2016 Fiscal Year Annual Research Report
大気放出される数百種の未規制有害物質の一斉分析手法開発と継続モニタリング
Project/Area Number |
16H02988
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Research Institution | Yokohama National University |
Principal Investigator |
亀屋 隆志 横浜国立大学, 大学院環境情報研究院, 准教授 (70262467)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 環境分析 / 未規制有害物質 / 一斉分析 / 環境モニタリング / 大気環境 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成28年度研究においては、以下の3点について検討した。 『(1)半・難揮発性物質の高感度化捕集方法の開発と回収率の向上策の検討』については、大気中の半・難揮発性物質は、吸着樹脂+活性炭を充填した連結カートリッジで一斉捕集し、アセトンで溶出した。その固相抽出液を性能維持管理されたGC-MS によって自動同定定量分析した。この際、上限に近い通気量で1週間連続捕集して高感度分析を実現できた。また、対象物質を固相抽出カラムに直接にスパイク添加した後に清浄空気を1週間通気した際の回収量と比較して、捕集期間内における化学反応やリークなどによるロスの有無を明らかにした。また、長期間捕集時に同時に捕集されてしまう水蒸気等の共存物がGC-MS分析に与える影響を明らかにした。 『(2)カルボニル化合物の一斉分析条件の確立』については、大気中のアルデヒド類やケトン類などのカルボニル化合物は、2,4-ジニトロフェニルヒドラジン(DNPH)を固定した固相抽出カートリッジで誘導体化捕集し、アセトニトリルで溶出した。その固相抽出液をLC-MS/MS によって高感度分析した。スパイク添加した後に清浄空気を通気した場合の回収率を比較検討して、対象物質の回収率に与える捕集条件の影響を明らかにした。 『(3)半・難揮発性物質とカルボニル化合物の大気中濃度継続モニタリングデータの蓄積』については、大気中の半・難揮発性物質について、1週間捕集による継続モニタリングを実施し、データの蓄積を図った。アルデヒド類やケトン類などのカルボニル化合物については、1日24 時間捕集による継続モニタリングを実施し、週間変動や季節変動も含めたデータの蓄積を図った。また、化学物質の使用がある大学屋上等を基本として継続モニタリングを行いつつ、大学以外の一般環境や道路近傍、工場等発生源近傍、一般住宅室内でのモニタリングも試みた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成28年度内に分析対象とする物質と分析条件が重なってしまう不純物が分析測定を妨げることが判明し、影響される物質の特定や影響レベルおよび対策が必要となったため、研究機関の延長を余儀なくされた。しかしながら、新たに発生したこの問題も平成29年度前半までには解決することができ、また、新たな問題へ対応期間や延長期間内においても、大気サンプリング自体は継続的に実施されており、延長期間内には所定の研究目標を達成することができた。
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Strategy for Future Research Activity |
平成29年度および平成30年度には、引き続き、 (3)半・難揮発性物質とカルボニル化合物の大気中濃度継続モニタリングデータの蓄積 (4)有害物質の大気汚染状況の解析 を実施することとしている。 具体的には、半・難揮発性物質については1週間捕集、アルデヒド類やケトン類などのカルボニル化合物については1日捕集を基本とし、同時サンプリングによる継続的なモニタリングを実施する。週間変動などについても検討しつつ、全国各地でのモニタリングも実施して、検出物質の種類の違いや濃度レベルの違いなど、地域性の把握を行う。また、一斉分析法を用いた継続モニタリングによって得られる大量のデータをもとに、半・揮発性物質およびアルデヒド類やケトン類などのカルボニル化合物による大気汚染の状況を明らかにする。行政が行っている従来調査でのモニタリングデータとの比較を行って、新たな検出物質の有無や、検出頻度や検出濃度レベルの違いを把握する。地域による検出状況の違いや物質間での検出状況の関係性、PRTR大気排出量との比較などを行う。
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