2017 Fiscal Year Annual Research Report
過疎地域の生活構造分析による人口減少に対応する地方社会モデルの再構築
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16H03695
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
高野 和良 九州大学, 人間環境学研究院, 教授 (20275431)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
山本 努 熊本大学, 大学院人文社会科学研究部(文), 教授 (60174801)
牧野 厚史 熊本大学, 大学院人文社会科学研究部(文), 教授 (10359268)
稲月 正 北九州市立大学, 基盤教育センター, 教授 (30223225)
加来 和典 下関市立大学, 経済学部, 准教授 (80214261)
山下 亜紀子 九州大学, 人間環境学研究院, 准教授 (40442438)
松本 貴文 下関市立大学, 経済学部, 准教授 (70611656)
益田 仁 中村学園大学, 教育学部, 講師 (20551360)
吉武 由彩 福岡県立大学, 人間社会学部, 講師 (70758276)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 過疎地域 / 生活構造 / 人口減少 / 少子高齢化 / 人口移動 / まちづくり / Uターン / 離島 |
Outline of Annual Research Achievements |
人口減少社会に対応する総合的な社会モデルの再構築を行うことが本研究の目的である。そのため、九州の山村・離島地域のなかで大幅な人口減少を経験してきた地域社会を対象として生活構造分析を実施し、住民の生活実態を動態的に把握し、自律的な地域社会の形成の可能性を探っている。 本研究の生活構造分析では、生活構造を時間アスペクト、空間アスペクト、社会関係アスペクト、経済アスペクトの4点から捉えている。これらを相互に交差させながら、地域社会の維持再生の要件である人口再生産基盤・家族安定基盤・生活ネットワーク・生活安定基盤の現状を、調査票を用いた社会調査と聞き取り調査をもとに分析してきた。 調査対象地域は鹿児島県大島郡伊仙町である。伊仙町は、離島であり、就業環境などは特段恵まれている地域ではないが、合計特殊出生率2.8前後を維持し、人口再生産力が高く、青壮年層のUターンなどの人口還流が持続している。つまり、空間アスペクト、経済アスペクトの観点からすれば不利な状況にあるにもかかわらず、社会関係アスペクト、あるいは人々の生活時間の構成である時間アスペクトが、そうした不利な条件を補完している可能性がある。実際には伊仙町全体としてみれば人口減少傾向にはあるのだが、社会関係アスペクトを軸に社会調査の準備を進め、2017年度に社会調査を実施した。調査の概要として、調査対象者は伊仙町在住の住民とし、住民基本台帳名簿からの無作為抽出を行った(2000名で総人口の3割程度)。また、郵送法で実施した。調査期間中にハガキ送付による回収依頼等を行ったが、低回収率に留まったため、原因を検討し、2018年度に追加調査実施の可能性を検討中である。現在、データ入力が完了し分析を進めている。 以上から得られた知見は研究班で共有し、2018年度には一部の成果を論文、学会報告などによって公表する予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2017年度は研究代表者(高野)と研究分担者による研究会を5回開催した。研究会では、2016年度から検討を進めてきた一ヶ所目の調査対象地域を鹿児島県大島郡伊仙町とすることを決定し、伊仙町で実施する社会調査の調査票の検討などを中心に行った。また、徳之島でフィリピン女性の結婚移民について調査研究を行っている科研研究班との共同研究会も11月に実施した(16K04073、研究代表者:野入直美)。双方の社会調査結果を共有することで、総合的な生活構造分析の実現可能性が確認されたように思う。 社会調査の調査票には、生活環境評価、生活圏、地域意識、家族に関する意識、別居家族との交流頻度、地域社会との交流状況、子育てに関する行動と意識、居住歴、Uターン等の状況、老後の生活不安、地域範囲の意識、生きがい、死に対する意識など多岐にわたる総合的な設問を登載した。また、これらを分析するために、属性要因に関する設問に関しては、別居家族との関係把握、地域集団への参加状況など、家族や地域社会の持つ影響力を評価できるよう丁寧に検討を行った。 実査は、2018年1~2月に実施した。調査対象者は伊仙町在住の住民(18歳以上)であり、伊仙町役場の協力も得て住民基本台帳名簿からの無作為抽出を行った2000名とした。また、郵送法で実施し、調査期間中にハガキ送付による回収依頼等を行ったが、低回収率(21.7%)に留まった。このため、原因を検討したうえで、2018年度に追加調査が実施できないか検討中である。現在、データ入力が完了し分析を進めている。 また、研究分担者は、伊仙町の母子保健担当者や乳幼児検診に参加した親に対して聞き取り調査を行い、子育て世代の状況把握を行った。 以上のことから、おおむね順調に進展していると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
2018年度は、まず、昨年度実施した鹿児島県大島郡伊仙町での社会調査結果について単純集計結果を確認しつつ、詳細な分析を研究班代表と研究分担者、研究協力者と共同して実施する。時間、空間、社会関係、経済の4アスペクトに注目しながら、アスペクト相互の関係なども視野に入れ、総合的な分析を行う予定である。 また、伊仙町で実施してきたUターン者、子育て世代などに対する聞き取り調査なども、逐語録が整理されたため、これらを読み込みつつ、社会調査の結果も加味しながら、社会関係が持つ効果などに注目しつつ、詳細な分析を行うこととしたい。なお、これらの知見なども共有するために、研究代表者、研究分担者、研究協力者間の連絡を十分行い、適宜研究会を開催する(4回程度)。 また、先述したように、昨年度に伊仙町で実施した社会調査が、低回収率に留まったため、追加調査の実施可能性についても検討を行いたい。まず、こうした低回収率につながった要因を、現地の役場職員、住民に確認し、調査票の見直しなども図った上で、一定の回収率が見込めるようであれば、追加調査を実施する。並行して、比較分析を行うために、非離島地域で2ヶ所目の調査対象地域を検討しつつある。 なお、調査分析の結果については、可能な範囲で学会報告、論文などで公表することとしたい。また、2018年度は最終年度にあたるため、研究成果の整理を行うとともに、調査対象地域(伊仙町)での公開報告会などの開催も検討している。
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Research Products
(21 results)
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[Book] 地域の持続可能性―下関からの発信―2017
Author(s)
難波利光,嶋田崇治,森祐司,高橋和幸,外枦保大介,吉津直樹,佐藤裕哉,山川俊和,岸本充弘,西田雅弘,天野かおり,秋山淳,Kristen Sullivan,松本貴文,吉武由彩,鈴木陽一,髙月鈴世,木村健二,高路善章,西田光一
Total Pages
341
Publisher
学文社
ISBN
4762027162
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