2019 Fiscal Year Annual Research Report
ゲノムDNA転写開始活性の数理的構造を用いた制御領域リバースエンジニアリング
Project/Area Number |
16H02902
|
Research Institution | Tokyo Metropolitan Institute of Medical Science |
Principal Investigator |
川路 英哉 公益財団法人東京都医学総合研究所, ゲノム医学研究センター, 副センター長 (20525406)
|
Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2021-03-31
|
Keywords | トランスクリプトーム / 転写開始活性 / プロモータ / エンハンサー / エピジェネティクス |
Outline of Annual Research Achievements |
近位・遠位より転写に影響を与える転写制御領域 (プロモータ・エンハンサー) について、これら近傍における転写活性の数理的構造を抽出する上で、転写開始 活性の測定データ(CAGE)と共に転写に関与するエピジェネティックデータについて継続して整備を実施した。DNAとヒストンの複合体であるヌクレオソームが形成 される位置をATAC-seqを用いて測定し、これらを転写開始活性データや他の公共エピジェネティックデータと統合的に活用する技術の開発を行った (https://doi.org/10.1101/314807)。転写活性の数理的構造の基礎検討を進める中で、これまでの測定手法では転写後調節による影響を大きく受けている点が喚起されたことから、新生RNAを対象とした転写開始活性測定データに着目し、そのデータの計算解析手法を検討した。細胞質に蓄積する極めて安定なRNAに由来するシグナルを取り除くことで、転写開始活性をよりダイレクトに反映した結果が得られること、そして転写開始活性の測定がより高感度になることが確認された。エンハンサーについても検出感度が向上する一方、バックグラウンド・シグナルの増大により特異度の低下もみられたことから、計算解析の段階で特異性を落とさないようにするためのパラメータを抽出した。感度・特異度のバランスのとれたパラメータを用いて、改めて転写制御領域の探索を行った結果、これまでに見過ごされてきた領域におけるエンハンサー候補を見出すことに成功した。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
近位・遠位より転写に影響を与える転写制御領域 (プロモータ・エンハンサー) について、これら近傍における転写活性の数理的構造を抽出する上で、まずは転 写開始活性に関するデータ(CAGE)と共に転写に影響を与えうるデータの整備を実施した。最新のゲノムリファレンス上で転写開始活性データ利用を可能とするた め、転写開始活性データの再処理を実施した (https://doi.org/10.5281/zenodo.545682)。さらに、転写開始活性データやエピジェネティックデータといった、 ゲノム機能に関するデータを体系的に統合するための技術開発を実施し (https://doi.org/10.1101/314807)、これを用いて過去に産出されたヒトにおける転写開 始活性データとエピジェネティックデータの統合を実施した (Lizio M et al., Nucleic Acids Res, 47:D752-D758, 2019)。また、ATAC-seqを用いてDNAとヒスト ンの複合体であるヌクレオソームが形成される位置を測定することで、公共エピジェネティックデータの補完を試みた。これらを元に、転写活性の数理的構造の 基礎検討を進める中で、これまでの転写開始活性測定においては転写後制御による影響成分が不可分である点が指摘された。そこで、新生RNAを対象に転写開始活性測定を適用することで、転写後制御による影響を受けない転写開始活性測定法を開発し、これが従来法よりも優れた感度を示すことを示した (Hirabayashi et a. Nat Genet 2019).
|
Strategy for Future Research Activity |
新生RNAを対象とした転写開始活性測定結果より新しく同定されたエンハンサー候補領域について、その機能を実験的に評価する。特に、塩基配列依存的な活性を評価するため、レポーターアッセイ等のエピゲノムによる影響からは切り離された手法を用いる。エピゲノムとしてどのような状態へと遷移し得るかについては、これまでに収集・整備した公共データを参照し、転写活性の数理的構造に関するこれまでの 検討を更に推し進める。
|
Research Products
(3 results)