2018 Fiscal Year Annual Research Report
異文化対応能力育成教育と外国人児童の就学促進―先進諸国の多文化的教室の現場から―
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16H03787
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Research Institution | Tokyo Future University |
Principal Investigator |
所澤 潤 東京未来大学, こども心理学部, 教授 (00235722)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
三輪 千明 広島大学, 国際協力研究科, 准教授 (00345852)
プラナスナバロ イネス 帝京大学, 外国語学部, 講師 (00742066)
小池 亜子 (田中亜子) 国士舘大学, 政経学部, 准教授 (10439276)
古屋 健 立正大学, 心理学部, 教授 (20173552)
小川 早百合 聖心女子大学, 文学部, 教授 (20276653)
江原 裕美 帝京大学, 外国語学部, 教授 (40232970)
近藤 孝弘 早稲田大学, 教育・総合科学学術院, 教授 (40242234)
澤野 由紀子 聖心女子大学, 文学部, 教授 (40280515)
川口 直巳 愛知教育大学, 教育学部, 准教授 (60509149)
林 恵 帝京短期大学, 帝京短期大学, 教授 (60759380)
志賀 幹郎 電気通信大学, 国際教育センター, 准教授 (70272747)
日暮 トモ子 目白大学, 人間学部, 准教授 (70564904)
Yoffe Leonid.G 早稲田大学, 商学学術院, 准教授 (80434265)
神部 秀一 東京未来大学, こども心理学部, 教授 (80750885)
入澤 充 国士舘大学, 法学部, 教授 (90307661)
猪股 剛 帝塚山学院大学, 人間科学部, 准教授 (90361386)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 多文化共生 / 異文化対応能力 / 義務教育 / 日本語教育 / 移民 / 台湾 / カリキュラム / NIE |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、以下の通り、研究活動を行った。 1)国内調査は、①法令及び就学督励に関する調査では、群馬県、愛知県、及び静岡県を中心に進め、横断的視点を得る準備を進めてきた。3県の教育行政は、外国籍児童生徒の就学、学習指導、及び日本人児童生徒の異文化対応能力向上に積極的に取り組んでいる。静岡県浜松市が行っている不就学者ゼロ作戦について、論文作成を進めた。②受入側の実態を探るために東京都立の定時制高等学校の訪問調査を行い、外国籍児童生徒に進学に、定時制高等学校が受け皿となっている実態、及び生徒がどのように受入れているか、日本語の取り出し指導で、英語中国語等を駆使した生徒指導がどのように実施されているかの現状の一端を把握した。③小学校日本語教室の活性化を構想し、群馬県及び愛知県の公立小学校の日本語教室で、NIEの授業を試行し、授業開発に取り組んだ。④担当教員の受け入れ能力を向上させる試みとして、大学の教職科目教育方法実践学の講義で、中国語未修の教員志望学生に、同日付の台湾の新聞と日本の新聞の切り抜き新聞を試みた。⑤ネパール人日本留学生(学部)の日本における異文化体験の具体例を調査した。 2)海外調査は、法令と就学督促に関する側面、教育内容に関する側面、移民難民を含む外国籍児童生徒の教育を探った。①台湾の「新住民子女」教育について台北市及び新北市で現地調査を行い、幼児教育施設の訪問調査を行うとともに、幼児教育施設及び学校教育での言語の扱いをどのようにしているかも調査した。②台北日本人学校で学校授業の国際化をはかる実験授業として、2017年度9月に中学部の社会科で実施したNIE授業の実践報告を作成し、大学紀要に発表した。③フランスにおける多文化共生状況を調査した。④タイ日本人学校で、多文化共生をどのように実現しているか状況を調査した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
多文化的教室ということでは、伊勢崎市の公立小学校の協力を得て、日本語学級で従来になかったNIEの授業を継続実施しており、カリキュラム化を目指している。また、それと並行して、大学の教員養成課程で、同日付の台湾と日本の新聞を併せ用いた「切り抜き新聞」実践を試行し、教員養成における多文化共生能力育成を試みた。これらは国際化状況を傍観的に追跡するものではなく、積極的にアクションリサーチを行うタイプの研究であり、外国籍児童生徒の教育の新機軸の提案であるともいえる。なお、東京都立定時制高等学校の1校を調査し、外国籍生徒の進学の受け皿になっている実態を調査したが、その際「取り出し授業」において英語・中国語を駆使する多文化的教室が、まさに本科研が探り出そうとしているかたちで、実践されている事を把握した。 海外のモデル的な事例の調査ということでは、これまでに、北欧、カナダ、オーストリア、台湾、フランス、マレーシア、及びタイの調査が進行した。また多言語・多民族社会である台湾が、新住民と呼ばれるフィリピン人・インドネシア人・ベトナム人を受け入れてどのような教育上の問題を経験し、教育課程等でどのように対応しているかを具体的レベルで探ることできた。また、台北日本人学校中学部で多文化的教室の実現の資料を得るために、国際的なNIEを実施した。また他国の調査についても準備が進行している。 以上のように本科研は研究課題に沿った内容が着々と進行している。
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Strategy for Future Research Activity |
第4年度は、本科研のこれまでの調査のうち進行中のものを継続するとともに、実績をまとめる方向で取り組む。 6月に日本比較教育学会でラウンドテーブルを組み、多文化的教室に関わる北欧での様子、スペインでの様子、台湾での様子、日本での様子をとりまとめ、発表する。 本科研の研究誌『外国籍児童生徒の就学義務をめぐって』第4集、第5集を年度内に発行し、これまでに行ってきた日本国内の調査、ヨーロッパ、カナダ、東南アジア、台湾、及び日本国内での調査を収録する。本科研で企画してきた実践の一つである日本語教室でのNIE実践については、日本語教室で使用できるようなカリキュラムを作成することに挑む。 前科研での調査のある群馬県大泉町の外国籍児童の就学督励策、及び愛知教育大学の多文化共生に関わる教員育成のシステムについて、前科研以来の調査を行う。浜松など不就学ゼロを目指している市町村ではどのように制度を構築しているかの調査をさらに進行させる。 また、この科研調査の継続を念頭において、現在、日本国内でかなり大きな問題となってきた教員資格の問題を、これまで継続して行ってきたこの科研の一連の流れにどのように位置づけるかを明確にし、今後この科研を継続するための計画を立てる。
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