2016 Fiscal Year Annual Research Report
Phenomenological Research on vulnerability and limitation of human being based on collaboration with Nordic phenomenologists
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16H03346
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
浜渦 辰二 大阪大学, 文学研究科, 教授 (70218527)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
池田 喬 明治大学, 文学部, 専任准教授 (70588839)
石原 孝二 東京大学, 大学院総合文化研究科, 准教授 (30291991)
稲原 美苗 神戸大学, 人間発達環境学研究科, 准教授 (00645997)
小手川 正二郎 國學院大學, 文学部, 准教授 (30728142)
筒井 晴香 東京大学, 大学院総合文化研究科, 特任研究員 (90760489)
中 真生 神戸大学, 人文学研究科, 准教授 (00401159)
中澤 瞳 (齋藤瞳) 日本大学, 通信教育部, 助教 (30756010)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 北欧現象学 / 傷つきやすさ / 生老病死 / 性とジェンダー / 障がい |
Outline of Annual Research Achievements |
本科研では、「誕生、老い、病い、死、障がい、痛み、性」という問題の場面が「人間の傷つきやすさと有限性」という共通テーマに繋がってくることを少しずつ確認するために、各年度に「誕生」「老い」「死」という三つの媒介的テーマを配置して、それらを各年度の核にすえながら共同研究を進めることを計画した。平成28年度は、「誕生」を共同研究の核に据えて、それにまつわる性・生理・性行為・生殖・受精・避妊・不妊・妊娠・中絶・出産・障がい・少子化といった諸問題に焦点を当てた。共同研究を始めるにあたって、それぞれのこれまでの研究成果を共有するとともに、これまでのそれぞれの関心がやがては共通テーマへと繋がっていくことを少しずつ確認しながら、北欧現象学者たちとの学術的交流を開始した。国内での研究会は、第1回研究会を大阪大学(2016/7/18)にて、第2回研究会を明治大学(2016/12/23)にて、第3回研究会を神戸大学(2017.2.20)にて行い、とりわけ第3回研究会は、国際シンポジウムも兼ねて、他科研(代表:研究分担者の稲原)の招へいによりスウェーデン・ヨーテボリより来日していたEmma Gran講師に参加いただき開催した。また、研究分担者を北欧諸国に派遣して、そこで研究会を開催することを模索したが、当てにしていたスウェーデンの研究者とフィンランドの研究者が、それぞれ出産休暇に入ったことと、学内の改組のため余裕がなくなったこととで、ともに不可能になったため、相談の結果、翌年度5月に開催される北欧現象学会で一緒にワークショップを開催することとなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
第1回研究会(大阪大学)では、研究分担者のうち、浜渦辰二「イントロ:北欧現象学との共同研究」、中澤瞳「フェミニスト現象学の観点から性差と身体について考える」、筒井晴香「傷つきやすい行為者を考える―関係的自律性理論を手掛かりに」、中真生「生殖の身体性と他者性」、小手川正二郎「子を産むことと親になること―家族の現象学序説」という5人の研究発表会を行い、第2回研究会(明治大学)では、研究分担者のメンバー以外から、宮原優(立教大学・兼任講師)「振りまわされる身体」、居永正宏(大阪府立大学・客員研究員)「死の哲学から産みの哲学へー男は「産み」をどう哲学できるのか」、白井千晶(静岡大学人文社会科学部・教授)「リプロダクションの今」、梶谷真司(東京大学大学院総合文化研究科・教授)「交感する身体の病と健康~近世の養生書・育児書における人間観」という4人の研究者をお招きして研究発表会を行い、第3回研究会(神戸大学)では、同様にメンバー以外から、前述のEmma Gran(ヨーテボリ市立カナベック聾・特別支援学校・身体表現講師) “Embodied Play - Using the Nonverbal to Connect with Children in a Special School”、本間直樹(大阪大学COセンター・准教授)・佐久間新(舞踊家)「わかる/わからないはからだでどうわかる? しゃべらないダンスワークショップから」、永浜明子(立命館大学スポーツ健康科学部・准教授)「ひとりひとりのアダプテッド・スポーツ」という4人の研究者をお招きして、研究発表会および国際シンポジウムを行った。研究分担者が北欧諸国に出向いて研究会をする計画は、翌年度5月に開催される北欧現象学会で実現することにしたため、そのために予定していた海外旅費3人分(150万円)を翌年度に繰り越しすることとした。
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Strategy for Future Research Activity |
北欧現象学会と交流協定により日本現象学会から毎年、シニア研究者1人とジュニア研究者1人を派遣することになっているが、翌年度5月の開催される北欧現象学会には、本科研メンバーから、シニア研究者として浜渦がPlenary session を、ジュニア研究者として稲原、小手川の2人が、Irina Poleshchuk(Finland, Helsinki University)とLisa Folkmarson Kaell(Sweden, Stockholm University)とともにParallel sessionを行うことになった。また、研究分担者の池田も企画・運営に携わった明治大学人文科学研究所総合研究「現象学の異境的展開」主催の「ケア・ジェンダー・いのち:北欧における現象学の展開」において、浜渦が「北欧ケアの思想的基盤を掘り起こす」という発表を行った。これは浜渦が代表で平成27年度まで続けていた科研「北欧の在宅・地域ケアに繋がる生活世界アプローチの思想的基盤の解明」の成果を報告するものであったが、それによって、これまでの科研の成果を明治大学の総合研究に繋げるとともに、本科研とも繋げていこうとするものであった。平成28年度は、「誕生」を共同研究の核に据えて、それにまつわる性・生理・性行為・生殖・受精・避妊・不妊・妊娠・中絶・出産・障がい・少子化といった諸問題に焦点を当てる予定であったが、問題としては身体を軸にしてもっと広い拡がりをもつため、共同研究の議論としても関連するテーマへと広がっていった。これは問題の絡み合いからしてやむをえない当然の繋がりとして考える方向で進めていくこととした。
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