2017 Fiscal Year Annual Research Report
Molecular basis of cilia beating mode.
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16H02502
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
吉川 雅英 東京大学, 大学院医学系研究科(医学部), 教授 (80272425)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 繊毛 / クライオ電子顕微鏡 / ゼブラフィッシュ / ダイニン / ゲノム編集 |
Outline of Annual Research Achievements |
真核生物の運動性繊毛・鞭毛は、主に微小管と軸糸ダイニンで構成される細胞内小器官である。高等生物では、組織分化に伴い繊毛も多様化しており、左右軸を決定するノード繊毛の回転運動、精子鞭毛の正弦波様の運動など、様々な運動モードを呈する。それぞれの運動モードは組織の働きと密接に関わっており、異常によって繊毛病の原因となる。しかし、各組織での繊毛の運動モードを制御する仕組みは、明らかになっていない。 本研究では、「組織間で異なる繊毛運動モードは、それを駆動する軸糸ダイニンの違いによる」という作業仮説を立て、これを検証することとした。モデル生物にはゼブラフィッシュを用いる。ゼブラフィッシュはCRISPR/Cas9によるゲノム編集技術が確立されているうえ、我々の研究室では、初めてゼブラフィッシュ精子のCryo-ET構造解析に成功した。これまでに、4つのダイニン組み立て因子変異体についてCryo-ET法によって精子の軸糸構造を解析し、各変異体で異なる軸糸ダイニンが欠損することを明らかにした。変異体精子の運動性異常は、構造解析の結果と相関しており、欠損する軸糸ダイニンのタイプと、精子運動性を対応づけることができた。運動モードの異なる繊毛(精子鞭毛とクッペル胞繊毛)で、変異体の運動性異常の程度は異なっており、我々の仮説を支持している。以上の結果は、https://www.biorxiv.org/content/early/2018/03/26/288837に投稿されている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
概要に書いたように、初期の目的であるダイニン組み立て因子変異体についての論文を投稿中であること、また、さまざまな軸糸ダイニンの変異体についても作成中であることから、「概ね順調に伸展している」と考える。
また、これまでランダムな変異に依っていた当研究室のゲノム編集技術を、相同組み換えによる任意配列の挿入・置換が可能な系に発展させた。G0世代で起きた相同組み換えが、生殖細胞に入り、F1以降の世代に遺伝されることが確認できた。それぞれの軸糸ダイニンの機能を解析するため、現在は軸糸ダイニン重鎖遺伝子の変異体を、同様の技術を用いて作製中である。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は引き続きCRISPR/Cas9を用いた変異体作製を行い、各軸糸ダイニン遺伝子を欠損した変異体系統を確立する予定である。そして、それぞれの変異体の繊毛運動性を解析することで、繊毛運動モードを決定する軸糸ダイニンを明らかにする。また、Cryo-ETを用いた軸糸構造解析から、その構造的な基盤を解明していく。 その際に、精子鞭毛に加えて、新たに単離・精製が可能になった嗅上皮繊毛についてもCryo-ETを用いた軸糸構造解析を行う。これまで、同一生物種内で、異なる運動モードを持つ繊毛構造が詳細に比較解析されたことは無い。繊毛運動モードを決定する軸糸ダイニンに着目しながら、対称波運動を示す精子鞭毛と、非対称波運動を示す嗅上皮繊毛を比較し、異なる運動モードを生み出す分子基盤を明らかにしていく予定である。 変異体作製については、繊毛は非常に複雑な構築過程を取っているため、軸糸ダイニンの欠損がその周辺の構造を変化させてしまう可能性がある。この場合、現れる表現型は純粋に欠損したダイニンに因るものではない。そのような場合には、特定のドメインのみを欠損する系統や、点変異によって軸糸ダイニンを不活性化した系統など、よりマイルドな変異を導入することで対応する。 また、今年度に、当研究室電子顕微鏡に電子直接検出カメラが新しく導入された。これにより、我々はクラミドモナス鞭毛において蛍光タンパク質の標識を検出できる解像度をCryo-ETで得られるようになった。これをゼブラフィッシュに応用するため、軸糸ダイニンや、その関連タンパク質の特定の部位に蛍光タンパク質標識を導入する予定である。標識されたタンパク質の軸糸中での振る舞いを、蛍光顕微鏡や、Cryo-ETで観察することで、その運動制御のメカニズムを明らかにする。
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Research Products
(4 results)