2016 Fiscal Year Annual Research Report
条件不利性を抱える人々に向けた「中間的労働市場」創出の可能性に関する国際比較
Project/Area Number |
16H03710
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Research Institution | Kanazawa University |
Principal Investigator |
武田 公子 金沢大学, 経済学経営学系, 教授 (80212025)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
横山 壽一 佛教大学, 社会福祉学部, 教授 (10200916)
森山 治 金沢大学, 経済学経営学系, 教授 (40322870)
奥田 睦子 金沢大学, 経済学経営学系, 准教授 (90320895)
杉橋 やよい 金沢大学, 経済学経営学系, 准教授 (60377009)
小澤 裕香 金沢大学, 経済学経営学系, 准教授 (00582032)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 生活困窮者自立支援 / 生活保護自立支援 / 中間就労 / 就労支援 |
Outline of Annual Research Achievements |
労働市場において不利な条件を抱える人々への就労支援では、税財源・社会保険財源を交えた雇用創出措置を通じて、地域の中小零細事業所や非営利団体の協力を得ての短時間労働ないしケア付き就労がしばしば活用されている。本研究は、このような各国における雇用のあり方を「中間的労働市場」として捉え、(1)社会的包摂・労働市場統合の両側面における施策の体系、(2)そこで雇用される人々の属性と構成、(3)中間的労働市場の創出の形態と担い手、(4)この労働市場をめぐる議論状況、を明らかにすることを目的としている。 本年度は、①研究会を計5回開催し、相互の知見・情報交流と「中間的労働市場」概念をめぐる議論を行い、②研究分担に基づき、ドイツ、フランス、デンマーク、韓国、スウェーデンにおける海外現地調査を行い、③国内では函館市の現地調査と、豊中市で実務を担われた方を迎えての公開研究会開催を行った。これらの調査研究活動を通じて、海外および国内における「中間的労働市場」に関する以下の論点が浮かび上がってきた。 第一に、労働市場への統合がただちには難しい人々に対する就労支援の方向性として、一般労働市場とは異なる労働市場を公的あるいは社会的企業を中心に形成する場合と、多様な就労形態の創出と同伴支援を通じて一般労働市場における就労に重点を置く場合の両者が観察されたことである。この二類型は未だ印象の域を出ないが、今後各国および国内各地での調査での知見を擦り合わせつつ、モデル化を進めていきたい。 第二に、障碍者福祉法制の枠組みで就労支援を受ける場合とその適用を受けない場合との、サービスの手厚さの違いがしばしば観察されたことである。特に自覚の困難な精神疾患ゆえに労働市場への参入に困難を抱える人々への支援のあり方に関し、障碍者法制と就労支援施策の境界の問題が今後の検討点のひとつとして明らかになった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2016年度当初の研究計画は以下の通りであった。①研究分担者のこれまでの調査研究実績を踏まえ、各国の中間的労働市場に関する知見を共有する。また、関連する文献資料の収集を進め、相互に情報を共有する。②各国における現地調査については、スウェーデン、フランス、ドイツ、韓国等に関する現地調査をそれぞれ実施する。③国内の地域調査については、パーソナルサポートサービス事業や生活困窮者自立支援等のモデルプロジェクト実施自治体を中心に、調査先の選定を行う。④定期的な研究会においては、上記の海外調査および国内調査の結果を相互に報告しあい、共通認識とするとともに問題の整理を行い、翌年度以降の計画管理を行う。また、関連分野の研究者や生活困窮者自立支援事業の実務家を招き、意見交換を行う。 これらの計画は概ね順調に遂行された。①研究会は計5回開催し、研究フィールドの異なる研究分担者が相互に報告しあい、情報共有を行った。②海外調査先は、年度当初予定の5カ国に加え、デンマークでの調査も実施できた。海外調査の一部は年度末に集中したため、現地調査の知見を研究会で共有することはまだできていないが、2017年度の早期に研究会を開催したいと考えている。③国内調査は、函館市、市川市、座間市で現地インタビューを実施した。モデルプロジェクトの実施自治体からの選定はまだなされていないが、④研究会において、豊中市および大阪府で実務に携わり、加賀市等との連携事業にも取り組む方をお招きし、各地の実施状況に関する豊富な知見を提供して頂いたことは、今後の調査先選定において大いに役立つこととなる。
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Strategy for Future Research Activity |
2017年度の研究活動も、基本的には当初計画に即して以下のように進めていく。①前年度同様の分担によって、各国における現地調査を行う。2017年度は中間的労働市場における雇用提供主体にもインタビュー対象を広げたい。②国内の地域調査については、2016年度に得た知見に加え、生活困窮者自立支援の全国的実施状況の情報収集を行いつつ、さらに現地調査対象を広げる。③定期的な研究会においては、上記の海外調査および国内調査の結果を相互に報告しあい、共通認識とするとともに問題の整理を行い、翌年度以降の計画管理を行う。④当該テーマに関わる研究者および生活困窮者自立支援法の実施に関わる実務者を招聘し、研究会を開催する。 なお、研究分担者のうち2名が産休・育休を取得するため、新たに二名の研究分担者を追加する。それに伴い、海外調査の対象に変更が生ずる可能性があるが、分担者の関心やフィールドとの擦り合わせを行いつつ、調査先を定めていきたい。いずれも金沢大学に活動の場をもつ研究者であり、日常的な情報交換は容易である。 また、2015年度末、2016年度末にそれぞれ1名ずつ他大学に転出しているが、頻繁に金沢に来られることから、研究会への参加は可能であり、それぞれ分担に即して調査研究活動を遂行することも可能であるため、基本的には研究推進方策に大きな変更はない。
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Research Products
(15 results)