2016 Fiscal Year Annual Research Report
24時間尿分析でタンパク質摂取量を知る テーラーメードの生涯食育でロコモ予防
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16H03049
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Research Institution | Mukogawa Women's University |
Principal Investigator |
家森 幸男 武庫川女子大学, 国際健康開発研究所, 教授 (80025600)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
次田 一代 香川短期大学, 生活文化学科食物栄養専攻, 教授 (40198528)
並河 徹 島根大学, 医学部, 教授 (50180534)
江口 昭彦 西九州大学, 健康栄養学部, 准教授 (60151966)
宮本 篤 鹿児島大学, 農水産獣医学域獣医学系, 教授 (70219806)
垣渕 直子 (秋山直子) 香川短期大学, 生活文化学科食物栄養専攻, 教授 (70310886)
森 真理 武庫川女子大学, 国際健康開発研究所, 講師 (70399343)
大森 肇 筑波大学, 体育系, 教授 (20223969)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 24時間採尿 / ロコモティブシンドローム / 蛋白質摂取量 |
Outline of Annual Research Achievements |
初年度は研究計画に従い、まず①共同研究の計画を立て方法論の詳細を検討し、②既に、本科研究基盤Bの準備の為に26-27年度に実施した「栄養で日本を元気に」プロジェクトで集めた30-50歳代の24時間尿サンプルで蛋白質摂取量を評価した。①共同研究の島根、香川、佐賀、鹿児島の代表者会議を平成28年5月13日に大阪で実施し、ロコモティブシンドローム(以下ロコモ)の評価として、文献的に無症候性脳梗塞との関係が検証されてきた開眼片足立ち時間と、サルコペニアの検証が有力な握力測定を共通健診項目として、24時間尿を含む健診を実施する方針を決定した。採血の可能な地域では、アルブミン値、腎機能eGFRなどを測定し、1地域あたり60-80歳代の男女200人を目標に健診を実施することにした。②共同研究の4県で実施した健診参加者、20から60歳代、男性228名、女性430名の24時間尿から蛋白摂取量を評価し、推奨量との差を比較したが、5-60歳代の男性では推奨値60gよりも5~7g多く、女性では同年齢には推奨量50gを11gも上回ったが、20代では、2g以上推奨値を下回る結果となり、若年層では、30歳代、50歳代に比べ有意の摂取不足があり、年代別の食生活の偏りを明らかにした。共同研究代表者会議の決定を受け、香川県では、ロコモ健診をパイロット研究として実施し、全健診項目参加者女性35名の内、2ステップテスト、立ち上がりテストなどでロコモ陽性者は各々54%、26%であり、ロコモ陽性者は非陽性者に比べ年齢、握力、開眼片足立ち時間で有意差を認めた。24時間採尿の結果やBDHQ(簡易型自記式食事歴法質問票)による食事頻度調査との関連は現在分析中で、上記の4共同研究集団の年齢、性別蛋白摂取量の比較検討の結果と共に第64回日本栄養改善学会(平成29年度9月13日~15日)で研究成果を2題の口頭発表で報告する。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
①当初の計画では24時間尿から蛋白摂取を評価し、その蛋白質摂取が日本の伝統食、大豆や魚に由来するかの解析のためイソフラボン、タウリンを測定したが、高齢者でも男女の推奨量以上に摂取している事が明らかとなった。そこで、日本人が世界一の平均寿命となった1985年以来、長寿No.1の座を占めてきた栄養状況の比較を世界61地域で採取した24時間尿サンプルの中で大豆、魚摂取のバイオマーカー、イソフラボンとタウリンを測定し、出来た健診参加者の夫々のバイオマーカーの量により5分割したところ、日本人は両者共に最高の第5分位群では90%近くを占め、両者が共に最低の第一分位群では皆無であった。そこで本研究においても、推奨量以上に摂取する蛋白質が大豆か魚由来かを分析し、ロコモと蛋白摂取源との関係の解析をすすめた。②イソフラボン、タウリン摂取と尿中排泄量との関係を既存の介入研究のサンプルを分析して求め、尿中のバイオマーカーから大豆、魚介類蛋白摂取量を評価する推定法を世界で初めて考案した。この推定式を用いて、今回の共同研究で50歳代の男女の大豆蛋白摂取及び魚介類蛋白の摂取を測定したが、男女共に推奨蛋白摂取量の約半分を大豆、魚介類から摂っている事が明らかになった。③そこで、ロコモの進展、予防に及ぼす蛋白源の更なる分析の必要性から肉類摂取のバイオマーカーとしてメチルヒスチジンの分析を現在分析中である。上記①の成果は、和食の特徴を栄養マーカーで評価可能とした新知見で、しかも、その特色が、メタボリックシンドロームの予防に寄与するHDLコレステロールや葉酸値を改善する和食の健康効果を実証した成果で、国際誌PLOS Oneでの掲載が決まっている。
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Strategy for Future Research Activity |
初年度のパイロット研究の成果を検討する共同研究分担者会議を平成29年5月13日に大阪で開催し、今年度の各地域で60-80歳代の男女の対象者240人を目標に実施する健診の内容につき検討する。パイロット研究でロコモ度と関係することが検証された開眼片足立検査と握力の測定は共通して実施し、24時間尿では蛋白摂取量の評価のみならず蛋白摂取源の差が、サルコペニア、除脂肪体組成に関係する可能性があり、体組成計を購入し、各地の健診で活用する。採血が可能な地域では、大豆・魚などの摂取蛋白源の種類と量による血液総蛋白量、アルブミン、葉酸、さらにクレアチニンを指標とする腎機能、炎症のマーカーとしての高感度CRP、空腹時血糖やインスリン測定によるインスリン抵抗性などを測定する。24時間採尿については、総蛋白の摂取量を評価するとともに、イソフラボン、タウリン、などにより、摂取蛋白源の分析を行う。大豆・魚介類蛋白の摂取は初年度の分析から食塩(Na)の摂取と正相関する事が明らかになったので、Na/UN比に着目し、これらと血管障害との関係を分析する。また、臓器障害の進行に影響される夜間の血圧値を測定する。尚、高齢者において蛋白質の摂取にばらつきの大きい事が初年度の研究から明らかになり、過剰の蛋白摂取が食塩過剰摂取と共に高齢女性の骨粗鬆症の原因となる可能性があり、可能な地域では骨密度の測定を行う予定である。
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