2016 Fiscal Year Annual Research Report
厚生行政のオーラルヒストリー-終戦後の制度再建から介護保険の創設まで
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16H03718
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Research Institution | Rikkyo University |
Principal Investigator |
菅沼 隆 立教大学, 経済学部, 教授 (00226416)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
百瀬 優 流通経済大学, 経済学部, 准教授 (00386541)
森田 慎二郎 東北文化学園大学, 医療福祉学部, 教授 (00405937)
中尾 友紀 愛知県立大学, 教育福祉学部, 准教授 (00410481)
中嶌 洋 高知県立大学, 社会福祉学部, 准教授 (00531857)
土田 武史 早稲田大学, 商学学術院, 名誉教授 (10172024)
山田 篤裕 慶應義塾大学, 経済学部(三田), 教授 (10348857)
田中 聡一郎 関東学院大学, 経済学部, 講師 (40512570)
深田 耕一郎 女子栄養大学, 栄養学部, 専任講師 (40709474)
浅井 亜希 立教大学, 社会情報教育研究センター, 教育研究コーディネーター (40709573)
岩永 理恵 日本女子大学, 人間社会学部, 准教授 (60438166)
新田 秀樹 中央大学, 法学部, 教授 (70303576)
松本 由美 大分大学, 福祉健康科学部, 講師 (90627689)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 国民皆保険・皆年金 / 介護保険 / 政策形成過程 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、オーラルヒストリー研究の手法を用いて、厚生行政に深く関与した官僚に聞き取りを行い、戦後の厚生行政の形成過程に関する証言を後世に残すことが研究目的である。その取り組みにより、戦後の厚生行政の証言アーカイブズを生み出すような研究とすることを目標にする。 平成28年度は、元厚生労働事務次官、元環境事務次官、元社会保険庁長官を含む厚生官僚5名、社会福祉研究者1名、計6名の聞き取りを行い、うち3冊のオーラルヒストリー報告書を作成した。前回プロジェクト(国民皆保険・皆年金の「形成・展開・変容」のオーラルヒストリー)から継続して聞き取りを実施した河幹夫氏のオーラルヒストリー報告書ではゴールドプランの策定や社会福祉基礎構造改革の立案の様子などの証言を得ることができた。近藤純五郎氏のオーラルヒストリー報告書では、1990年代以降の年金・医療保険の歩みについて聞き取りを行うことができた。また長尾立子氏のオーラルヒストリー報告書では主に1960年代から1980年代の児童福祉の歩み、年金改正の様子などについても証言をえることができた。 以上の本年度の成果を報告書として、各分担研究者の大学図書館にも搬入しており、今後国立国会図書館に納本する予定である。また、戦後の社会保障に関するオーラルヒストリーの書籍の出版を目指しており2回の編集・研究会議を開催した。今後は報告書公刊ばかりでなく、オーラルヒストリー証言に基づく学術論文や書籍公刊などを通じて、研究成果を広く公開する予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
交付申請書では、「1年目は年金部会、医療部会、福祉部会でのオーラルヒストリーの聞き取りを中心に行う」と目標を設定した。研究実績の概要でまとめたように、それぞれの部会での聞き取り成果(福祉・年金部会では河幹夫氏、福祉・年金部会では長尾立子氏、医療・年金部会では近藤純五郎氏のオーラルヒストリー報告書の公刊。そのほかに厚生官僚2名の聞き取り、社会福祉学研究者1名のインタビューの実施)をあげており、概ね目標を達成したと考えられる。 また史資料部会では、早稲田大学教授だった佐口卓氏の社会保険の書籍・史資料を中心とした文庫および労働科学研究所研究員だった藤本武氏の最低生活費の書籍・史資料を中心とした文庫の整理を引き続き実施した。 さらには、現在、戦後の社会保障に関するオーラルヒストリーの出版企画を進めており、出版社にも内諾を得ている。研究班では、すでに原稿執筆を始めており、1950年代~60年代の国民皆保険・皆年金の形成期や1973年の福祉元年、1980年代の老人保健法、健康保険法改正、1985年年金改正などについて、社会保障制度史における通説的な理解とオーラルヒストリーの証言の関係などについて検討を行っている(第1回編集・研究会議を2016年8月2日に実施した。第2回編集・研究会議を2017年2月21日に実施した)。本研究プロジェクトの期間内には書籍の公刊を行い、その研究成果を公開する予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究は、申請時には「2年目はオーラルヒストリー報告書の随時の公表と史資料と付き合わせた総合的検証に取り組み、3年目は戦後の厚生行政の歩みについてのオーラルヒストリー書籍の公刊を目指す」としていた。先述のとおり、研究班は書籍化にむけて、原稿執筆を進めており、当初の目標よりも順調に研究プロジェクトが進んでいると考えられる。実際、徐々に原稿も集まってきており、現在、編著者を中心に編集作業を行っている。書籍については、できれば平成29年度内の公刊を目指したい。また本研究の研究成果を広く伝えるため、社会保障の専門誌においても連載が予定されており、研究班の新たな取り組みとして実施する。 平成29年度も、新たなオーラルヒストリーの聞き取り作業および報告書の編集を引き続き実施する。社会福祉基礎構造改革を構想し立案した厚生官僚のオーラルヒストリー報告書、生活保護制度改革において学識者として関わった社会福祉学の研究者のオーラルヒストリー報告書、介護保険の実施過程において活躍した厚生官僚のオーラルヒストリー報告書の編集を行っており、平成29年度前半に公刊することができると考えられる。 また聞き取りについても、1984年の健康保険法改正および介護保険の立案に携わった厚生官僚の聞き取りが内定しており、厚生行政に関する新たな証言を得られるように努めたい。オーラルヒストリーの証言と史資料の往復を通じて、戦後の厚生行政の歩みを描き出す歴史研究としたい。
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Research Products
(3 results)