2017 Fiscal Year Annual Research Report
Genetic diversity and transmission dynamics of viral pathogen causing child diarrhea in tropical region
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16H02772
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
斉藤 繭子 東北大学, 医学系研究科, 准教授 (20598031)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
古瀬 祐気 京都大学, ウイルス・再生医科学研究所, 特定助教 (50740940)
齊藤 麻理子 (小畑麻理子) 東北大学, 医学系研究科・国際交流支援室, 助教 (80404234)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 感染症 / ノロウイルス |
Outline of Annual Research Achievements |
ノロウイルスは世界的に最も多く検出される急性下痢症および食中毒の原因ウイルスであり,新しい遺伝子型の出現により,数年毎に世界規模の流行を起こしている重要な病原体である。研究者らは先行研究でノロウイルスが乳幼児に複数回感染し,無症候感染や感染後の回復期に長期間ウイルスが排出され続けることを報告してきた。 本研究はノロウイルス流行地における家庭内伝播の実態,異なる遺伝子型による混合感染や遺伝子学的多様性,感染伝播動態におけるウイルス,宿主,環境因子の関与を明らかにすることを目的としている。平成29年度は前年度に引き続き,フィリピンのターラック州において約200名の乳幼児コホートとその家族の下痢症状のモニタリングを継続し臨床データ,検体の収集を行なった。2つのコミュニティより収集された下痢症の検体(421エピソード)からノロウイルスの検出をリアルタイムPCR法で行ったところ,ノロウイルスの遺伝子グループI(GI)と II(GII)の陽性率はそれぞれ3%と19%であり,無症状期に採取した1466検体での陽性率は GIで1%、GIIで10%であった。 さらにノロウイルスGIIが陽性であった検体を用いてポリメラーゼ領域とカプシド領域の一部とその境界を含む約630bpの領域の増幅を行い遺伝子配列を解析した結果,GIでは8種類、GIIでは11種類のポリメラーゼとカプシドの遺伝子型の組み合わせが異なるノロウイルスを特定した。 また、ペルーで行った誕生コホート研究の保存検体を用いてサポウイルスの感染症疫学、遺伝子型多様性についての解析し論文発表した(Sanchez G, Clin Infect Dis, 2018)。また、この研究で検出された希な遺伝配列を持つサポウイルスの全ゲノム解析を行い、Genome Announcementsに発表した(Kagning-Tsinda E, 2017)。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
フィールドで採取した便検体からのウイルスの検出と遺伝子型の解析に関してはおおむね順調に進んでいるが、予定していたよりも家族からの検体採取率が低く、家族を入れた症例対照研究としては統計学的解析に十分な数が得られていない。これは外出時間が比較的長くなる学童以上、成人から便検体が提供されにくいことによる。また、便中IgAの解析に関して、抗原となるウイルス様粒子の準備の遅れのため、実験開始が遅れた。
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Strategy for Future Research Activity |
平成30年度は,フィリピンでのコホート調査を継続し,ノロウイルス,サポウイルス,ロタウイルスの感染状況と,これらのウイルスの感染や胃腸炎のリスク因子について疫学・臨床データの統計学的解析を行う。また,ノロウイルス,サポウイルスの陽性検体については遺伝子型の特定を継続し,2つのコミュニティにおいて流行している遺伝子型の時間的な推移,遺伝子型別に見た臨床像の特徴についても解析する。 ノロウイルスの陽性検体については,サンガー法による解析に加え,ポリメラーゼとカプシド領域とその境界を含んだ遺伝子領域のDeep Sequencing法についてプロトコールの最適化を行い,同一宿主における遺伝子の異なるノロウイルスの混合感染率や,同一家族内の家族員間で共有されている遺伝子型について検体を選択し解析を行う。 ウイルス量の多い検体については全ゲノム解析も行いこれまで周辺国で報告されているノロウイルスとの遺伝子配列の違いを比較する。下痢症の発症後に時間を追って採取した検体のウイルス検出結果から,排出期間を推定し,長期間のウイルスの排泄と宿主の背景因子の相関の有無について検討する。 ウイルス様粒子を使った便中の抗ノロウイルスIgA抗体の検出についてプロトコールの最適化を行い,可能な限り臨床症状の有無や時間的経過と便中のIgA抗体の有無や量との相関を検討する。 検体量が不足する解析内容については,ペルーで行っているコホート研究や国内での症例研究で採取した検体やデータを利用する。
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Research Products
(5 results)
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[Journal Article] Epidemiology of sapovirus infections in a birth cohort in Peru2017
Author(s)
Gerardo J. Sanchez, Holger Mayta, Monica J. Pajuelo, Karen Neira, Liu Xiaofang, Lilia Cabrera, Sarah Blythe Ballard, Jean E. Crabtree, Dermot Kelleher, Vitaliano Cama, Caryn Bern, Hitoshi Oshitani, Robert H. Gilman, Mayuko Saito, for the Sapovirus Working Group.
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Journal Title
Clinical Infectious Diseases
Volume: -
Pages: -
DOI
Peer Reviewed / Open Access / Int'l Joint Research
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[Journal Article] Complete Coding Genome Sequences of Uncommon GII.8 Sapovirus Strains Identified in Diarrhea Samples Collected from Peruvian Children.2017
Author(s)
Emmanuel Kagning Tsinda, Rungnapa Malasao, Yuki Furuse, Robert H. Gilman, Xiaofang Liu, Sonia Apaza, Susan Espetia, Vitaliano Cama, Hitoshi Oshitani, Mayuko Saito, for the Sapovirus Working Group in Peru
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Journal Title
genome Announcements
Volume: vol. 5
Pages: no.43 e01137-17
DOI
Peer Reviewed / Open Access / Int'l Joint Research