2018 Fiscal Year Annual Research Report
Study on the genetic background of heat stress tolerance in dairy cattle in Southeast Asia
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16H02766
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
大蔵 聡 名古屋大学, 生命農学研究科, 教授 (20263163)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
松田 二子 東京大学, 大学院農学生命科学研究科(農学部), 准教授 (10608855)
PHENG Vutha 名古屋大学, アジアサテライトキャンパス学院(農), 特任准教授 (70747120)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 応用動物 / 獣医学 / 畜産学 / 神経科学 / ストレス / ウシ / 暑熱 / 心拍変動 |
Outline of Annual Research Achievements |
近年、地球温暖化に伴う夏季の猛暑が顕著であり、乳用牛が受ける暑熱ストレスによる生産性低下は解決すべき重要な課題のひとつである。アジアなどの熱帯地域にはその土地の環境に適応した在来種のウシが存在し、それらは暑さに強い特徴をもつ。本研究は、東南アジア地域で飼育されているウシの生理学的および遺伝学的解析を行い、それらのウシが暑熱ストレス耐性を有するメカニズムを解明することを目的とする。 本年度は、名古屋大学カンボジアサテライトキャンパス内実験農場で飼育されているカンボジア由来およびタイ由来の乳用牛を対象として、ホルター心電計を用いた心拍変動解析により、ウシに負荷される暑熱ストレスの評価を前年度に引き続き行った。直射日光に曝露されている暑熱環境下では、環境温度、温度-湿度指数およびウシの直腸温度が有意に上昇し、直射日光の曝露によりウシには暑熱ストレスが負荷されていることを定量的に確認できた。また、暑熱ストレス負荷環境下における心拍変動解析により、交感神経系活性が上昇し、かつ、副交感神経系活性が低下する個体と、これらが明確に変動しない個体の2群に分けることができた。前者は暑熱ストレスに対してストレス反応を示した群、後者は暑熱ストレスに対してストレス反応を示さない耐性個体の群と考えられ、ホルター心電図記録による心拍変動解析法により、暑熱ストレス耐性を有する個体の選抜が可能となった。心拍変動解析による暑熱ストレス耐性の評価は、名古屋大学において飼養している黒毛和種ウシを用いて並行して実施し、本手法の再現性を確認できた。 また、心拍変動解析法を用いて暑熱ストレスへの適応度が異なる個体を抽出し、ウシSNPアレイを用いた網羅的遺伝子多型解析を行うための事前準備として、カンボジアにおいてゲノムDNA試料の調整法を検討した。フィリピンにおける調査は不測の事態により次年度に延期することとなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度の研究計画では、東南アジア地域(カンボジアおよびフィリピン)で飼育されているウシを対象として、ホルター心電計を用いた心拍変動解析により暑熱ストレス耐性評価を行うことを目的とした。名古屋大学カンボジアサテライトキャンパス内実験農場で飼育されているカンボジア由来およびタイ由来の乳用牛を用いて、ウシのホルター心電図を記録する手技を確立し、暑熱環境下における心拍変動の解析から、心拍変動の周波数成分パラメータを用いて暑熱ストレス耐性を有する個体(暑熱ストレス環境への適応度が異なる個体)を選抜できることを明らかにできた。また、心拍変動解析による暑熱ストレス耐性の評価は、名古屋大学大学院生命農学研究科附属フィールド科学教育研究センター東郷フィールドにおいて飼養している黒毛和種ウシを用いて並行して実施し、本手法の再現性を検討した。さらに、同様の調査をフィリピン大学ロスバニョス校酪農農場において実施することを当年度に計画したが、同農場においてウシ伝染病が発生して乳牛が全頭処分される不測の事態が発生したため、同農場の乳牛を対象としたフィールド調査が実施できなかったことは予想外の事態であった。 今後、東南アジア地域で飼育されている乳用牛の暑熱ストレス耐性を評価し、暑熱ストレス環境に適応していると考えられるウシのフィールド調査により、暑熱ストレス耐性に関与すると想定されるSNPの抽出に着手する。これにより、暑熱ストレス耐性の原因となる候補遺伝子の同定をめざす予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究では、東南アジア地域のウシが暑熱ストレス耐性を有するメカニズムを解明することを目的として、①心拍変動解析による暑熱ストレス耐性評価法を確立して、暑熱環境下にあるウシの生理学的特徴を明らかにし、②カンボジア、タイおよびフィリピンの乳用牛を多数用いて、暑熱ストレス環境への適応度が異なる個体(暑熱耐性個体および暑熱非耐性個体)を抽出する。さらに、③ゲノムDNA試料を採取して網羅的遺伝子多型解析を行い、暑熱ストレス耐性の原因となる遺伝子の候補を同定することをめざしている。これまでに、心拍変動解析による暑熱ストレス耐性評価法の確立が完了し(①)、暑熱ストレス環境への適応度が異なるウシ個体の抽出(②)に活用できることが確認できた。この評価法を用い、年次計画に基づいてウシSNPアレイを用いた網羅的遺伝子多型解析(③)に着手し、東南アジア地域のウシの暑熱ストレス耐性の原因遺伝子の解明に全力をあげる。
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[Journal Article] Peripheral administration of SB223412, a selective neurokinin-3 receptor antagonist, suppresses pulsatile luteinizing hormone secretion by acting on the gonadotropin-releasing hormone pulse generator in estrogen-treated ovariectomized female goats2020
Author(s)
SASAKI Takuya, SONODA Tomoya, TATEBAYASHI Ryoki, KITAGAWA Yuri, OISHI Shinya, YAMAMOTO Koki, FUJII Nobutaka, INOUE Naoko, UENOYAMA Yoshihisa, TSUKAMURA Hiroko, MAEDA Kei-ichiro, MATSUDA Fuko, MORITA Yasuhiro, MATSUYAMA Shuichi, OHKURA Satoshi
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Journal Title
Journal of Reproduction and Development
Volume: 66
Pages: in press
DOI
Peer Reviewed / Open Access
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[Journal Article] Establishment of long-term chronic recording technique of <i>in vivo</i> ovarian parenchymal temperature in Japanese Black cows2020
Author(s)
MORITA Yasuhiro, OZAKI Riho, MUKAIYAMA Akihisa, SASAKI Takuya, TATEBAYASHI Ryoki, MORISHIMA Ai, KITAGAWA Yuri, SUZUMURA Reika, ABE Ryoya, TSUKAMURA Hiroko, MATSUYAMA Shuichi, OHKURA Satoshi
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Journal Title
Journal of Reproduction and Development
Volume: 66
Pages: 271~275
DOI
Peer Reviewed / Open Access
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[Journal Article] Peripheral administration of κ-opioid receptor antagonist stimulates gonadotropin-releasing hormone pulse generator activity in ovariectomized, estrogen-treated female goats2019
Author(s)
Sasaki T., Ito D., Sonoda T., Morita Y., Wakabayashi Y., Yamamura T., Okamura H., Oishi S., Noguchi T., Fujii N., Uenoyama Y., Tsukamura H., Maeda K.I., Matsuda F., Ohkura S.
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Journal Title
Domestic Animal Endocrinology
Volume: 68
Pages: 83~91
DOI
Peer Reviewed
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