2018 Fiscal Year Annual Research Report
プロセスベースのマルチモーダル概念理論の構築と実証についての分野横断的研究
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16H02835
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Research Institution | Chiba University |
Principal Investigator |
松香 敏彦 千葉大学, 大学院人文科学研究院, 教授 (30466693)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
粟津 俊二 実践女子大学, 人間社会学部, 教授 (00342684)
鈴木 宏昭 青山学院大学, 教育人間科学部, 教授 (50192620)
中村 友昭 電気通信大学, 大学院情報理工学研究科, 助教 (50723623)
寺井 あすか 公立はこだて未来大学, システム情報科学部, 准教授 (70422540)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 認知科学 |
Outline of Annual Research Achievements |
行動実験:プロジェクションはクオリアのような感覚がいかにして生み出され、現実世界に反映されるのかを検討する際のカギになる概念である。30年度は多感覚シミュレーションによる概念の形成というアイディアを用いて、プロジェクションの身体的、内的基盤を検討した。身体を用いた外的環境との相互作用が認知を形成するという観点から行った研究の結果、熟達者は、身体を通した移動、接近を行いながら、多様な情報を収集し、問題解決のためのアイディアを生成していることが明らかになった。さらに、意味表象の変化をもたらす比喩における喩える語の選択メカニズムを解明することを目指し、文学作品コーパスから「ように」「ようだ」を含む文章を抽出し係り受け解析を行うことで比喩表現データベースを構築した。構築したデータベースを応用し比喩生成支援システムの構築を行った。
脳科学系実験:概念のマルチモダリティーに関するfMRI実験を行った。fMRI実験では、同じ事物に関する判断でも、判断する属性によって、活性化部位が異なることが示された。これらは、言語理解時に処理される概念が、マルチモーダルな神経活動としてシミュレーションされること、それが文自体の意味や判断する内容によって変化することが示された。
計算モデル・ロボティックス:マルチモーダルな時系列センサー情報を分節・分類することで概念形成が可能なモデルを開発ししその有効性を検証した。さらに、モデルの構築を容易にするためのアーキテクチャの開発を行った。提案アーキテクチャでは基本となるモデルをモジュール化し、これらを組み合わせることでより複雑なモデルの構築が可能となることを示した。また、人間が獲得する概念・知識の汎用性のメカニズムを解明するため計算機シミュレーションを行った結果、不完全な記憶力が重要な役割を果たしていることを示した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
行動実験、データベース分析、脳科学系実験、ロボティックス・計算機シミュレーションといった複数の手法を交えた研究が行われている点において、おおよそ当初の目的どおりに研究は進行していると考える。 まだ分析は完了していないが、マルチモダリティーに関するfMRI実験では、言語理解時に処理される概念が、マルチモーダルな神経活動としてシミュレーションされることを示した。分析完了後、結果を吟味し、31年度も課題・刺激などを変えて引き続いfMR研究をおこなう予定である。ロボティックス関係の研究では、新たなモデルとそれをより容易に構築できるアーキテクチャーの開発にも成功した。計算機シミュレーションでは、不完全な記憶力が重要な役割を果たしていることを示した。31年度は、この結果を行動実験を用いて検証する予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
2019年度は、2018年度におこなった研究の発展を試みる。まず、今年度は2018年度に行った、プロジェクションと概念の関係についてのより厳密な実験を計画している。特にcelebrity contagionという現象を取り上げ、ある特異的な性質を持った人物の触れたもの、あるいはそれに隣接するものが、その人物の(概念の)特性を伝承するか、またその調整要因は何かを検討する予定である。また、2018年度に実施したfMRI実験の結果を、活動部位だけでなく神経ネットワークの視点からも分析する。理解内容、知識内容など、ヒトの内的な要因によって概念の表象が動的に変化することを捉えるための行動実験、fMRI実験の実施を試みる。さらに、2つの異なる概念の融合による新たな意味の創造に関するMRI実験により得られたデータを解析し、2つの単語のどちらにも由来しない創造的特徴生成に関わる神経ネットワークの解明を行う。 ロボット・計算機モデル関係では、2018年度に開発したアーキテクチャを用いて概念モデルを組み合わせ,より複雑なモデルを構築する.さらに,そのモデルを用いることで,ロボットが周囲の状況に応じて柔軟に行動が可能となるか否かを検証する.人間の知識の柔軟性に記憶の欠損があることを計算機シミュレーションで示したが、2019年度はそのメカニズムのより深い理解を試みるだけでなく、行動実験による検証も行う。
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