2017 Fiscal Year Annual Research Report
Therapeutic In Vivo Synthetic Chemistry by Transition Metal Catalyzed Amidation
Project/Area Number |
16H03287
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Research Institution | Institute of Physical and Chemical Research |
Principal Investigator |
田中 克典 国立研究開発法人理化学研究所, 田中生体機能合成化学研究室, 主任研究員 (00403098)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 化学合成 / 生体分子 / 蛋白質 / 糖鎖 / 生体内合成化学治療 |
Outline of Annual Research Achievements |
発表者はこれまでに、N-型糖鎖を「生体内移行シグナル」として利用することにより、人工糖タンパク質に組み込んだ金(III)触媒を生体内の望む臓器に運搬することに成功している。さらに標的臓器上のアミノ基との間でプロパルギルエステルのアミド化反応を実現している。そこで金触媒活性を持つ人工金属触媒酵素を標的臓器に対して選択的に組み込んだ後、ペプチドフラグメントを静脈注射することでアミド結合形成反応によるペプチド合成を検討した。本課題では、より反応基質の濃度を稼ぐことを意図して、分子内反応による環状ペプチドの合成を試みた。 プロパルギルエステルをC末端に持つ様々な直鎖ペプチドを合成し、人工糖タンパク質に組み込んだ金(III)触媒を作用させたところ、残念ながら、当初予定していた肝繊維化治療のための環状RGDyX(Xは任意)ペプチド、あるいはがん治療のための抗癌ペプチドをこの方法で環化させることはできなかった。しかし種々検討した結果、反応するC末端、あるいはN末端に立体障害の少ないグリシンを置くことで、30~40%の収率ではあるが、環状ペプチドを合成することに成功した。これにより、当初の予定していたペプチドそのものを得ることはできなかったが、同様の活性を持つと考えられる誘導体を合成することが可能となった。 この手法で合成した環状ペプチド、およびその前駆体のプロパルギルエステル(あるいはその加水分解体)を用いて、様々ながん細胞に対する毒性を検討した。その結果、環状ペプチド自体では毒性は弱いものの、糖鎖アルブミンと同時に作用させることで抗がん作用がより効果的に得られることが明らかとなった。このように、細胞表面や生体内で使用できる金(III)触媒反応によるペプチド環化反応に成功し、その毒性を生体内の現地で発揮させる基盤を確立した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初予定していた RGD誘導体の環状ペプチド、ならびに天然環状ペプチドそのものを金触媒反応によって合成することはできなかったが、この誘導体の合成に一般的な方法を見出すことができた。現在では効率は30~40%であるが、これらのペプチドはチオエステル法など、活性エステル法を使用するのが普通である。本法は生体内で使用できる可能性のあるペプチド合成法であることに加えて、その方法自体で有機合成化学分野に新しい戦略を与えるものであり、重要な成果であると評価できる。実際に、様々な環状ペプチドの合成に展開が可能であり、さらに環化反応によってその毒性も発揮できることから、報告者の求める生体内合成化学治療に十分応用できると考えられる。これらの成果から、研究はおおむね順調に進展していると評価する。
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Strategy for Future Research Activity |
研究最終年度となる平成30年度では、平成29年度に開発した金触媒による環状ペプチド合成をさらに精査するとともに、がんを治療する生体内合成化学治療へと展開する。すなわち、プロパルギルエステルをC末端に持つ直鎖ペプチドを反応させることによって、30~40%の収率で環状ペプチドを得ているが、最終年度ではさらにペプチド自身の構造を変更し、あるいは金触媒を最適化することによって、70%程度まで向上させる。一方、環状ペプチドをがん細胞に単独で作用させるよりも糖鎖アルブミンと同時に作用させる方が、抗がん作用がより効果的に得られることがわかっているので、新規な抗がん活性機構を明らかにするとともに、より強力が抗がん活性環状ペプチド構造を見出す。最終的に、がん細胞への「生体内移行シグナル」である糖鎖を活用して、金触媒をがん細胞へと組み込む。次いで、プロパルギル基を含む環状ペプチド前駆体を作用させることで、がん組織で環化反応を行い治療を完成させる。 一方で、糖鎖アルブミン・金触媒によるプロパルギルエステルのアミド化反応を、糖鎖が欠如した疾患細胞に糖鎖を補充して治療を試みる。疾患細胞への「移行シグナル」となるN-型糖鎖を導入した人工糖タンパク質を活用して、金触媒を疾患選択的に組み込む。次いで、触媒により活性化される、プロパルギルエステルを持つ種々の糖鎖フラグメントを作用させることにより、疾患細胞表面への「糖鎖補充」を化学的に行う。膜タンパク質を細胞上に安定化させたり、糖鎖導入タンパク質の細胞内シグナル伝達を制御することによって治療することを検討する。
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Research Products
(44 results)
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[Journal Article] Reactivity of anti-HNK-1 antibodies to branched O-mannose glycans associated with demyelination2017
Author(s)
K. Sakuda, Y. Kizuka, Y. Yamaguchi, K. Tanaka, K. Ogiwara, T. Segawa, Y. Hagiwara, I. Matsuo, H. Ogawa, N. Taniguchi, S. Kitazume
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Journal Title
Biochem. Biophys. Res. Commun.
Volume: 487
Pages: 450-456
DOI
Peer Reviewed / Open Access
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[Presentation] Therapeutic in vivo synthetic chemistry2017
Author(s)
Katsunori Tanaka
Organizer
International Symposium, “Systems Glycobiology and Beyond” -Toward a bridge between fundamental research and applied science-, RIKEN Wako campus, Suzuki Umetaro Hall(Wako, Saitama)
Int'l Joint Research / Invited
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