2017 Fiscal Year Annual Research Report
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16H02565
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
八木 信行 東京大学, 大学院農学生命科学研究科(農学部), 教授 (80533992)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
マルシャレツ ダニエル 東京大学, 大学院経済学研究科(経済学部), 講師 (50747805)
大石 太郎 福岡工業大学, 社会環境学部, 准教授 (80565424)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 水産物価格 / 水産物流通 / オークション / 真珠 / 水産物エコラベル |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、消費者調査や市場統計分析などを通じて水産物価格形成メカニズムを解明するものであり、平成29年度までに以下の課題を実施した。 (課題1)多様な価値の類型化とトレードオフ構造の把握:この課題は、IPBES(生物多様性及び生態系サービスに関する政府間プラットフォーム)に参加し、環境をめぐる様々な価値について調査を行いつつ、水産物が有する価値の類型化と、各価値のトレードオフ構造(各価値の競合関係や補完関係)の把握を行うものである。平成29年度においては、東日本大震災後における消費者行動に関する分析、真珠の価値に関する分析を行った。 (課題2)消費者行動原理の解明:この課題では、消費者行動を分析するためのアンケート調査を行い、消費者による水産物エコラベルへの支払意思などを分析する。平成29年度においては、水産物エコラベルに関する国別の発展状況を把握するための調査を実施し、特にドイツで水産物エコラベルの価値を重視することが判明した。現在は、この理由が公共財である自然を保全する利他的行動(遺贈価値)なのかなどを解明するための分析を実施している。 (課題3)水産物国際バリューチェーンの研究:本課題は、日本の三重県や宮城県など各地における水産物産地価格、築地などの卸売価格、小売価格の毎日の変動を統計的に解析し、マーケットパワーの存在などを分析する。平成29年は、三重県伊勢地方における実態研究を実施した。 (課題4)ゲーム理論を用いた一般化:この課題では、主として課題3で得られた分析結果についてゲーム理論を用いた解釈を試み、一般化した結論に集約できるか研究した。平成29年度の具体的な成果としては、漁業者が有する漁獲割当を漁業者の中で売買取引する場合、これが効率的に行われるための条件を研究し、Fisheries Research誌に出版した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
本研究は、以下の通り、4課題のうち2つが当初の計画以上に進展し、残り2つが当所計画通りの進展であることを総合して判断すれば、研究全体として当初の計画以上に進展し成果が上がっていると判断できる。 (課題1)多様な価値の類型化とトレードオフ構造の把握:この課題では、IPBES(生物多様性及び生態系サービスに関する政府間プラットフォーム)に参加し国際的な共著論文(Valuing nature’s contributions to people: the IPBES approach)を2017年に出版し、この論文の引用が現時点(2018年5月)において91存在するなど、かなりのインパクトをあげることができた。また真珠の価値に関する分析についても、2017年には原著論文を1編出版している。この部分は計画以上の進展である (課題2)消費者行動原理の解明:この課題では、消費者による水産物エコラベルへの支払意思などを分析することとしている。水産物エコラベルについては、学会誌などに2本の論文を出版し、並行して国際的な研究者のネットワーク形成を鋭意行ったところ、本学が国際的な研究拠点とすることができたと考える。また震災後の福島産水産物を消費者がどの様に捉えているのかについても査読論文を1編出版した。この部分は計画以上の進展である。 (課題3)水産物国際バリューチェーンの研究:本課題では、日本の三重県や宮城県など各地を実際に訪問し、この結果を国際学会で複数発表したところとなっている。この部分は計画通りの進展である。 (課題4)ゲーム理論を用いた一般化:この課題では、査読論文を1編出版しており、計画通りの進展である。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究は、上述の通り平成29年度までは当所計画以上に進展している状態であり、このペースで平成30年度年度以降も研究を推進したいと考えている。具体的には以下の通り。 (課題1)多様な価値の類型化とトレードオフ構造の把握に向けて、平成30年度においては、真珠の価値を更に題材とし、鉱物資源であるダイヤモンドと海産物である真珠を比較することで、海の価値を計ることができると考えており、この究明に向けて更に調査分析を行う。またIPBESが行っている価値の多様性とその個別の評価、更には生物多様性条約が海洋に関して実施しているSOI(Sustainable Ocean Initiative)という国際なプロジェクトに参加し、共同研究を進める。 (課題2)消費者行動原理の解明平成30年度においては、東日本大震災後における消費者行動が震災後8年を経過した現在震災直後と比較してどの様に変化したのかなどを更に追求する。また、消費者行動を分析するためのアンケート調査を行い、水産物エコラベルの価値を重視することが、公共財である自然を保全する利他的行動(遺贈価値)なのかなどを解明するための分析を進める。 (課題3)水産物国際バリューチェーンの研究は、引き続き日本の三重県や宮城県など各地における水産物産地価格を研究するとともに、新しく日本におけるまぐろ類のバリューチェーン分析をFAO(国連食糧農業機関)とともに実施する。 (課題4)ゲーム理論を用いた一般化:この課題では、主として課題3で得られた分析結果についてゲーム理論を用いた解釈を試み、一般化した結論に集約できるか更に研究を進める。
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Research Products
(16 results)