2017 Fiscal Year Annual Research Report
Transdisciplinary research of reduction of mercury pollution in ASGM areas, Indonesia
Project/Area Number |
16H02706
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Research Institution | Ehime University |
Principal Investigator |
榊原 正幸 愛媛大学, 社会共創学部, 教授 (80202084)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
世良 耕一郎 岩手医科大学, 医学部, 教授 (00230855)
畑 啓生 愛媛大学, 理工学研究科(理学系), 准教授 (00510512)
大森 浩二 愛媛大学, 社会共創学部, 教授 (10152258)
佐野 栄 愛媛大学, 教育学部, 教授 (10226037)
N.P Bhandary 愛媛大学, 社会共創学部, 准教授 (10363251)
田中 勝也 滋賀大学, 環境総合研究センター, 教授 (20397938)
古川 慎哉 愛媛大学, 医学系研究科, 准教授 (60444733)
笠松 浩樹 愛媛大学, 社会共創学部, 助教 (60520690)
武部 博倫 愛媛大学, 理工学研究科(工学系), 教授 (90236498)
小松 悟 長崎大学, 多文化社会学部, 准教授 (80553560)
島上 宗子 愛媛大学, 国際連携推進機構, 准教授 (90447988)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | インドネシア / 小規模人力金採掘 / 水銀汚染 / 知の統合 / 超学際的研究 |
Outline of Annual Research Achievements |
まず、7月に中間総括ミーティングを愛媛大学で開催し、これまでの進捗状況と今後の予定について情報を共有した。研究計画に基づいて、研究代表者の榊原が6月、8月、10月、11月、12月、3月にインドネシアを訪問し、インドネシア人主要研究協力者と研究打合せ、調査、セミナーなど随時行ってきた。また、4名の研究分担者および現地連携研究者も8月および12月にインドネシアを訪問・調査を行った。その結果、スラウェシ島のゴロンタロ州の多数の零細小規模金採掘(ASGM)現場では,金抽出に主に水銀が使用され,周辺環境に投棄されていることが明らかになった。この調査における各グループの研究実績は以下の通りである。 ●環境影響評価グループ:調査地域の沿岸域および島嶼部において周辺の土壌,サンゴ礁の分布範囲および海洋生物の生態系調査を行った。水銀分析用の魚介類の試料(約100試料)を採取し、水銀濃度を測定した。森林地域では、木本類の樹皮の水銀濃度分析を実施し、ASGMサイトから放出された蒸気水銀の挙動を解析した。また、調査地域の鉱山周辺地域において,土壌・河川堆積物・河川水の水銀地球化学図を作成するための試料を採取した。総水銀濃度測定のための毛髪・爪試料を鉱山労働者および周辺住民約200名から採取した。また,水銀中毒調査のための問診票を作成し,鉱山労働者や住民のべ約300人に対する疫学的問診を行った。 ●社会経済評価グループ:既存資料レビュー・社会経済状況の調査に加えて,地域住民や行政主体などのASGM周辺地域の住民約350人へのアンケート・聞き取り調査を実施した。所得水準・貧困・環境問題の認識などの基礎情報も把握した。 ●技術開発グループ:現地周辺において,植生調査を行うとともに自生する草本類約100試料を採取し、水銀濃度等を測定した。特に現地に自生するモエジマシダの分布調査を行い、重金属濃度を測定した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
本研究プロジェクトの調査・分析は、当初の予定をはるかに上回って研究成果が得られている。特に、環境影響評価グループでは、世界で初めて木本類を用いた蒸気水銀による大気汚染の評価方法を開発した。この成果につては、インパクトファクターの高い国際学術誌に公開する予定である。技術開発グループでは、現地住民の地域知とメンバーの科学知を統合した「統合知」をステークホルダーと共創し、日本の民間企業と協働でその製品化を目指し、貧困削減への活用を目指している。また、理論的研究には、本研究プロジェクトのように、ステークホルダー間の利害関係が強く、対話が困難な場合に、それを劇的に促進するトランスフォーマティブ・バウンダリー・オブジェクトという概念を創出し、その理論化および実践的活用をすることを目指している。また、探索したキーステークホルダーと協働で、水銀汚染の無い地域社会への未来シナリオを共創し、それに沿って、現状調査を行うだけでなく、重要なアクターとしてのコミュニケーターを中心に重要かつ孤立しているステークホルダーに対する対話・信頼・合意を獲得しつつ、問題解決のアクターへの変容をもたらすプロセスを解明する。また、キーステークホルダーによって組織されるトランスディシプリナリー実践共同体が、水銀汚染問題解決へ向けて新たな統合知を、さらにはその活用・普及によって持続可能な地域イノベーションを共創する道筋を解明する。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度、対象とするASGM地域の水銀汚染の環境および住民健康影響調査・社会経済調査・文化歴史調査の結果に基づいて、その現状を解明する。また、各ASGM地域の背景となる社会経済的状況、各ステークホルダーの対話の現状、各ステークホルダーのASGMに対する認識、ASGM組織における主要アクター間の社会的関係性などの情報も収集する。これらの結果に基づいて、キーステークホルダーと協働で、水銀汚染の無い地域社会への「未来シナリオ」を共創する。そして、キーステークホルダーを中心に多様なトランスディシプリナリー実践共同体の組織化を支援し、各未来シナリオに沿って、本研究メンバーと協働で重要かつ孤立しているステークホルダーに対する対話・信頼・合意を獲得しつつ、問題解決のアクターへの変容をもたらすトランスフォーマティブ・バウンダリー・オブジェクト(TBO)を探索する。そして、地域ステークホルダーの文化・歴史・価値観・ニーズを既存資料・聞き取り調査の結果の多面的分析に基づいて、TBOを設計・開発・活用することによって、ステークホルダーとの対話と相互変容を劇的に促進する手法を理論的・実践的に研究する。そして、その有用性を社会資本の観点から評価する。また、社会経済評価では、地方自治・地域の経済・政策・産業を多様な視点からとらえ直し、既存資料レビュー、地域社会の状況調査、ステークホルダーへのアンケート・聞き取り調査によって得られたデータから、所得水準、貧困・環境意識問題に対する認識等の基礎情報の把握と多様なイノベーションの導入が地域社会の環境汚染に対する対応力に与える影響の定量化を試みる。そして、トランスディシプリナリー実践共同体と協働で水銀汚染問題解決へ向けて新たな統合知を共創し、その活用・普及を地域イノベーションへと発展させ、地域の貧困問題を低減しつつ、持続可能な地域社会構築の道筋を解明する。
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