2016 Fiscal Year Annual Research Report
人口減少・都市縮小時代の都市中心部の老朽化商業施設等の再利用・再開発に関する研究
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16H03674
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Research Institution | Senshu University |
Principal Investigator |
渡辺 達朗 専修大学, 商学部, 教授 (20242448)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
濱 満久 名古屋学院大学, 商学部, 准教授 (10440653)
石原 武政 流通科学大学, 商学部, 特別教授 (20047301)
石淵 順也 関西学院大学, 商学部, 教授 (20309884)
角谷 嘉則 桃山学院大学, 経済学部, 准教授 (20519582)
高室 裕史 流通科学大学, 商学部, 教授 (30368592)
渡邉 孝一郎 九州産業大学, 商学部, 講師 (60616671)
松田 温郎 山口大学, 経済学部, 准教授 (60632693)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 老朽化した商業施設 / 耐火建築 / 防火建築帯 / まちづくり / 商店街振興 / リノベーション / 再開発 / 流通政策論 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、人口減少・少子高齢化・都市縮小が急速に進む中で、多くの都市中心部に存在する「老朽化した商業施設等」の実態を把握し、今後のまちづくり・商店街振興における再利用・再開発の方向、および商業論・流通政策論の観点からの理論的示唆について検討することを目的としている。 今年度はまず、主要な研究対象である1950~60年代に都市不燃化のために耐火建築促進法等に基づいて耐火建築・防火建築帯として建設された建築物・建築帯、アーケード等が、①全国にどのように分布しているか、②それらがどのような目的・経緯で建築されたのか、③現状でどのように利用されており、まちづくり・商店街振興の妨げになっているのかどうか、④今後の再利用・再開発の計画・方向はどのようになっているか、について全般的な実態把握と、典型事例に関するケーススタディを行った。 具体的には、8月に国の行政サイドで当時の法整備に関係した研究者等を招いて研究会を開催し、11月には都市計画系の研究者として本テーマに取り組んでいる研究者(大学教員)を招いての研究会と、この研究者が調査・保存等に関わっている横浜関内・関外地区のフィールドワークを行った。さらに、2月には典型事例として静岡県の沼津、熱海、富士、静岡を順に訪問し、それぞれの地域における施設の利用実態とリノベーション等による再利用や取り壊しての再開発などの計画ないし方向についてヒヤリイングとフィールドワークを実施した。研究会や現地調査には、本研究チームの大半が参加したが、日程上参加できなかった研究者に対しては事後的に情報共有した。 初年度の最後に、以上の活動によって把握できた本テーマをめぐる全体的状況および典型事例の内容について研究者間で意見交換し意義を確認するとともに、次年度の研究方向について検討した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
初年度の研究実施計画として以下の4点を掲げた。それぞれについて進捗状況を確認する。 (1)商業施設等の老朽化問題を把握するための基礎データの収集と整備:商業論・流通政策論の分野では研究蓄積がほとんどないため、都市計画・建築系を中心に幅広く先行研究のレビューを行い、問題把握とデータの所在確認を行った。また、耐火建築や防火建築帯の整備について知見のある行政担当者、この分野で研究蓄積がある研究者を招いて研究会を開催することで、私たち研究チームの問題把握を修正・深化するとともに、全国に分散的に存在する該当施設についておおよそ把握することができた。 (2)実態調査のための調査分析枠組みの検討:上記の先行研究レビューと研究会、横浜でのフィールドワークとその後の研究チームでの討論を通じて、現地調査のための調査分析枠組をある程度固めることができた。ただし、当初計画ではGIS(地理情報システム)を活用した定量分析、あるいは質問票による定量調査を計画していたが、対象とする建物の取り壊し等が進展しており、GISでの分析が困難である一方、質問票調査も調査対象としての建物管理者の把握が困難なことがわかってきた。そのため、定量調査の可能性は今後も追及するものの、事例調査の厚みを増すことで研究の進展が図れないかを検討している。 (3)調査対象の選定と実態調査の開始:典型事例として静岡県の沼津、熱海、富士、静岡の関係者のヒヤリングとフィールワークを実施し、それぞれの建築目的・経緯、現在の利用実態、今後の計画・方向等について把握することができた。 (4)研究会の開催:行政担当者、研究者、地元関係者を招いての研究会を開催するとともに、その都度、研究チームによる討議の場を設けることによって、進捗状況や今後の方向等について情報共有、討議したことで、共同研究は円滑に推移している。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の推進方策として以下を予定している。 (1)代表事例・先端事例を対象とするケーススタディ:中心的な課題は「商業施設等の老朽問題」として実際にどのような問題が生じ、まちづくりや商店街振興のさまたげになっているのか(なっていないのか)を確認し、それに対して「どのような対応がとられているのか」、「その背景や成果はどのうよな状況か」を明らかにすることにおかれる。また「今後の計画・方向」についても、リノベーション等の再利用、取り壊しによる再開発など、いくつかの類型に応じて整理していくことにする。これまでの研究で、すでに研究チーム内の地域別、領域別の分担が明確になっているので、それにしたがって効率的かつ効果的に調査を進めることができる。 (2)定量的調査の可能性とケーススタディの補強の検討:GISや質問票によって定量的調査を行うことで全体像を明らかにすることを選択肢の1つとしていたが、現状で難しいことが明らかになってきたので、一方でその可能性を追求しつつも、事例研究の厚みをますことで全体像を把握することが可能かを検討し、先行研究や資料の収集および調査対象先の選定を進める。これによって、定量調査を実施しない場合であっても、本研究課題に関する全国的な問題状況の把握が可能なようにしていく。 (3)研究会、フィールドワークの開催および研究成果の公表:理論的な肉付けの豊富化とケーススタディ実施のために研究会、フィールドワークを年2~3回程度実施する。また初年度の成果を踏まえ、研究の進捗状況を整理して、学会報告や論文・研究ノート等のとりまとめを推進し、2年度目、3年度目で研究成果を公表できるようにする。
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