤における機能は、胎児期毛細血管の維持だけではなく毛細血管系の伸長にも重要な役割を果たし、重度の異常の場合には胎児期中期致死につながることを明らかにした(Genes Cells 2017)。また、新生児期致死の原因として胎児側の異常、特に呼吸に関わる筋肉系の異常を詳細に調べている。Peg10遺伝子は初期胎盤形成に必須の機能を持つが、タンパク質としてどの部分に重要な機能があるかを調べるために、保存性の高い部位のみに変異を入れた変異マウスの作成を進めた。面白いことに最も保存性の高いモチーフの一つに変異を持つマウスでは、初期胎盤形成には異常は見られないものの、出生前後での致死となることが明らかになった。保存性の高い理由は致死性に関係することで明らかとなったが、初期胎盤形成には他の部分の関与の方が重要であるという意外な結果であり、他の変異マウス解析をさらに進めている。PGCにおける脱メチル化の解析については、すでに報告しているH19-DMR領域に加え、IG-DMR、IGF2R-DMR、Peg5-DMRにおいてDNA複製阻害剤、PARP阻害剤の影響を調べたところ、父親性インプリント領域と母親性インプリント領域では、これらの阻害剤の効果が違う可能性が示唆された。生物学的意味に関する事項なので、この差の原因についても解析をしている。また、DNAメチル化解析方法としてハイドロキシメチル化とメチル化を区別して同時に解析できる新規法EnIGMAを発表した(Nucl Acids Res 2017)。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
Peg11の胎盤における機能について、胎児毛細血管の維持だけでなく胎児毛細血管系の伸長にも重要なことを明らかにできた。しかし、これで新生児期致死の原因が完全に理解できたわけではなく、胎児側の要因について本年度の研究で明らかにしていきたい。Peg10についてはCRISPR/Cas9法によって、予想機能ドメインの変異解析をするという新しい方向性がうまく機能することが示せたことが大きな収穫である。今後、様々な変異マウスの解析をすることで生化学的機能の解明を果たしたい。PCGにおけるリプログラミングに関しても能動的脱メチル化は父親性インプリント領域でのみ見られる反応である可能性を突き止められたことは収穫であり、モデル系の選択に重要な知見であった。
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Strategy for Future Research Activity |
Peg10及びPeg11/Rtl1タンパク質はLTRレトロトランスポゾンのgag、polに由来し、特徴的なモチーフが保存されている。しかし、アミノ酸配列のホモロジーは20~30%程度であることから、機能は大きく変わったと考えられ、哺乳類では、それぞれ胎盤形成や機能維持に機能している。このような理由で、これらのタンパク質の生化学的機能の予想が難しかった。しかし、CRISPR/Cas9法が開発され、機能ドメインと予想される部位をに変異を入れて解析することが簡単にできるようになったため、これらの機能解析は順調に進んでいる。順々に機能ドメインの絞り込みができると考えている。Peg11については、これまで胎盤以外でPeg11タンパク質の発現が確認されたことはないが、私たちは、ヒト疾患の解析からはPEG11が筋肉の異常に関わる可能性があることを以前報告している。マウスモデルで筋肉での異常に関係するかどうか、固定法や免疫染色の条件検討を加えことでの確認することが必要であると考えている。PGCにおけるリプログラミングの問題は、父親性インプリント領域と母親性インプリント領域で差があることを確実に証明することが、次のステップに大事であると考えている。
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Research Products
(15 results)