2016 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
16H03679
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
國部 克彦 神戸大学, 経営学研究科, 教授 (70225407)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
澤邉 紀生 京都大学, 経営管理大学院, 教授 (80278481)
松嶋 登 神戸大学, 経営学研究科, 教授 (10347263)
宮地 晃輔 長崎県立大学, 経営学部, 教授 (60332011)
柊 紫乃 山形大学, 大学院理工学研究科, 准教授 (10609952)
東田 明 名城大学, 経営学部, 教授 (50434866)
矢寺 顕行 大阪産業大学, 経営学部, 准教授 (20582521)
北田 皓嗣 法政大学, 経営学部, 准教授 (90633595)
上西 聡子 (ホームズ聡子) 九州産業大学, 経営学部, 准教授 (70632842)
吉川 晃史 熊本学園大学, 会計専門職研究科, 准教授 (20612930)
天王寺谷 達将 広島経済大学, 経済学部, 准教授 (60709773)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 会計 / 計算 / 実践 / 組織 / 感情 / 制度ロジック / 多元的な価値領域の混合 / 物質性 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成28 年度は、計算実践を解明するための理論的枠組を、①アクターネットワーク理論(ANT)、②実践理論、③制度派組織論に分けて研究を行った。 ①ANTについては、國部をリーダーとして、東田、北田、天王寺谷が担当した。ANTの理論に関して、計算の社会学派と会計学派の理論的交渉という理論的フレームワークを構築し、環境管理会計手法であるマテリアルフローコスト会計(MFCA)を題材にして、ANTの観点から分析を行った。その結果、数値情報が銘刻として機能することや、特定のアクター間のネットワークによってMFCA実践が支えられていることが明らかにされた。また、MFCAがイノベーションを駆動するメカニズムについても研究を行った。 ②実践理論については、澤邉をリーダーとして、宮地、吉川、柊が担当した。実践理論としてSchatzkiの理論が会計実践にどのように応用できるのかを中心に研究を進めた。金融機関の企業再生支援活動を事例として、合理性だけでなく、目的感情構造が実践に大きな影響を及ぼしていることを明らかにした。金融のような経済合理性が貫徹していると思われてきた領域における感情の側面を浮き彫りにしたことは意義がある。 ③制度派組織論については、松嶋をリーダーとして、上西、矢寺が担当した。近年注目される制度ロジック概念について、多元的な価値領域の混合として算出される実践を分析するための方法論的基盤を見直し、特に近代において、価値合理性から切り離された手続き合理性が、新たな価値となっている点に計算実践のユニークさがあることを識別した。また、理論研究と合わせて、製造業における計測装置が取引関係を再構築していく力や、コンピュータのアルゴリズムとして組み込まれた金融理論が帯びた遂行性に関する事例研究を行った。 上記の成果を『計算と経営実践』(有斐閣)として2017年2月に出版した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度の研究目的は、アクターネットワーク理論、実践理論、制度派組織論の3領域について理論研究を推進することであったが、それぞれの研究目的が達成され、年度末にそれらの成果をまとめた編書を出版できたという点で、当初の予定どおりの進捗であると考えられる。本研究成果は、計算と経営実践の融合にとどまらず、経営学と会計学の邂逅も射程に収めたもので、その学術的意義は大きいと考えられる。経済合理性を基礎とする主流派の経営学・会計学とは異なる制度を基礎とする経営学・会計学の方法論的基盤を構築することができた。 さらに、28年度の研究では理論研究にとどまらず、事例研究の一部にも着手することできたので、29年度の研究にも好影響を与えることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
平成29年度は、計算実践に関する28年度の理論研究の成果をベースとし、①金融業の計算実践、②企業経営の計算実践、③地球環境保護の計算実践の3分野の経験的研究を中心に進める。 ①金融業の計算実践については、計算不可能性を前提とし、意思決定を行なわなければならない企業再生における融資意思決定、ビジネス・エコシステムの生成・発展にむけた金融機関や会計専門家の役割を対象として、ケーススタディを中心としたフィールドリサーチによって深く掘り下げていくとともに、アーカイバルデータと質問票調査から得たデータも活用しトライアンギュレーションを行う。 ②企業経営の計算実践については、まず、昨年度に先行して着手した経験的調査を深めていく。具体的には、製造業の生産現場で使われる道具やツールに注目したフィールドリサーチや、さらには人事評価制度に見られる人的資源の計算基準の形成事例など、計算実践が作られていくプロセスを分析する経験的調査を引き続き行っていく。次に、計算実践を導く物質性ないし物的な人工物に関しては、より広く捉え、自然科学における観察技術の発展や、そうした技術的発展に裏付けられて論じられる科学技術イノベーションに関する経験的研究を行いたいと考えている。 ③地球環境保護の計算実践については、MFCA研究と環境関係の KPI研究の二本立てで進める。事例研究としては、企業事例のケーススタディだけでなく、質問票調査も併用する。日本の事例だけにとどまらず、イギリスやドイツなどの事例も含めて研究する。ロンドン大学のユナマン教授、ドレスデン工科大学のギュンター教授と協力し て、日英企業の統合報告書の比較研究や、日独企業の環境マネジメントシステムの比較研究も含め、幅広いコンテクストから研究する。
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Research Products
(28 results)