2016 Fiscal Year Annual Research Report
超高齢社会の医療介護における地域格差の構造と資源制約下の持続可能なシステム最適化
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16H02634
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
今中 雄一 京都大学, 医学研究科, 教授 (10256919)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
福田 治久 九州大学, 医学研究院, 准教授 (30572119)
廣瀬 昌博 島根大学, 医学部, 教授 (30359806)
林田 賢史 産業医科大学, 大学病院, 医療情報部長 (80363050)
猪飼 宏 山口大学, 医学部附属病院, 准教授 (70522209)
村上 玄樹 産業医科大学, 大学病院, 講師 (50549756)
大坪 徹也 京都大学, 医学研究科, 助教 (80551796)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 医療介護システムデザイン / 医療経済学 / 医療・介護・保健 / 情報システム / まちづくり / 医療の質 / 介護の質 / 地域格差 |
Outline of Annual Research Achievements |
超高齢社会進展、財政逼迫、有限資源の中、質高く効率的で格差の無い医療介護提供体制を将来にわたり維持することは最重要社会的課題である。そこで資源等諸々の制約下に医療介護システム再構築に資するために、以下を行ってきた。 1 医療介護のパフォーマンス(質、効率、アクセス)を各施設・地域レベルで疾患群・機能別に指標化し関連因子を把握し、地域システムのパフォーマンスの要因構造を解明する: 医療の質については、全国レベルで在院日数を短縮しても低下していなかった事例を示し(Kunisawa, Imanaka et al.2017)、医療の質と費用それぞれの決定要因が異なり、ケースミックス分類構築の鍵となることを示した(Sasaki, Imanaka et al.2017)。さらに、人工知能AIを活用し集中治療患者の死亡予測モデルを進化させた(Nori, Imanaka et al. AAAI 2017)。 介護の質については、リスク調整要介護度悪化率の洗練化を進めるべく、介護と医療のデータを連結させ、疾患発症イベントによる要介護度の悪化も考慮に入れることができるようになり、要介護度悪化の要因構造を明らかにするとともに、施設レベルや特に地域レベルの介護パフォーマンスの指標化を進めている(Lin, Imanaka et al.) 2 医療介護の地域システムについて、将来のニーズ変遷も踏まえ、資源配備を把握し、体系的評価と最適化設計の方法を開発する: 医療資源配備は、医師数解析を先行させ、二次医療圏毎の人口当たり医師数は全国的に増えているものの地域格差の明確な拡大傾向を示した。医療需要量で調整すると、都会の医療資源が多い地域においても医師数は減少傾向にあり、非都会では大きな減少を認め、今後の対需要の供給量のさらなる不足の進行が予測された(Hara, Imanaka et al.2017)。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
(1)健康医療介護のパフォーマンス要素(質、アクセス、効率・費用)の可視化と要因構造の解明が進んでいる。 保健・医療・介護の質と費用を含むパフォーマンスを、各施設・地域で可視化し、資源の量や配置を含む要因構造の分析を進めてきた。全国の多施設、広域地域(自治体・保険者)、国(ナショナルデータベース)由来のミクロデータからなる大規模なデータベースを活用し、アクセス、指針への遵守としてのプロセス、リスク調整アウトカムを計測してきた。即ち、構築した大規模データベースを基盤に医療介護の質・アクセス・効率と費用について、その要因構造や医療介護資源配備・社会経済因子との関係性を、明らかにしてきた。五疾病五事業、在宅、介護、連携などを主な対象とする。地域システムのパフォーマンスでは、施設のパフォーマンスや資源を考慮し、資源配備については、拠点化・集中化と連携強化を基軸に、さらに解析を進める。また、機械学習など人工知能AI(Artificial Intelligence)の活用を進めてきた。以上の点で十分な進捗が得られている。 (2)健康医療介護の地域システムの体系的評価と最適化設計の研究が進んでいる。 上記のごとく各要素の研究を推進するとともに、健康医療介護における地域システムのパフォーマンスの体系的評価方法の研究開発を行ってきた。さらに、医療介護ニーズの変遷と将来予測も踏まえ、ケア領域に応じた拠点化と分散、連携強化を基軸に、資源配備の把握方法とシミュレーションの開発を進め、地域システムのパフォーマンスの最適化設計方法の開発研究を進める。その際に、医療と介護との連結データベースを構築して解析を進めてきた。また、さらに、健診データとの突合を行い、健康状態や健康リスクが将来の健康や医療費に及ぼす影響を解析してきた。以上の点で十分な進捗が得られている。
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Strategy for Future Research Activity |
健康医療介護のパフォーマンスと関連資源・関連要因に係る大規模なリレーショナルデータベースをさらに拡充する。まず、都道府県レベルでのデータの拡充を進める。健診データベースと医療レセプトデータベースの連結データの活用を推進する。その際、後期高齢者医療制度、国民健康保険、協会けんぽ、健保組合など様々な保険者での解析へと次第に拡充を図る。全国レベルの医療レセプトデータ、全国レベルの介護保険関連データ、救急搬送データに、社会人口経済データをも加えてデータベースの質と量と次元を高めていく。 さらには、より拡充されたデータを用いてより強固なエビデンスを創出する。重要な図表の自動作成機能の向上、BIツールも活用した多軸的・動的な可視化を推進し、現場フィードバック効果の向上、仮説形成、データ処理と解析の迅速化・円滑化を進める。医療、介護、社会経済因子の相互連関を解析し、地理空間情報の解析に地理情報システムGISを活用する。多変量解析を行い、階層性への配慮にはマルチレベル分析を、内生性への制御においては操作変数法やプロペンシティ・スコア・マッチングやIPTWを利用する。相互作用を検出し、必要に応じてbootstrap法などの再標本化法を利用する。資源配備とパフォーマンスとの関係性については、領域ごとに拠点化と連携強化、あるいは分散を基軸に、資源配備のモデル化、把握方法、シミュレーション、地域システムのパフォーマンスの最適化設計方法の開発研究を進める。要因構造については理論的検討をさらに展開し、マルチレベルの共分散構造分析、時間縦断的データに基づくパネルデータ分析、時系列分析などの多変量解析を行う。医療の各側面の質、コスト、公正について、その実態を明らかにし、要因構造のモデル化を進める。
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