2017 Fiscal Year Annual Research Report
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16H02584
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
今川 和彦 東京大学, 大学院農学生命科学研究科(農学部), 教授 (00291956)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
中尾 洋一 早稲田大学, 理工学術院, 教授 (60282696)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 子宮内環境 / トロホブラスト細胞 / 子宮内膜 / 遺伝子発現 / 着床 |
Outline of Annual Research Achievements |
本申請目的は、妊娠促進のための子宮内環境の構築と再構築である。子宮内環境を精査していく中で、RNA-seqによる胚トロホブラスト細胞と子宮内膜層からの遺伝子発現やタンパク質発現だけではなく、子宮腔内に存在するタンパク質成分およびメタボローム解析による代謝成分の解析が必要となった。さらに、当研究室のデータより、子宮腔内に存在する胚または子宮内膜から分泌されるエクソソーム成分を含めないと子宮内環境が構築できないことが明らかになった。そのため、直接経費を変更し、タンパク質(iTRAQ)、メタボローム解析およびエクソソーム解析を進めることとなった。 ウシ子宮腔内に存在するタンパク質群約2000から、バイオインフォマテックスおよび共培養系を駆使しながら、子宮内環境を作り得る最小限の遺伝子12個を特定するとともに、胚トロホブラスト細胞が分泌するエクソソームの特性を明らかにした(Kusama et al., 2018、Latifi et al., 2018)。また、受胎・不受胎で変化し、子宮内環境を反映する血液内代謝産物およびタンパク質も見出した。 新たに発見した胚盤胞特異的に発現する内在性レトロウイルスBERV-K3もウシ固有の遺伝子であることを発見した(Sakurai et al., 2017)。このことにより、これまでに発見された胚トロホブラスト細胞特異的に発現する内在性レトロウイルスBERV-K1、Syncytin-Rum1もウシ固有のものであることにより、遺伝子改変などによる研究にマウスは使えず、ウシ細胞あるいはウシ個体で進めなければならないことが明らかとなった。 2017年は、反芻動物の妊娠成立に必須なインターフェロン・タウ発見30周年にあたり、海外の研究者らとその特集号を2017年11月号のReproductionにまとめた(Roberts 2017、Ezashi & Imakawa, 2017、Imakawa et al., 2017)。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本申請は、妊娠成立のための子宮内環境の構築と再構築が目的である。胚トロホブラスト細胞と子宮内膜の遺伝子やたんぱく質発現を解析中、それらが反映されている子宮灌流液の精査が必須となった。灌流液はタンパク質の網羅的な解析に加え、メタボローム解析、さらにエクソソーム解析を行い、数千の因子群の中から、バイオインフォマテックスおよび胚トロホブラスト細胞と子宮内膜上皮細胞の共培養系で精査・検証を行った結果、タンパク質として12種類、代謝産物として7種類、さらにエクソソームをベースに組み立てないと子宮内環境の構築にならないことを明らかにした。
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Strategy for Future Research Activity |
新しく発見した内在性レトロウイルスBERV-K3遺伝子はウシ亜科特有の配列であった。このことよりも、哺乳動物種は各々の内在性レトロウイルス遺伝子群を獲得していった、あるいは獲得しえたものが動物種として生き残ることができたと考えることができる。また、調整金の追加配分によるChIPアッセイも順調に行うことができた。これらをベースに平成30年度は以下の研究を推し進める。 (1)子宮内腔液より得たタンパク質や代謝産物の候補因子の子宮内環境構築に向けた候補因子の絞り込みを継続する。同時に、これらの機能解析は共培養実験を使いながら行い、候補因子の絞り込みをサポートする。また、これらの候補因子の最小遺伝子群の特定やそれらのパスウェイ解析も継続して行う。 (2)ウシ・トロホブラスト細胞で発現する内在性レトロウイルスBERV-K1やBERV-K3の機能解析および発現制御機構解明の研究を継続する。当初予定していた遺伝子改変マウスの作製は行わない。なお、今年度の研究としてウシ・トロホブラスト細胞の遺伝子改変(KO)などを行い、その遺伝子(群)の機能をさらに検証する。 (3)2核細胞や3核細胞の成立機構や立体構造形成のための遺伝子発現や細胞生化学的な検証は継続して行う。
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Research Products
(11 results)