2016 Fiscal Year Annual Research Report
両替商金融から近代金融へ:新史料に基づく加島屋久右衛門と鴻池屋善右衛門の比較研究
Project/Area Number |
16H03645
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
高槻 泰郎 神戸大学, 経済経営研究所, 准教授 (70583798)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
宮本 又郎 大阪大学, 経済学研究科, 名誉教授 (50030672)
結城 武延 東北大学, 経済学研究科, 准教授 (80613679)
小林 延人 秀明大学, 学校教師学部, 講師 (80723254)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 経済史 / 日本史 / 経営史 / 金融史 / 金融・ファイナンス |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究課題は、近世大坂両替商による資本蓄積過程と近代的金融機関への移行過程を分析することにより、我が国の経済が明治以降に急速な成長を遂げた背景を考察するものである。具体的には、近世・近代大阪の金融界を牽引した商家・廣岡家(加島屋久右衛門)の新発見史料を第一の検討素材として、両替金融がいかにして近代金融へと移行していったのかを具体的に描き出すことを目指している。 研究初年度(平成28年度)は、新出の「廣岡家文書」の目録作成と撮影を主たる作業課題とし、年度後期よりは研究分担者、連携研究者によって史料の分析を開始するということを計画として掲げていたが、目録については、古文書約8,750点、古写真約3,500点の全てを採り終えた。写真の撮影も順調に進み、平成28年度末の時点で約7割の古文書について、写真撮影が完了し、また古写真については全ての電子化を完遂した。画像データは研究メンバーで共有済みである。 また、計画当初では予想していなかったが、廣岡家の分家(加島屋五兵衛)に当たる家から、新史料(古文書約450点、古写真約8,750点)の発見があり、これらも受け入れて同様に目録と電子化を進め、目録採りと古写真の電子化を完遂した。 上記の成果を踏まえ、年度後半よりは、研究代表者を中心に史料の解析も進んだ。平成29年度内の史料解題刊行に向けて、現在は、廣岡家の系図復元を中心に作業を進めている。研究会についても合計5回開催し、内2回は研究メンバー外のゲストを迎えて、大名金融について理解を深めるための研究報告を依頼し、活発な議論が行われた。 平成29年度は、上記の成果を踏まえて、各メンバーによる個別研究を本格的に進める予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
研究初年度(平成28年度)は、新出の「廣岡家文書」の目録作成と撮影を主たる作業課題とし、年度後期よりは研究分担者、連携研究者によって史料の分析を開始するということを計画として掲げていたが、その進捗は極めて良好であった。 目録作成は年度末までに完遂し、史料の撮影も大部分を完了した。これは本来2年間で完遂する計画であったが、大幅な前倒しができ、直ちに研究に取りかかる体制ができあがった。また予想外な形で発見された廣岡家の分家(加島屋五兵衛)の史料についても、目録採りと古写真の電子化を完遂した。 これらの目録データ、古文書・古写真の電子データは、既に研究メンバー間で共有され、分析が進められており、平成29年度内の史料解題執筆に向けて順調なスタートを切ったものと評価できる。
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Strategy for Future Research Activity |
平成29年度の作業計画は大きく3つに分けられる。第一に、史料撮影の継続である。必ずしも研究に直結しない史料は除くとしても、まだ2,000点近い未撮影史料があるため、研究員またはアルバイトを雇用して、史料撮影を進める計画である。 第二に、史料解題の執筆である。今回新たに発見された「廣岡家文書」、ならびに分家の「廣岡五兵衛家文書」の概要や、廣岡家の系図、簡単な経営史をまとめた解説論文を、平成29年度内に『三井文庫論叢』へ寄稿する予定である。廣岡家については、まとまった研究文献がなく、この解題が今後の参照基準となるため、正確性を期して作業を進める予定である。 第三に、個別研究である。既に平成28年度より研究メンバーの分析は進められているが、これをいよいよ本格化させ、平成30年度中に、その研究成果を学術雑誌に投稿できるよう、分析を進める予定である。この進捗を確認し、情報共有を行うためにも、平成29年度も最低3回は研究会を開催する予定である。
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