2018 Fiscal Year Annual Research Report
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16H02565
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
八木 信行 東京大学, 大学院農学生命科学研究科(農学部), 教授 (80533992)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
マルシャレツ ダニエル 東京大学, 大学院経済学研究科(経済学部), 講師 (50747805)
大石 太郎 福岡工業大学, 社会環境学部, 准教授 (80565424)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 水産物価格 / 放射性物質 / セリ / 水産改革 / 価値 / 卸売市場 / SDGs |
Outline of Annual Research Achievements |
工業製品などを対象とした先行研究では、商品の値段は需要と供給の関係で基本的に決まる等とされる。しかしながら、この議論は水産物には正確には当てはまらない。本研究では水産物の価格形成メカニズムを解明し、国際的な漁業経済分野の学術的な発展に貢献するとともに、漁獲物の価格が不安定なことで生じている社会的な課題解決を図ることを目的としている。 本年度は、福島原発事故後における水産物に対する消費者意識の時系列変化を分析した研究を行い、震災直後の2012年では放射性物質への忌避が強い一方で被災地を応援する購買意欲も高かったものが、2015年及び2018年では放射性物質への忌避は若干弱まったものの、一方で被災地を応援する購買意欲は更に大きく弱まっているなどの状況が判明し、この一部を論文として発表した(Suzuki, Oishi, Kurokura, and Yagi 2018)。また、北海道産の天然シロザケとノルウェー産の養殖サーモンに対する消費者による評価を分析した論文(Mochizuki, Oishi, Miyakoshi, Yagi 2018)、東南アジアのエコラベルに関する調査結果に関する論文(Sopha, Yagi, Ishihara 2018)、日本産水産物に対するシンガポール住民の嗜好性に関する論文(阪井、家根橋、ユー、八木 2018)、三重県の産地水産物市場における価格分析結果に関する論文(阪井、成尾、鈴木、八木 2018)、放射性物質の調査をサンプル調査とするより全量調査とする方が消費者による水産物への支払い意思が高くなることを示した論文(Sakai, Nakamura, Yagi, Oishi, Suzuki, Kurokura 2018)の、合計6本の査読論文を出版するとともに、7本の無査読の総説や書籍記事などを出版した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
本研究は、消費者調査や市場統計分析などを通じて、水産物価格形成メカニズムを解明しようとする内容である。一般的に経済学の教科書では、商品の値段は需要と供給の関係で基本的に決まり、同時に国民所得や代替物の有無が関係しているとされる。しかしながら、この議論は品質が均一である工業製品を仮定しており、腐りやすく品質が一定しない水産物には正確には当てはまらない。このような中で、本研究では水産物の価格形成メカニズムを解明し、国際的な漁業経済分野の学術的な発展に貢献するとともに、漁獲物の価格が不安定なことで生じている社会的な課題(例えば消費者の魚離れ、産地での投棄魚、一部人気魚種の過剰漁獲)の解決を図ることを目的としている。 本年まで、日本の消費者が福島の原発事故以降に「応援買い」という形で被災地の水産物を積極的に購入する意欲を有していることを初めて見出し論文として発表すると同時に、放射性物質の検査が現在は一部のサンプルだけを対象として実施されているものの、これを全量検査とすることで更に消費者の支払意思額が向上することなど、新しい知見を社会に発信することができた。 また、学問の進展については、これまでセリで決定される価格はセリの在り方如何に関わらず合理的に決定されるとした先行研究が主流であった中、三重県のセリ実態を詳細に分析することでセリ始め方終わりまでの時間が長いほど、また参加する仲買人の数が多いほど、同じ日の同じ種類の水産物でも価格が高くなることを統計的に明らかにした。そして、これらの先行研究が暗黙裏の前提としている情報の完全な伝達という仮定が実際のセリ現場では成り立っていないことなどを明らかにするなど、顕著な進展がみられたと考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究では、引き続き以下の課題分担を行うことで、各チームが創造性を発揮して研究ができるよう確保することとする。また定期的にチーム間の会合を持ち、研究の相乗効果を上げるとともに、研究4年目を迎えるに当たり総合的な考察に関する議論を更に活発化させる。 (課題1)多様な価値の類型化とトレードオフ構造の把握(東京大学大学院農学生命科学研究科八木が担当): この課題では、IPBES(生物多様性及び生態系サービスに関する政府間プラットフォーム)など各種国際会合に参加し、環境をめぐる様々な価値について調査を行いつつ、ウェッブ調査などを通じて水産物が有する価値の類型化と、各価値の各価値の競合関係や補完関係について調査を行う。 (課題2)消費者行動原理の解明(前出八木および福岡工業大学大石太郎(共同研究員)が担当):この課題では、消費者行動を分析するためのアンケート調査を行う。分析では因子分析などを行い、課題1で見出した様々な価値について、その影響の大きさや相関などを把握する。その際は、情報の不確実性が意思決定に与える影響を把握するため、「リスク」への消費者の反応を詳細に分析する。また、年齢による「魚離れ」が存在するのかどうか、更には放射性物質などへの忌避行動も類型化できるかどうか、更にはエコラベルへの支払意思なども分析する。 (課題3)水産物国際バリューチェーンの研究(前出八木が担当):本課題は、日本の三重県や宮城県など各地における水産物産地価格、築地市場などの卸売価格、小売価格の毎日の変動を統計的に解析し、マーケットパワーの存在などを分析する。 (課題4)ゲーム理論を用いた一般化(前出八木および東京大学大学院経済学研究科ダニエル・マルシャレツ(共同研究者)が担当): この課題では、主として課題3で得られた分析結果についてゲーム理論を用いた解釈を試み、一般化した結論に集約できるか試みる。
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Research Products
(17 results)
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[Journal Article] Consumers’ Attitude Toward Inspection Methods and Institutions for Potential Radioactive Contamination: A Choice-based Conjoint Analysis.2018
Author(s)
Sakai, Y., Nakamura, A., Yagi, N., Suzuki, T., Oishi, T., & Kurokura, H
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Journal Title
Journal of International Fisheries
Volume: 16
Pages: 16-37
Peer Reviewed / Open Access
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