2018 Fiscal Year Annual Research Report
Investigation of new basal ganglia network
Project/Area Number |
16H03299
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Research Institution | Doshisha University |
Principal Investigator |
藤山 文乃 同志社大学, 脳科学研究科, 教授 (20244022)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
苅部 冬紀 同志社大学, 研究開発推進機構, 准教授 (60312279)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 大脳基底核 |
Outline of Annual Research Achievements |
淡蒼球 (GP: Globus pallidus)は大脳基底核の間接路の中継核である。近年GPにおいて、従来報告されてきた視床下核、脚内核、黒質に投射をする細胞タイプ (Prototypic neuron) とは異なる、線条体のみへ投射をする細胞タイプ (Arkypallidal neuron) が発見された (Fujiyama et al., 2015; Abdi et al., 2015; Dodson et al., 2015)。Arkypallidal neuronの存在は、GPが従来の間接路スキームに則った線条体-GP-脚内核・黒質という単なる一方向の伝達を行っているわけではなく、GP内で計算した情報を線条体にフィードバックしていることを示している。しかしGPの細胞タイプと局所結合の関係は未だ明らかではない。本研究では、この問題を解決するため、GPの局所結合を細胞タイプに分けてその抑制性結合を形態学と電気生理学を用いて調べた。具体的には、Cre-loxPシステムとオプトジェネティクスを組み合わせて、パルブアルブミン(PV)ニューロンを特異的に光刺激によりアクティベートさせ、GPのPVニューロンによるGPニューロンへのGABA-A受容体とGABA-B受容体を介する抑制性シナプス応答を細胞種ごとに明らかにした。GPには、PV発現細胞のほかに、Lhx6もしくはFoxP2を発現する細胞が存在するが、遺伝子組換え動物あるいはウイルスベクターを工夫して組み合わせることで、GP内におけるより詳しい抑制性結合関係を解明しつつあり、この実験経過を国際学会で発表した。これらの研究により投射様式の異なるPrototypic neuronとArkypallidal neuronがどのように情報をやりとりし、大脳基底核間接路の働きを調整しているのかを解明する足がかりになることが期待される。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
淡蒼球 (GP: Globus pallidus)内の2つの細胞タイプは投射先が違うだけではなく遺伝子発現も異なる。Prototypic neuronは、Ca2+結合タンパク質であるパルブアルブミン (PV) もしくは転写因子Lim-homeobox 6 (Lhx6) を発現する。本実験では、本研究室ですでに実験に使用されている、PV発現細胞特異的にCreを発現するPV-cre Ratを使用することができた。このことにより、Cre依存的にチャネルロドプシン2 (ChR2) と赤色蛍光タンパク質tdTomatoを発現するアデノ随伴ウィルスベクターをGPに注入することにより、PV発現細胞にのみtdTomatoとChR2を発現させることができたが、最初その感染効率がなかなかあがらず、実験の進捗がやや遅れた。現在は感染効率も上昇し、注入から2週間後に急性スライス切片を作製し、GPのニューロンからホールセルパッチクランプ記録を行うことができるようになっている。さらに、記録の際に、ガラス電極内にバイオサイチンを加えておくことで、組織学的解析において記録した細胞をpost-hocに同定できるようにしている。このとき、スライス標本を透明化しておくことで、スライスを厚みをもたせたまま処理することができ、神経細胞の再構成が容易になっている。このことによって、さらに確実に、GP細胞の遺伝子発現によるタイプ分けを明確にすることができつつある。
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Strategy for Future Research Activity |
現時点で、淡蒼球 (GP: Globus pallidus)内の異なる2細胞から、ChR2を発現したパルブアルブミン (PV) ニューロンによるGABA作動性の応答を記録することができつつある 。10 Hzの光刺激を与えた際、1発目の応答が大きく、2発目の応答が1発目に比べて非常に小さくなる傾向が見られており、これは、細胞種の同定をされていない研究ではあるが、でGPニューロンからGPニューロンへの抑制性電流を記録した Sims et al., 2008やC Miguelez et al., 2012の、10 Hzでの刺激で1発目と2発目のIPSCの大きさに差がほとんど無いという結果とは異なるものとなった。PVニューロンはGP内ニューロンへの抑制性結合に多様性があり、細胞タイプにより結合が異なる可能性があるため、細胞タイプ別にデータを取っていく方針に変更した。 また、GABA-A受容体阻害剤SR95531を加えたところ、光刺激による応答が残るものと残らないものとがあることが確認された。 GPニューロンにおいて、GABA-B受容体を介した抑制性応答が存在することが知られているので (Kaneda and Kita, 2005)、GABA-A受容体阻害剤SR95531による応答の消失が見られない理由はGABA-B受容体による抑制性入力もあることが予想される。したがって、今後はGABA-B受容体阻害剤CGP55845も使用することで、GABA-A受容体を介した抑制性電流とGABA-B受容体を介した抑制性電流をそれぞれ解析していく。さらに、免疫染色による細胞タイプの同定と合わせることで、PVニューロンによる抑制性結合が後細胞の細胞タイプごとにどう異なっているのかを明らかにする予定である。
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