2016 Fiscal Year Annual Research Report
自然災害に対する観光地の「災害弾力性」に関する評価指標の開発
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16H03334
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Research Institution | Rikkyo University |
Principal Investigator |
橋本 俊哉 立教大学, 観光学部, 教授 (50277737)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
海津 ゆりえ 文教大学, 国際学部, 教授 (20453441)
真板 昭夫 北海道大学, 観光学高等研究センター, 特任教授 (80340537)
室崎 益輝 公益財団法人ひょうご震災記念21世紀研究機構, 研究調査本部, 研究調査本部長 (90026261)
江面 嗣人 岡山理科大学, 工学部, 教授 (00461210)
橋本 裕之 追手門学院大学, 地域創造学部, 教授 (70208461)
黒沢 高秀 福島大学, 共生システム理工学類, 教授 (80292449)
丹治 朋子 川村学園女子大学, 生活創造学部, 教授 (80340876)
清野 隆 江戸川大学, 社会学部, 講師 (70598200)
丸谷 耕太 金沢大学, 人間科学系, 助教 (50749356)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 観光地 / 自然災害 / 災害弾力性 / 評価指標 |
Outline of Annual Research Achievements |
自然災害は地域の変容を余儀なくするが、速やかに復興・発展する地域と影響が長期化する地域とがある。観光地では観光自体の再生に差異が表れる。こうした差異が生じる条件を明らかにすることは、観光地の自然災害からの復興と持続的な発展において重要な視点である。本研究は、調査1:復興を遂げた国内外の観光地の事例分析、調査2:被災地・風評被災地の復興観光研究、調査3:東北地方の被災観光地における復興への対応プロセスの分析を通して、観光地の「災害弾力性」(災害に対する抵抗力と回復力)を測定する指標を明らかにすることを目的としている。 この目的を達成するために、本年度は調査1ならびに調査2に取り組んだ。調査1では、かつて自然災害により大きな被害を受けた観光地を事例として取り上げ、その復興や再生、風評被害への対策等の視点から、指標の作成に多くの示唆が得られると考えられる代表的な観光地を選定し、被災から復興・再生に至るプロセスを分析した。海外では、津波からの復興を遂げたヒロ(米国ハワイ州)、地震からの復興が進められているラクイラ(イタリア)で現地調査が行われた。国内では、平成28年4月に発生した熊本地震後の復興過程の視察と現地の観光行政担当者ならびに観光関連の組織、事業者に対する聞き取り調査、普代村(岩手県)の堤防視察を実施した。調査2については、宮古市(岩手県)では、芸能の活用を通じたエコツーリズムを、北塩原村(福島県)では火山噴火後の地形を学ぶジオツアーをそれぞれ実施し、観光復興に取り組んだ。 以上の調査を通して、「伝統文化の継承」「地域住民の地域への理解度の向上」「平時からの外部との交流・ネットワークの構築」「冗長性の視点の導入」等の指標が抽出された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
調査1については、当初予定していた海外の事例に加え、研究プロジェクトがスタートした直後に発生した熊本地震への行政・民間の対応も把握することができた。調査2の宮古市については「伝統芸能・防災教育・文化財」の視点から、①自然災害から身を守る知恵を伝える手法の開発・実践、②自然災害に対応したまちづくり、③心の復興を促す芸能・文化資源の掘り起こし及び観光とのつながり、④自然災害の克服をめざす観光の普及をめざして計画され、当初の予定通りに進められている。 北塩原村(福島県)については、当初計画では「食の域内循環と農村風景」に焦点をあてて調査を進める予定であった。しかし、当初想定していた村内の調査対象区域において調査協力が得られにくい状況にあったことと、当該調査地が大規模な火山噴火によって被災し、その後、噴火後の地形を活かしたわが国を代表する自然観光地となったことから、現地での研究協力者との協議のうえ、火山噴火後の復旧・観光地化のプロセスの分析から「災害に強い自然観光地」の要因を抽出するとともに、文化観光拠点を整備し地域の知恵や魅力を今に伝えてゆくことを通じて、住民の地域に対する意識を高め、風評被害に強い観光地づくりを実践する形で調査を進めることとし、新たな現地組織との協力体制も構築されつつある。 宮古・北塩原ともに調査メンバーとして参加した学生のアイデアを活かす形で調査が進められ、現地の研究協力者との協力体制も円滑に進められている。またプロジェクトメンバー間でも、本年度は予定通り2度会議が開催され、メンバー間で今年度の研究成果の共有と次年度に向けた研究方針が共有されている。以上から、本プロジェクトは現在までおおむね順調に進展していると判断できる。
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Strategy for Future Research Activity |
平成28年度の研究成果をふまえ、今後は、調査1では捕里(台湾)、由布市(大分)、城崎町(兵庫)、雲仙市(長崎県)、洞爺湖町(北海道)等で調査を行うことにより、指標の精緻化を図る。調査2については、宮古市においてはエコツーリズムの継続実施の他、被災地沿岸各都市における「語り部」による観光の視察を通した考察、国内外先進地の現在における観光者への情報提供のあり方や観光地としての「備え」について情報収集を図り、芸能および文化財担当分担者との会議を通して提言をまとめる。北塩原村においては、1888年の磐梯山噴火の体験者の子孫の方々から、被害や復興の状況について聞き取り調査を実施し、地元の小中学生に対して実施されている災害学習の場の参与観察を通して、地元住民や観光客に対して語り継がれてゆく仕組みを体系化する方策を検討してゆく。調査3では、それらの知見をもとに、指標に沿って収集された東北地方の観光地のデータをもとに比較分析を行い、各観光地の災害抵抗力・災害回復力の「診断」を試みる。 以上の成果をふまえ、総合的な指標の妥当性の検証とモデル化を試み、被災観光地と風評被災観光地の指標の共通点・相違点についての検討を行う。
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Research Products
(15 results)