2017 Fiscal Year Annual Research Report
Human Capital and Economic Growth
Project/Area Number |
16H03598
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
西村 和雄 神戸大学, 社会システムイノベーションセンター, 特命教授 (60145654)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
上東 貴志 神戸大学, 計算社会科学研究センター, 教授 (30324908)
岩佐 和道 神戸大学, 経済経営研究所, 准教授 (00534596)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 経済理論 / マクロ経済学 / 非線形動学 / 人的資本 / 教育 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、経済成長を、教育、人的資本の形成という視点で捉える立体的な構造を有しており、非線形動学を用いて、人的資本と内生的経済変動のメカニズムを解明する。 資本は投資によって価値を増加させることができるように、人間が持つ知識や技能も教育投資によって増加することが可能である。シカゴ学派の経済学者により、労働者を、その能力を含めて人的資本と呼ぶようになった。また、教育は、親世代の子供世代への投資であり、その水準は、子供の効用に対する親の評価によって決まってくる。また、子供が親の効用をどのように評価するかも、世代間の動学的資源配分に影響する。その観点から、29年7月に双方向利他的モデルの論文を発表して、30年3月に、新たな研究経過を国際conferenceで発表した。 キャスとシェル(JPE1983)は、経済のファンダメンタル(技術や選好など)に依存しない不確実性をサンスポットと呼び、それが均衡に影響することを議論した。また、経済のファンダメンタルに依存しない経済主体の主観的期待(アニマルスピリット)もまた均衡に影響する。さらに、金融制約のある状況での、人々の予想がマクロ経済における果たす役割についてまとめた論文また、所得分布に与える影響をまとめた論文が掲載予定である。また、政府の支出の大きさが経済成長にもたらす影響についての論文、資源の枯渇の恐れがある場合の経済成長についての論文が掲載予定である。 また、1つの産業内での効率的な役割分担や1つの企業内での分業体制の自然発生についての数学モデルを平成29年9月にTheoretical Economicsに発表したがこれは、マクロ経済動学の基礎を与える論文である。 また、子供の個性と教育の効果についての分野で、人の思考と行動に関する数学モデルの論文を発表した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
29年度は、経済理論において、7本の論文を国際学術誌へ投稿し、掲載済もしくは掲載予定となり、学会報告を5回行い、雑誌の特別号編集を1つ行った。その他、理数教育の生産性に関する論文を1つ、思考の数学モデルの論文を1つ国際雑誌に発表した。 産業や企業の発生を、創発現象として理論的に説明するKikuchi, Nishimura and Stachurski,(2017年7月掲載)は、マクロ経済動学の基礎理論を提供した。Arnaud, Nishimura, Nourry, Seegmuller and Venditti(掲載予定 )は、財政赤字が経済成長に与える影響を、Kunieda and Nishimura(掲載予定 )は借入制約の下での消費の外部性が存在する経済での景気変動を、Kunieda, Nishimura and Shibata(掲載予定 )は貿易を導入して所得分配を, Kunieda and Nishimura(平成30年3月掲載 )は、枯渇資源と経済成長に注目して分析した。Aoki and Nishimura(平成29年, 7月)は、世代間の資源配分と時間整合性を分析した。以上の研究では、マクロ経済動学の様々な側面を動学的に分析した。 人的資本の研究においては、理数教育の生産性をNishimura, Hirata, Yagi and Urasaka論文(2018,掲載予定)に、脳と思考の数学モデルをKato and Nishimura論文(平成29年, 12月)にまとめて発表した。 また、子供の個性と教育の効果については、平成30年2月にアンケートをとり、平成30年4月以降の脳機能測定の医学部との打ち合わせを行い、平成29年度より大阪市教育委員会での学校現場での実践を通じて研究を進めている。 順調に成果をあげているので、今後も成果を上げることができる。
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Strategy for Future Research Activity |
マクロ経済動学では、借入制約を導入したモデルで、経済主体が、他の経済主体の活動についての予想とその実現などを通じた依存関係の分析を行い、経済変動の発生と消滅のメカニズムを解明する。また、国際貿易モデルに拡張して分析を行う。 また、人的資本の生産性について、技術者の特許数の調査、理数教育、子育て、幼児教育に関する過去の調査結果を検討して、総合的な分析を行い新たな調査の設計を行う。 また、子育て、受けた教育と成人の幸福度についての、より詳細で、実証的な分析を行う予定である。 さらに、個人の思考タイプについての調査を行い、脳機能解析と結びつけ、数学モデルも設計する。 以上の研究結果を、論文にまとめて、コンファランス、学術誌で発表してゆく。
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