2017 Fiscal Year Annual Research Report
近世国家境界域「四つの口」における物資流通の比較考古学的研究
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16H03510
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Research Institution | Kagoshima University |
Principal Investigator |
渡辺 芳郎 鹿児島大学, 法文教育学域法文学系, 教授 (10210965)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
関根 達人 弘前大学, 人文社会科学部, 教授 (00241505)
菊池 勇夫 宮城学院女子大学, 一般教育部, 教授 (20186191)
堀内 秀樹 東京大学, キャンパス計画室, 准教授 (30173628)
池田 栄史 琉球大学, 法文学部, 教授 (40150627)
木村 直樹 長崎大学, 多文化社会学部, 教授 (40323662)
深澤 秋人 沖縄国際大学, 総合文化学部, 教授 (50612785)
野上 建紀 長崎大学, 多文化社会学部, 教授 (60722030)
片山 まび 東京藝術大学, 美術学部, 教授 (80393312)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 近世国家境界域 / 四つの口 / 物資流通 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成29年度は、昨年度実施した口之島での発掘調査成果の整理と、北海道松前での研究会、沖縄での資料調査を行った。 口之島での発掘調査の出土遺物のうち、近世の陶磁器は、17世紀の肥前産染付磁器、陶器の摺鉢片、18世紀の肥前産染付磁器(丸文)、薩摩焼苗代川産の摺鉢、18世紀末~19世紀初頭の薩摩産の染付雪持笹文半筒碗がある。19世紀の陶磁器には薩摩焼龍門司産の鮫肌釉陶器片、苗代川産の甕口縁がある。その他の陶磁器として、沖縄産の無釉陶器(荒焼)の甕胴部片や三足香炉の底部がある。このような中世~近世における陶磁器流通は、近世鹿児島の流通様相と類似していることから、国産陶磁器の供給源が鹿児島であったことが推測される。また沖縄産陶器の出土は沖縄経由の流通の存在を示し、トカラ列島が南からの流通と北からの流通の交差地帯であることを改めて確認できた。 北海道松前での研究会では、研究分担者がこれまでの研究成果について報告するとともに、松前町・上ノ国町・江差町などにおける近世の北方流通に関係する史跡・遺物などの調査を実施した。なお研究会については『北海道新聞』道南版(2017年11月28日)に記事が掲載された。 沖縄では久米島において伝来品調査を実施した。島の有力者(「君南風」と呼ばれる島における最高位のノロ)の家に伝来した薩摩焼には、薩摩藩藩窯製品が含まれており、薩摩藩-琉球王府-久米島有力者の間での薩摩焼流通の一端を明らかにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
十島口之島の発掘調査の資料を整理することで、近世トカラにおける物資流通の実態が明らかにできた。これまでの鹿児島と沖縄における陶磁器流通に関する研究成果と比較すると、十島が「北からの流れ」と「南からの流れ」の交錯域であることがより鮮明になった。 松前研究会において、近世北方地域における物資流通の調査研究を、研究分担者と行うことで、北方地域の特徴とともに、他の地域との共通点・相違点について検討が行われた。 沖縄における調査により薩摩焼藩窯製品の社会上位階層における流通の様相が明らかになった。
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Strategy for Future Research Activity |
今後も各地域における近世物資流通の検討を、各班で進めていく。そして琉球・松前以外の「四つの口」(長崎・対馬など)において研究会ならびに共同調査を実施することで、各地の特徴の抽出と他地域との比較検討を深めていく。 南西諸島における近世の考古学的資料を調査することで、「琉球口」と本土地域との間をつなぐ物資流通の実態を明らかにしていく。 また韓国における調査を実施し、日本製品の流通の様相を把握する。
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