2019 Fiscal Year Annual Research Report
近世国家境界域「四つの口」における物資流通の比較考古学的研究
Project/Area Number |
16H03510
|
Research Institution | Kagoshima University |
Principal Investigator |
渡辺 芳郎 鹿児島大学, 法文教育学域法文学系, 教授 (10210965)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
関根 達人 弘前大学, 人文社会科学部, 教授 (00241505)
菊池 勇夫 宮城学院女子大学, 付置研究所, 研究員 (20186191)
堀内 秀樹 東京大学, キャンパス計画室, 准教授 (30173628)
池田 栄史 琉球大学, 国際地域創造学部, 教授 (40150627)
木村 直樹 長崎大学, 多文化社会学部, 教授 (40323662)
深澤 秋人 沖縄国際大学, 総合文化学部, 教授 (50612785)
野上 建紀 長崎大学, 多文化社会学部, 教授 (60722030)
片山 まび 東京藝術大学, 美術学部, 教授 (80393312)
|
Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2021-03-31
|
Keywords | 近世日本国家領域境界域 / 四つの口 / 物資流通 |
Outline of Annual Research Achievements |
令和元(平成31)年度は、奄美市奄美博物館保管の伝来陶磁器の調査(事前調査:2019年6月14日、本調査:2019年8月19~21日)と長崎県対馬において研究会(2019年11月2~4日)を実施した。 奄美博物館の調査では、同館に寄贈されている盛岡家伝来陶磁器37件83点の悉皆調査を行った。盛岡家(旧姓森家)は、奄美大和村において与人(最高位の島役人)を務めた旧家である。調査の結果、 (1)大皿・組物が多いこと、 (2)清朝磁器が含まれること、(3)薩摩藩窯・竪野窯製品が含まれることなどの特徴が把握できた。以上の特徴は、近世から近代にかけての奄美の有力者層の所蔵陶磁器の具体相を示しているとともに、基本的に廃棄品である遺跡出土の陶磁器では把握しにくい高級品の流通状況も示している。とくに清朝磁器の青花大皿、色絵碗7点を含む点に奄美の特徴が現れていると言える。また奄美大島大和村において明治初期に短期間操業した津名久焼について、これまで知られていたタイプとは異なる白薩摩的な製品の存在も確認できたことは成果の一つである。 対馬での研究会では、研究分担者がこれまでの研究成果について報告した。内容は以下の通りである。池田榮史「沖縄県那覇港「渡地村跡」遺跡調査報告書からみた那覇港の変遷」、深澤秋人「鹿児島県管轄期における日本産品の流通-繰綿と海産物を中心に-」、渡辺芳郎「奄美大和村盛岡家伝来資料の調査」、野上建紀「西海の島々で焼かれた磁器」、木村直樹「長崎貿易の捉え方-オランダ貿易・唐人貿易・脇荷・抜荷」、堀内秀樹「江戸における外国製品の流通Ⅲ」、片山まび「朝鮮通信使がもたらした陶磁器」、関根達人「北海道松前町福山城下町遺跡発掘調査報告」。このほか対馬における史跡等の巡見を実施した。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
奄美博物館での調査により、考古学資料からは把握しにくい高級陶磁器の流通・所有状況を明らかにすることができた。これを以前に調査した奄美瀬戸内町西家・武家伝来陶磁器と比較することで、奄美大島における高級陶磁器の流通・所有状況の比較検討が可能になる。 また対馬研究会では、分担者相互の研究進展状況を把握するとともに、巡見により国境地帯としての対馬の歴史的特殊性について検討することができた。
|
Strategy for Future Research Activity |
最終年度である令和2年では、(1)5年間の研究成果についての公開研究会開催(鹿児島大学、2020年10月23日予定)と、(2)研究成果報告書の作成・刊行(2020年3月末予定)を計画している。
|