2017 Fiscal Year Annual Research Report
ホウ素中性子捕捉療法(BNCT)におけるテーラーメード型癌腫標的薬剤の創製研究
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16H02612
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Research Institution | Osaka Prefecture University |
Principal Investigator |
中瀬 生彦 大阪府立大学, 研究推進機構, 講師 (40432322)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
切畑 光統 大阪府立大学, 研究推進機構, 特認教授 (60128767)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | ホウ素中性子捕捉療法 / がん治療 / 機能性ペプチド / 細胞内導入 / 細胞死誘導 |
Outline of Annual Research Achievements |
ホウ素中性子捕捉療法(BNCT)は、脳腫瘍等の特定の難治性がんに対し高い治療効果を有することが認められている。BNCTは非侵襲的な先端的がん治療法として注目されている一方で、現在、臨床研究で用いられている第2世代ホウ素化合物はがん選択性や集積性が不十分であることが指摘されており、それらの改善が強く求められている。そこで本研究課題では、がん腫に応じて標的能をオンデマンドに制御可能なテーラーメード型ホウ素薬剤を開発する事を目的としている。平成29年度において、がん細胞への導入効率を高めるために、また細胞内移行後もホウ素薬剤の細胞外漏出を防ぐために、がんに高発現する糖蛋白質を標的として細胞内に高効率に移行する機能性ペプチドとホウ素化合物のコンジュゲート体を設計・合成し、BNCTの基礎評価を行なった。結果として、(1)治療用ホウ素化合物の細胞内導入効率の顕著な向上(約10倍の細胞内移行量の上昇)、(2)極めて短時間(30分)で細胞内へ高効率に移行、(3)細胞内移行後のホウ素化合物の滞留性の向上、(4)コンジュゲート体自体の細胞毒性が殆どない、(5)中性子線照射実験において、臨床研究で用いられている既存のホウ素薬剤と比較して、コンジュゲート体による効果的ながん細胞死誘導が示された。In vitroでの基礎実験の段階であるものの、中性子線照射実験において、既存ホウ素薬剤の数百倍薄い低濃度で、しかも短時間の薬剤処理で高効率ながん細胞死誘導が達成されたことは、極めて画期的な成果である。さらに現在、本研究課題申請での計画に沿った、担がん動物を用いたin vivo実験に向けて準備を進めている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
上記の通り、平成29年度において、機能性ペプチド-ホウ素化合物コンジュゲート体によって、効果的ながん細胞内導入の達成、細胞内滞留性の向上、低毒性の確認、そして中性子線照射実験での顕著ながん細胞死誘導が示された。本機能性ペプチドを用いた技術開発に加えて、ホウ素薬剤を運ぶキャリアー体として細胞外分泌小胞であるエクソソームを基盤とした細胞内導入技術の開発も進展させている。平成28年度の進捗状況報告にも記述したが、例えば膜透過性アルギニンペプチド修飾型エクソソームの創製技術開発、及び、細胞内移行評価において、本技術によって標的の細胞に効果的にマクロピノサイトーシスを誘導し、高効率に細胞内に導入されることを明らかにした。また、ペプチド配列中のアルギニン残機数の違いでマクロピノサイトーシスの誘導効率が異なること、また、がん細胞内に移行後に、エクソソーム内包薬剤のサイトゾル放出効率に影響することを世界ではじめて明らかにした(Nakase et al. Sci. Rep. (2017) 論文発表)。人工コイルドコイルペプチドを利用した、エクソソームの受容体標的技術(Nakase et al. Chem. Commun. (2017) 論文発表)も合わせて、当初の研究の狙いである「オンデマンドながん腫・受容体標的」が可能なキャリアー創製の技術開発が目標以上に達成されている。我々研究チームでの技術において、機能性ペプチドを利用したマクロピノサイトーシス経路を標的とするがん細胞に誘導可能な手法は、BNCTにおけるホウ素薬剤研究に限らず、あらゆる薬剤導入に貢献できるgeneralityの極めて高い応用性をもった技術だと強く考える。さらにこれらの技術融合で、BNCTにおけるテーラーメード治療に貢献できる、効果的な治療用ホウ素薬剤の革新的がん細胞内導入技術の構築にさらに繋がるように研究を展開する。
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Strategy for Future Research Activity |
平成29年度に引き続き、本年度において申請書の研究計画3・4を中心に研究展開する。 <研究計画3:新規ホウ素薬剤の細胞内移行・マウス体内分布の可視化> これまで調製したホウ素薬剤に関して、標的がん細胞内移行性や局在性、標的としない細胞の取り込み効率に関して、in vitroとin vivo(担がんマウス)の双方で検討する。実験内容:(1)目的の受容体を高発現したがん細胞、及び、標的としない正常細胞に対するホウ素薬剤の細胞内取り込みの検討。(2)担がんヌードマウスを用いた蛍光・PETイメージングによる、移植したがん細胞へのホウ素薬剤の集積、体内分布、細胞内移行を検出。(3)細胞内への取り込みについて、共焦点レーザー顕微鏡、フローサイトメーター、ICP発光分光分析装置による測定。 <研究計画4:中性子線照射によるホウ素薬剤のがん死滅効果の検討> 創製したホウ素薬剤に関して、標的となるがん細胞にホウ素薬剤を取り込ませた後、中性子線照射による死滅効果についてさらに詳細な検討を行う。In vitroの実験系で、ホウ素薬剤を生体内で想定される様々な濃度条件や処理条件において、標的がん細胞、及び、標的としない細胞(例えば正常な内皮細胞等)に取り込ませ、中性子線照射によって標的細胞に選択的に細胞死を誘導可能か詳細な評価を行う。また、誘導される細胞死機序を検討し、ホウ素化合物の細胞内局在と細胞死誘導への因果関係を評価する。実験内容:(1)標的がん細胞、及び、標的としない細胞に、創製したホウ素薬剤をin vitro実験系にて取り込ませ、中性子線照射での細胞死を検出・評価。(2)臨床研究で利用されているホウ素薬剤と、細胞死誘導の効率性、細胞死機序に関する比較検討。
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Research Products
(72 results)
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[Journal Article] Peptide Ribonucleic Acid (PRNA)-Arginine Hybrids. Effects of Arginine Residues Alternatingly Introduced to PRNA Backbone on Aggregation, Cellular Uptake, and Cytotoxicity2018
Author(s)
Hiroka Sugai, Ikuhiko Nakase, Seiji Sakamoto, Akira Nishio, Masahito Inagaki, Mssaki Nishijima, Asako Yamayoshi, Yasuyuki Araki, Satoru Ishibashi, Takanori Yokota, Yoshihisa Inoue, Takehiko Wada*
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Journal Title
Chemistry Letters
Volume: 47
Pages: 381-384
DOI
Peer Reviewed / Open Access
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[Journal Article] Evaluation of a novel sodium borocaptate containing unnatural amino acid as a boron delivery agent for neutron capture therapy of the F98 rat glioma2017
Author(s)
Gen Futamura, Shinji Kawabata, Naosuke Nonoguchi, Ryo Hiramatsu, Taichiro Toho, Hiroki Tanaka, Shin-Ichiro Masunaga, Yoshihide Hattori, Mitsunori Kirihata, Koji Ono, Toshihiko Kuroiwa and Shin-Ichi Miyatake
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Journal Title
Radiation Oncology
Volume: 12
Pages: 26
DOI
Peer Reviewed
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