2017 Fiscal Year Annual Research Report
佐賀藩薬種商・野中家資料の総合研究-日本史・医科学史・国文学・思想史の視点から-
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16H03474
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Research Institution | Saga University |
Principal Investigator |
伊藤 昭弘 佐賀大学, 地域学歴史文化研究センター, 准教授 (20423494)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
中尾 友香梨 佐賀大学, 全学教育機構, 准教授 (10441734)
三ツ松 誠 佐賀大学, 地域学歴史文化研究センター, 講師 (10712565)
伊香賀 隆 佐賀大学, 地域学歴史文化研究センター, 研究員 (20722995)
八耳 俊文 青山学院女子短期大学, その他部局等, 教授 (30220172)
有坂 道子 京都橘大学, 文学部, 教授 (30303796)
井上 敏幸 佐賀大学, その他部局等, 名誉教授 (50046207)
白石 良夫 佐賀大学, 地域学歴史文化研究センター, 教授 (60137320)
青木 歳幸 佐賀大学, 地域学歴史文化研究センター, 教授 (60444866)
ミヒェル ヴォルフガング 公益財団法人 研医会, その他部局等, 研究員(移行) (90619769)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 日本史 / 国文学 / 医学史 / 化学史 / 地域資料 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、近世以来城下町・佐賀(佐嘉)において漢方薬「烏犀圓」の製造・販売業を営んできた野中家が所蔵する資料を調査し、目録作成・総合研究の実施を目的としている。そのため資料の内容にあわせ、歴史・文化文芸・医学薬学の3班でメンバーを組織し、調査・研究をすすめた。 歴史班:新たに発見された近現代資料については整理を終了した。近世文書については、確認作業をすすめている。そのほか「烏犀圓」の流通状況をさぐるため、国文学研究資料館所蔵の越後国庄屋史料や福岡県立図書館所蔵の商家資料を調査し、「烏犀圓」の購入目録や引札(広告)などを確認した。また野中家と国学者との関係、佐賀藩とのかかわりについて引き続き検討したほか、他地域との比較材料として、上方の商人と学者・文人たちとの交流にかんする事例研究をすすめた。 文化文芸班:典籍類・文芸資料類の補充調査を行い、データ入力も終了した。今後は資料の分類をすすめ、目録作成につなげる。また野中家と佐賀藩の文人との関係、文人が残した作品の調査など、着実に進展させている。そのほか野中家以外に伝来が確認されていない「化け猫」関係の書籍について、他の「化け猫」書籍との内容の異同などについて検討し、野中家のコレクションの多様さを明らかにしつつある。 医学薬学班:医学関係の資料のデータ入力を完了させ、今後は洋書タイトルの確認や分類作業をすすめていく。また野中家所蔵の貴重な化学資料にかんする研究、野中家が入手した書籍の伝来の研究、野中家の資料からみた種痘の研究などをすすめている。 以上3班の研究成果を共有するため2月に合同研究会を実施した。またシンポジウムを開催し、研究成果の公開につとめた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
文化文芸班・医学薬学班の調査対象資料はデータ入力まで終え、今後は補充調査および研究をすすめていく。また1年目に実施した他地域の「烏犀圓」関係資料調査もおおむね終え、野中家の「烏犀圓」との比較が可能となった。 歴史班では、近現代資料の調査を終え、同家がアジア・太平洋戦争期、満州・朝鮮半島方面へ烏犀圓を販売していた状況を把握できた。また文人・国学者との交流についても、概要を把握することができた。
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Strategy for Future Research Activity |
30年度は本研究の最終年度にあたるため、資料目録と代表者・分担者の論考・資料紹介等からなる報告書の刊行をめざす。目録作成については、資料のデータはほぼ入力を終えているため、本年度は資料の分類・補充調査による内容確認作業が中心となる。。 代表者・分担者各自の研究については、2年間の成果をもとに最終的な詰めの作業・調査となる。各自がそれぞれの専門に応じたテーマを設定しており、野中家の資料について多様な面から評価する。現在のところ幕末期野中家の経営、幕末長崎の医療(野中家蔵書の伝来過程)、野中家所蔵疱瘡関係資料、「化け猫」物語資料、幕末佐賀藩の文人・官僚古川松根について、上方の商家・医者の文化交流、野中家所蔵漢籍・漢詩の研究、化学資料『舎密便覧』研究といったテーマを設定している。 また、他地域の「烏犀圓」調査はほぼ終えたが、今後も新たな情報があれば、調査を行う予定である。特に「烏犀圓」が江戸時代に製造されていたとされる福岡・熊本については、関係資料の所在について、情報収集を続ける今後の歴史・文化・医化学研究においての利用を促すような、報告書作成をめざす。
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