2018 Fiscal Year Annual Research Report
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16H03372
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
稲本 泰生 京都大学, 人文科学研究所, 教授 (70252509)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
板倉 聖哲 東京大学, 東洋文化研究所, 教授 (00242074)
岡村 秀典 京都大学, 人文科学研究所, 教授 (20183246)
岩井 共二 独立行政法人国立文化財機構奈良国立博物館, その他部局等, 室長 (50646213)
船山 徹 京都大学, 人文科学研究所, 教授 (70209154)
谷口 耕生 独立行政法人国立文化財機構奈良国立博物館, その他部局等, 室長 (80343002)
大原 嘉豊 独立行政法人国立文化財機構京都国立博物館, 学芸部保存修理指導室, 室長 (90324699)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 東アジア美術 / 仏伝 / 表象 |
Outline of Annual Research Achievements |
助成金交付後、研究代表者・研究分担者を中心に研究内容・方針について具体的な討議を重ね、当該テーマに沿った資料蒐集(図書・画像など)及び研究活動に従事した。 30年度の実績・成果として特筆すべきは、研究代表者の稲本が客員研究員をつとめる龍谷ミュージアムで開催された特別展「お釈迦さんワールド-ブッダになったひと」(4月21日~6月17日)の図録及び関連企画における成果の公表である。図録には稲本及び西谷功(研究協力者)が論考を、板倉聖哲(研究分担者)及び西谷が作品解説を寄稿した。同時に稲本が記念講演(5月27日)を行い、美術史学会との連携によるシンポジウム(4月28日)で西谷及び田中健一(連携研究者)が研究発表を行った。いずれも東アジアの仏伝表象を扱った内容で、本科研の過去二年間の調査等で得た知見が反映された。 12月23日には京都大学人文科学研究所でワークショップを開催し、稲本が「10~11世紀の中印交渉と仏教美術-ブッダガヤへの奉献行為から」、増記隆介(連携研究者)が「「応徳涅槃図」再考-原本の存在とその絵画史的位置」と題する報告を行った。ともに仏伝関係の文物から五代~北宋並行期の仏教美術の動向を捉え直す、本科研の核心に触れるテーマの研究であり、30名をこえる参加者を得て活発な討論がなされた。 海外調査は8~9月にかけて中国河北省・山西省・上海市等で16日間、1月にインドで9日間、計2回実施した。第1回は河北博物院・定州市博物館・山西博物院などの展示施設のほか、河北省正定・隆興寺、同趙州・陀羅尼石幢や山西省繁峙・巌山寺などで釈迦信仰関連の彫刻・絵画を中心に調査を行った。第2回はコルカタ・インド博物館、パトナ・ビハール博物館、ボードガヤーの遺跡及び博物館、ナーランダー考古博物館等で東アジアの仏伝表象と関連する作品群を調査し、研究資料の蒐集・蓄積を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
4年に及ぶ研究期間の前半が終了した30年度初、龍谷ミュージアムの特別展「お釈迦さんワールド」の展覧会図録及び関連企画で、研究組織中の4名が過去2年間の調査等で得た知見を含む成果を公表した。29年度に調査した陝西省安塞県真武洞石窟の北朝期仏伝図をわが国で初紹介するなど、本科研の中間報告を行う意義深い機会となった。 30年度の調査では、中国唐宋時代及び並行期の東アジア世界における仏伝表象のあり方を、より鮮明ならしめる資料群を蒐集することができた。中でも研究代表者によるワークショップの発表をふまえたインド調査では、10~11世紀に中国人巡礼僧がブッダガヤに奉献した漢文石刻史料群(及び彫刻)をコルカタ・インド博物館で実査し、東アジア仏教徒の仏伝・仏蹟表象と文物の関係にまつわる重要な発見があった。これによって本科研全体の成果の核とするに相応しい、学界を大いに裨益するであろう研究報告を完成させる目処が立った。 今のところ資料の即物的な調査研究と、仏伝美術を「表象」という観点から多角的に考察する試みはうまく相補的に機能しており、報告書を兼ねた論集の編集・出版に向けた体勢がすでに整っている。論考は主にワークショップにおける発表に基礎をおくもので、過去三年間のうちに、着実に掲載を見込める本数を増やしている。
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Strategy for Future Research Activity |
4年間の研究を総括して10余篇からなる、報告書を兼ねた論集の出版を計画している。最終年度である本年度は、その編集に注力する。すでに出版社との間で刊行に向けた具体的な調整を始めており、アジア全域を視野におさめ、仏伝表象の諸相を体系的に捉えた書物とすべく、各執筆者との間で検討を重ねている。 本年度も複数回ワークショップを実施する。確定しているのは以下の2回である。まず6月には、大英博物館のマイケル・ウイリス氏に、仏伝とインドの女神信仰の関係をテーマとした研究発表を行っていただく(国際研究集会として開催)。7月には岩井共二(研究分担者)が人種の表象と釈迦の姿の関係について、谷口耕生(同)が日本の涅槃図について、研究報告を行う。いずれも当日の討論を経て論文化し、上述の論集に掲載する予定である。 また中国河南省・山西省の博物館・石窟寺院等における現地調査も計画している。ただし最終年度は研究報告の精度向上と内容拡充に資するべく、過去三年間の調査を補完することを優先して、国内外で作品調査・資料蒐集にあたる予定である。このため海外調査の行先は、状況によっては年度内に変更する可能性もある。
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Research Products
(12 results)