2016 Fiscal Year Annual Research Report
動力学的震源モデル及び海底地形を考慮した海溝型地震の強震動予測と建物被害想定
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16H03144
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
川辺 秀憲 大阪大学, 工学研究科, 准教授 (00346066)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
入倉 孝次郎 愛知工業大学, 工学部, 教授 (10027253)
宮本 裕司 大阪大学, 工学研究科, 教授 (50416856)
津田 健一 清水建設株式会社技術研究所, その他部局等, 研究員 (60470324)
倉橋 奨 愛知工業大学, 工学部, 講師 (60510899)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 強震動予測 / 動力学 / 南海トラフ / 海溝型地震 / 地形 / 差分法 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成28年度は以下の三つの研究を行った。 ①海溝型巨大地震の震源のモデル化についての検討:2011年東北地方太平洋沖地震など過去に発生した海溝型地震について、観測記録を分析し、これまで得られている知見も考慮し、従来の海溝型巨大地震の震源のモデル化手法の高精度化について検討するとともに、動力学的アプローチによる震源のモデル化手法を検討した。また、検討結果を用いて、南海トラフにおける海溝型巨大地震の強震動予測のための震源のモデル化についての検討をはじめた。この検討については平成29年度以降も継続していく予定である。 ②海底地形、海水、及び陸域の地形の地震動への影響の評価:当初は、南海トラフ周辺の海底地形などの地下構造の3次元的な不整形性及び海水が地震動に与える影響を評価する予定であったが、平成28年熊本地震が発生したため、対象地域を熊本県益城町に変更し、表層地形が地震動に与える影響を、地震動シミュレーションにより検討した。その結果、1~3m程度の段差構造であっても、木造家屋に影響の大きい周期1秒前後の地震動に影響を及ぼすことが分かった。 ③大阪平野における建物の被害想定のための情報収集:初年度は、被害想定を行うための準備段階として、既存建物のデータを収集し、被害想定の手法についての検討を行った。 研究初年度にあたる平成28年度は地震動計算用の計算機を大阪大学で購入し、これまで所有している計算機と合わせて、計算環境の増強を図った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究概要に記載した「①海溝型巨大地震の震源のモデル化についての検討」、および「③大阪平野における建物の被害想定のための情報収集」については概ね当初に計画通りに研究を進めることができた。しかしながら、「②海底地形、海水、及び陸域の地形の地震動への影響の評価」については、平成28年熊本地震が発生し、建物の被害記録と地震動の観測記録が得られたため、当初の予定を変更し、熊本県益城町を対象として、表層地形の影響を評価した。その結果、1~3m程度の段差構造であっても、木造家屋に影響の大きい周期1秒前後の地震動に影響を及ぼすことが分かった。 なお、海底地形、海水、及び陸域の地形の地震動への影響の評価については、実地盤モデルを用いた検討までは行うことができなかったが、単純な構造の地下構造モデルを作成した基礎的な検討は実施した。また、この基礎的な検討において、本研究で用いる計算コードの妥当性の評価も行った。 研究初年度にあたる平成28年度は地震動計算用の計算機を大阪大学で購入し、これまで所有している計算機と合わせて、並列計算の計算環境の増強を図りった。また、これまで地震動計算に用いてきた3次元差分法の計算コードについて、動力学的震源モデルを取り入れられるよう、計算コードの改良を行った。
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Strategy for Future Research Activity |
平成29年度以降は前年度の研究を引き続き行うとともに、以下の4つの研究を実施することを予定している。 ①海溝型巨大地震の震源のモデルの地震動予測への適用:平成29年度は、前年度に検討した震源のモデル化手法を、2011年東北地方太平洋沖地震等、過去に発生した地震に適用して強震動シミュレーションを実施し、地震動の観測記録との比較から、その再現精度を検証する。 ②地下構造モデルの高精度化:平成29年度は、過去の地震記録と既存の地下構造モデルを用いて地震動シミュレーションを行い、地震動の再現精度が悪い地域は、観測地震記録を用いた地下構造のフォーワードモデリングを実施し、高精度化を図る予定である。また、地下構造探査の資料が少なく、地震動の再現精度の悪い地域は、常時微動探査を実施し、地下構造モデルの高精度化を図る。 ③南海トラフにおける海溝型巨大地震の強震動予測:本研究の最終年度である平成30年度は、最終的な南海トラフにおける海溝型巨大地震の強震動予測を実施し、震源のモデル化や海底地形など地下構造が強震動予測に与える影響の評価を行う予定である。 ④ 大阪平野における建物の被害想定:平成29年度は、被害想定の準備段階として、兵庫県南部地震など過去に発生した被害地震のシミュレーションを実施し、手法の検証を行う。そして、平成30年度は、上記(3)の強震動予測結果を用いて大阪平野における被害想定を実施し、震源のモデル化や海底地形など地下構造のモデル化の違いが被害想定に与える影響を評価する。 本研究の申請時には、平成29年度は大阪大学で地震計を購入し、研究分担者の所有する地震計と合わせて、常時微動観測を行う予定であったが、交付時は申請時の予算が大幅にカットされたこと、及び、より詳細な地震動計算を実施する必要が生じたことから、地震計の購入は中止し、平成29年度も計算機を購入し計算環境の増強を図る予定である。
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