2017 Fiscal Year Annual Research Report
近世移動学の構築―ユーラシア世界と太平洋・大西洋世界における移動の統合的分析―
Project/Area Number |
16H03461
|
Research Institution | Miyagi University of Education |
Principal Investigator |
田中 良英 宮城教育大学, 教育学部, 教授 (20610546)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
割田 聖史 青山学院大学, 文学部, 教授 (20438568)
津田 博司 筑波大学, 人文社会系, 助教 (30599387)
長森 美信 天理大学, 国際学部, 准教授 (50412135)
杉山 清彦 東京大学, 大学院総合文化研究科, 准教授 (80379213)
大原 志麻 静岡大学, 人文社会科学部, 准教授 (80515411)
苑田 亜矢 熊本大学, 大学院人文社会科学研究部(法), 教授 (80325539)
加藤 玄 日本女子大学, 文学部, 准教授 (00431883)
桑山 由文 京都女子大学, 文学部, 教授 (60343266)
|
Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2020-03-31
|
Keywords | 史学一般 / 移動 / 近世 / アイデンティティ |
Outline of Annual Research Achievements |
17世紀から19世紀第3四半期の時期を中心に「人の移動と接触」の実態と影響の包括的理解を試みる本研究においては、まずは前年度に引き続き個別事例の集積に努めた。その際、平成28年度の研究活動の過程で生じた研究対象・視角の拡張に対応するべく、すでに連携研究者として参画していたメンバーの内4名を研究分担者に変更し、主としてそれら新規分担者が成果報告を担当する形を取った。具体的には、①スペインの旧家フォンセカ家との関係下に15~16世紀にラテンアメリカに移動したコンキスタドーレス第1世代による現地への文化的影響、②紀元1世紀ローマ帝国内の東部出身エリートの台頭に伴う新たなローマ的伝統の形成、③13~14世紀にイングランド王とアキテーヌ公を兼ねたエドワード1世による国境を越えた移動宮廷の編成と移動先への影響(ボルドーのジロンド県文書館でアキテーヌ公領内の資料を収集)、④12世紀中葉イングランドの貴族アンステイによる勝訴のための手段としてのヨーロッパ広域の移動、⑤ヴィクトリア時代のイギリス知識人における移民への評価の変遷など、平成29年7月及び12月、平成30年3月の3回にわたる研究会の中で多彩な成果が発表された。なお当初からの研究分担者も、カナダにおけるウクライナ系移民の実態を探るべく、現地文献の収集に加え、ウクライナ東方カトリック教会および正教会を訪問するなど、個別テーマの研究の深化を継続した。 また近世における移動や定着と宗教的ファクターとの関連性、そしてユーラシア世界から外部への移動の事例を検討する一助として、18世紀から現在まで多様な移民が到来しコミュニティを形成したオーストラリアのシドニーを対象に、市内に点在する東西諸宗派の宗教施設を共同調査した。さらに平成28年度の九州調査の延長として、平成30年2月に長崎県におけるキリシタンや渡来朝鮮人の史跡に関する共同調査も行った。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
平成28年度からの繰り越し作業が平成29年5月末まで継続した点と、成果内容の多様化とを主因として、当初平成29年度末までに予定していた、17世紀から19世紀第3四半期の時期を中心に「人の移動と接触」の諸事例をパターン化して把握する段階にまでは依然至っておらず、平成30年度には同作業を可及的速やかに完了する必要がある。
|
Strategy for Future Research Activity |
まずはパターン的仮説の構築のために、研究代表者を中心として従来の調査結果の整理を集中的に進めると共に、活動全体の加速化・効率化を図るべく、すでに連携研究者として参画していたメンバー2名についても研究分担者に変更し、積極的な協力を求める。また仮説の精緻化のためにもさらなるデータの集積が必要であり、メンバー各人が従来通り個別事例研究を深化させつつ、新たなテーマについても調査を展開する予定。 また過去2年間の共同現地調査が、専門領域の異なるメンバー間ならではの充実した議論や複合的視野の形成に寄与した点を考慮し、さらには上記仮説に関する共同での検討の時間を確保する意味も含め、平成30年度も共同調査の機会を設ける。現時点では、ユーラシア世界において東西を接合する要衝にあり、機械化以前の主要な移動形態の一つである遊牧の意義を考察するのにも有効な、モンゴル地域を対象として想定している。
|