2018 Fiscal Year Annual Research Report
Ars aedificatoria as the bases for the crafts of thought: the idea of space in visual art and literature of the early modern Italy
Project/Area Number |
16H03373
|
Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
桑木野 幸司 大阪大学, 文学研究科, 准教授 (30609441)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
水野 千依 青山学院大学, 文学部, 教授 (40330055)
渡辺 浩司 大阪大学, 文学研究科, 准教授 (50263182)
林 千宏 大阪大学, 言語文化研究科(言語文化専攻), 准教授 (80549551)
|
Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2020-03-31
|
Keywords | 記憶術 / 庭園 / 建築 / ルネサンス / 植物園 / 百科全書主義 / 多様性の美学 |
Outline of Annual Research Achievements |
四年の課題実施期間の第三年目にあたる本年度は、研究分担者・協力者たちとの間に初年度~二年目に築いた研究推進連携体制の維持とさらなる強化を念頭に置きつつ、一次資料の分析ならびに関連先行研究の精査を行い、その成果を英語および日本語で発表した。また、昨年の研究発表シンポジウムでの議論のふかまりを踏まえたうえで、四年目のシンポジウム企画をより実りあるものとするべく、本年度は共同研究者各自が、割り当てられた課題を遂行する一年とした。大阪大学に拠点を置く分担者・協力者とは定期的に研究ミーティングを行ったほか、東京や名古屋の研究者についててゃ、研究代表者が個別に出張し、ディスカッションを行った。 本年度とくに注力したのは、記憶術と庭園という二つのテーマである。記憶術については、これまで積み重ねてきた研究の現時点での区切りとして、講談社より『記憶術全史:ムネモシュネの饗宴』として出版した。一般書であるため、研究内容を広く社会に還元するアウトリーチ的な意味合いが筆頭にあるものの、その内容については、最新の研究成果を投入したものであり、初期近代の思想や文芸・芸術における創造的な知的活動の場面で、記憶術が積極的な役割を果たしていたことを、十分な説得力をもって提示することができた。 また庭園については、中世庭園について、イメージとテクストと空間の融合という観点から『ヨーロッパ中世美術論集5:中世美術の諸相』に論文を寄稿し、また初期近代の博物学・植物学の発展と庭園デザインの密接な関係について、国際シンポジウムの場で英語の発表を行った。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
三年目にあたる本年度は、前年度までに行った研究基盤の整備をうけて、本格的な資料分析を開始した。研究に関しては、代表者である桑木野が、本課題の主要テーマである記憶術について、単著を一冊刊行したほか、庭園史に関して、日本語の論文一本、英語の発表一本を行った。これは、研究内容の社会への還元ならびに国際的なアウトプットを目標とする本研究にとっては、大いなる進捗といってよい。 反省点としては、本年度は、研究代表者・研究分担者それぞれにとって、課題に取り組む年としたため、年度末のシンポジウムないしは研究報告会が開催できなかったことである。ただしこれは、最終年度にむけて、各自が分析を深めるための措置であり、最終シンポジウムにおいて、各自が独創的な研究成果を発表する予定であるため、研究プロジェクト全体の進捗にちっては、なんら問題はない。
|
Strategy for Future Research Activity |
今後は、三年間の研究成果をまとめる作業に移行してゆく。具体的には、年度末(2月か3月を予定)の総括シンポジウムにむけて、研究分担者および研究協力者が、各自の分担テーマをさらに深化させてゆく。また、同シンポジウムでの発表のうち、特に優れた成果を提示したものについては、論集の刊行を企画する予定である。現在のところ、学内紀要を想定しているが、大学出版社への打診も試みる。 研究代表者は具体的に、十六世紀の建築・庭園デザインにおける、多様性(varietas)に着目して、ラテン語およびイタリア語の一次資料の分析を行う予定である。その成果は、英語またはイタリア語にて、論文としてまとめる。 他方で、年度末のシンポジウムでは、本課題と関連するテーマを研究している若手、特に大学院修士・博士課程の学生にも、発表の場を提供し、将来の共同研究の基盤づくりにつとめることとする。学生が担当する具体的なテーマとしては、次のような課題を想定している。すなわち、占星術や天文の図像、あるいは博物図譜といった、科学と美術を横断する主題に、情報伝達・分類という観点から記憶術の影響をさぐるものや、あるいは、祝祭芸術の構成や装飾図像などを音楽学的観点から分析しつつ、その演出方法に、同時代の記憶術からの影響を探るもの、など。 また、国際的な共同研究という点では、本課題の研究協力者であるパウリーナ・シュピエホーヴィチ氏以外にも、初期近代の修辞学と美術の分析で有名なミシェル・パオリ氏や、ルネサンス記憶術と文学の研究で著名な、ピサ高等師範学校のアンドレア・トッレ氏との連携を模索し、課題終了後のさらなるテーマの発展の先鞭をつけることを、最終年度のもう一つの課題としておきたい。
|
Research Products
(9 results)