2016 Fiscal Year Annual Research Report

新しい災害医療対応シミュレーションシステムを用いた災害医学教育、災害医療の実践

Research Project

Project/Area Number	16H03155
Research Institution	Nippon Medical School
Principal Investigator	布施明日本医科大学, 医学部, 准教授 (80238641)
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha)	鈴木進吾国立研究開発法人防災科学技術研究所, その他部局等, 主幹研究員 (30443568) 横田裕行日本医科大学, 大学院医学研究科, 大学院教授 (60182698) 小山博史東京大学, 大学院医学系研究科(医学部), 教授 (30194640) 宮内雅人日本医科大学, 医学部, 講師 (60312063) 石井浩統日本医科大学, 医学部, 助教 (50614830)
Project Period (FY)	2016-04-01 – 2020-03-31
Keywords	災害医療 / シミュレーション / 地理情報システム / 離散事象シミュレーション / 首都直下地震
Outline of Annual Research Achievements	本研究の目的は、防災・減災科学分野の被災想定シミュレーションをもとに、【目的1】災害医療対応シミュレーションシステムを構築、【目的2】卒前・卒後災害医学教育での活用と検証、【目的3】災害訓練、実災害での災害医療対応シミュレーションシステムの活用と検証、を行うことである。まず、基本となる災害医療対応シミュレーションシステムの構築をH28年度行った。本シミュレーションの目的は地震想定をベースにさまざまな要素を考慮して、現行の体制とルールの中でどのような状況が想定されるのかを知る。具体的には重症者数、重症者の救命可能性、課題の所在などである。また、体制やルールを変更した場合にはどのような状況が想定されるのかを把握することも容易となる。本シミュレーションは離散事象シミュレーションで、待ち行列タイプのシミュレーションとした。災害医療対応をシステムとして考え、システムの混雑現象を分析する方法とした。地理情報システムを積極的に活用し、負傷者（重篤、重症、中等症、軽症）、病院施設等のマッピングを行いながら災害医療シミュレーションシステムの基本画面の設定を行った。基本画面は大きく分析画面と訓練画面に大別し、それぞれの作業が行いやすいユーザーインターフェースとした。分析画面ではシミュレーションを行う前提となる変数を抽出し、当該変数を変動させた場合の結果に与える影響についての考察を行った。これまでの考察から被災地内で収容可能な病床数を多くした場合に救命率の向上が期待できる可能性があることが判明した。一方、被災地内収容病床数以外では、投入医療チームなどの変数を変化させても救命率の向上にあまり寄与しない可能性が示唆された。今後も緊急車両の需給状況、道路閉塞／啓開状況なども検討に含めながら、医療チームの応援／受援状況、医療資器材の需給状況も考慮して、分析の精度を上げる予定である。
Current Status of Research Progress	Current Status of Research Progress 2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned. Reason 本研究の基幹的な研究は災害医療対応シミュレーションシステムの構築である。システム構築で最も重要なことは基本設計を正確に行うことである。その際に応用性も視野に入れておく必要がある。H28年度はシステムの基本設計に多くの時間を費やしたが、正確性、応用性に配慮した。当初の工程はほぼ達成した。
Strategy for Future Research Activity	本研究の目的は、【目的1】災害医療対応シミュレーションシステムを構築、【目的2】卒前・卒後災害医学教育での活用と検証、【目的3】災害訓練、実災害での災害医療対応シミュレーションシステムの活用と検証、を行うことである。前年度に開発に着手した「災害医療対応シミュレーションシステム」のブラッシュアップを図る。開発中のシミュレーションシステムは、首都直下地震で公表されている18タイプの地震動、4シーン、2風速を参考として、250mメッシュ区画ごとの負傷者数が算出される（それ以外の任意の震源地、深さでも負傷者数を算出できるように開発中である）。負傷者は重篤（要手術・集中治療）、重症（要入院）、中等、軽症に分類し、特に重篤傷病者の流れを可視化できるように留意されている。病医院等の被災状況の算定では、災害拠点病院、災害連携／支援病院など種別ごとに被災状況が算定されている。病院以外にも診療所、療養・介護施設などの被災状況も把握できるようにする。今年度は待ち行列シミュレーションモデルを用いて、負傷者の医療機関への受診状況、転院搬送などのシミュレーションを行っていく。負傷者捜索・救助状況、負傷場所、医療チーム応援状況、道路閉塞状況などを変数として加えて、結果を傷病者の生死、確定的な治療に至るまでの時間等を用いて表す。また、医療機関の処理能力、支援状況と負傷者の受診状況（数、重症度）を突合し、各医療機関の需給状況を加算し、被災地全体の需給状況を判定できるようにする。その際に変数の値を様々に試行してどの変数が影響を与えるのか、また、その変数値は現実的がどうかについて検討する。