2016 Fiscal Year Annual Research Report
東日本大震災における復興の総合的研究―まちの復興、生活の再建、生業の復活を中心に
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16H03586
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Research Institution | Hyogo Earthquake Memorial 21st Century Research Institute |
Principal Investigator |
五百籏頭 真 公益財団法人ひょうご震災記念21世紀研究機構, その他部局等, 理事長 (10033747)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
御厨 貴 東京大学, 先端科学技術研究センター, 客員教授 (00092338)
廣田 純一 岩手大学, 農学部, 教授 (00173287)
牧原 出 東京大学, 先端科学技術研究センター, 教授 (00238891)
佐藤 翔輔 東北大学, 災害科学国際研究所, 助教 (00614372)
林 昌宏 常葉大学, 法学部, 講師 (00632902)
今村 文彦 東北大学, 災害科学国際研究所, 教授 (40213243)
砂原 庸介 神戸大学, 法学研究科, 准教授 (40549680)
手塚 洋輔 大阪市立大学, 大学院法学研究科, 准教授 (60376671)
楠 綾子 国際日本文化研究センター, 研究部, 准教授 (60531960)
井内 加奈子 東北大学, 災害科学国際研究所, 准教授 (60709187)
丹波 史紀 福島大学, 行政政策学類, 准教授 (70353068)
村井 良太 駒澤大学, 法学部, 教授 (70365534)
井上 正也 成蹊大学, 法学部, 准教授 (70550945)
室崎 益輝 公益財団法人ひょうご震災記念21世紀研究機構, 研究調査本部, 研究調査本部長 (90026261)
飯尾 潤 政策研究大学院大学, 政策研究科, 教授 (90241926)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 復興プロセス / リーダーシップ / 国・県・市町村の連携体制 / 各種復興制度の選択状況と選択に至るプロセス |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、東日本大震災における復興プロセスを総合的に検証するために、被災地でのヒアリング調査を研究手法の主軸に据え、復興への取組みの総合的検証を行うものである。この総合的検証によって、東北被災地にて重点的に取り組むべき方向性や新たな課題等を明らかにするとともに、将来の被災地への提言を行うことを目的としている。 研究プロジェクト1年目の平成28年度は、被災市町へのヒアリング調査にあたって、まず、被害状況から被災地の類型化を行った。そのうち、カテゴリーA【全面壊滅→新しいまち創造型】、カテゴリーB【沿岸部被災→復興型】に当てはまる市町として、岩手、宮城、福島3県でそれぞれ1市町、計6市町(岩手県釜石市、陸前高田市、宮城県南三陸町、東松島市、福島県新地町、南相馬市)を選定し、当該市町の行政担当部局に対して、7つの項目(①リーダーシップ、②5年間の復興の取組の考え方、③被災者支援、④公共・インフラの復旧・復興、⑤住宅再建・復興まちづくり、⑥産業の復興状況、復興支援策の評価、※南相馬市のみ⑦放射線被害からの復興課題を追加)に沿ってヒアリング調査を進めた。その結果、「集中復興期間」における復興プロセスの実態の一端を明らかにすることができた。 また、6市町へのヒアリング調査で課題として浮上した国と市町村の繋ぎ手としての役割を聞き取るため、岩手・宮城・福島3県庁へも同様の項目別にヒアリング調査を行った。その結果、リーダーシップのあり方、国・県・市町村の連携体制、各種制度の選択状況と選択に至るプロセスなど、震災復興を考えるうえで引き続き実態分析が必要なテーマが浮き彫りとなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
岩手、宮城、福島県の6つの被災市町、ならびに3県庁へのヒアリング調査を通じて、被害の程度や地理的状況など、異なる条件の被災自治体の復興プロセスをケーススタディとして調査することができた。 また、各研究者に復旧・復興においてキータームとなる、以下の研究テーマを割り当て、東北3県横断型の調査を進めた。研究テーマは、①被災者支援、②公共インフラの復旧と住宅再建、③産業・なりわいの再生(漁業と水産加工業の再生、農業の再生、製造業・商業・観光の再生)、④福島の復興・再生、⑤「新しい東北」の創造、⑥復興計画策定プロセス、⑦応援自治体の取組み、⑧民間セクターの取組み、⑨震災の記憶の継承、⑩義援金、⑪国、被災自治体の組織・制度である。 その結果、全体的評価として、東日本大震災の甚大な被害と野心的な復興政策を考えれば、加速措置なども相まって、復興計画のもと全体として復興事業は順調に進んでいるといえるが、課題もあることが明らかとなった。特に、①コミュニティの維持・発展のため、異なる分野の支援策の連携を図ること、②高台移転など土地の形状に関する事業に関して、事業の選択肢を広げ、予算面でも地元自治体の責任を明確化するほか、責任領域の切り分けのある制度設計を行うこと、③福島の再生に向けた複線的で総合的な取り組みの充実が求められることが明らかとなった。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の研究の推進方策としては、昨年度十分に調査研究が行えなかった課題を押さえつつ、生活復興を中心にさらなる調査を進める。 課題としては、28年度にヒアリングを行った6市町は比較的順調に震災復興が進められており、比較的課題の多い市町に対しての調査を十分に実施できていない、②福島県内の市町村に対しては、28年度は放射線被害の少ない新地町と、強いリーダーシップのもと復興が推し進められてきた南相馬市の2市町を扱っており、いまだ避難指示が解除されていない市町等への調査は十分に実施できていない、③28年度は、ヒアリング調査は主に行政の担当部局に対して行っており、住民、NPO、民間企業等、行政以外の立場の人々へのヒアリング調査は十分に実施できていない、という3点が挙げられる。 以上の課題のうち、平成29年度は1つないしは複数の課題を取り扱い、被災市町村の復興プロセスのケーススタディをさらに進め、復旧・復興の実態把握を進める必要がある。
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Research Products
(3 results)