2017 Fiscal Year Annual Research Report
自国史を越えた歴史認識の共有をめざす日韓共通歴史教材の発展的研究
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16H03801
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Research Institution | J. F. Oberlin University |
Principal Investigator |
田中 暁龍 桜美林大学, 人文学系, 教授 (30511852)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
小林 知子 福岡教育大学, 教育学部, 教授 (10325433)
國分 麻里 筑波大学, 人間系, 准教授 (10566003)
鈴木 哲雄 北海道教育大学, 教育学部, 教授 (20374746)
山口 公一 追手門学院大学, 経済学部, 准教授 (20447585)
小瑶 史朗 弘前大学, 教育学部, 准教授 (50574331)
小松 伸之 清和大学, 法学部, 准教授 (80609777)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 日本史 / 韓国史 / 歴史教育 / 教科教育学 / 教材学 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成29年度は、まず平成29年5月13日(土)に研究代表者と研究協力者の数名で韓国を訪問して、日韓代表者会議を行った。そこでは、前年度の研究成果と課題を踏まえて、本研究の平成29~31年度の全体計画と平成29年度内の活動計画の確認を行い、前年度における課題とされた、教材作成上の共通認識の形成のための討議を行った。特に、第1章「文化にふれる」及び第3章「歴史問題を考える」の教材案についての認識の相違や構成について重点的に検討を行った。そして、日韓共通歴史教材案の原稿送付と翻訳、編集、そして印刷と教材集の送付の流れや、教材案作成上の課題については時間をかけて検討した。代表者会議の後、5月14日(日)には新教材として取り上げる予定の湾岸都市「群山」に遺る、植民地期の日本の建造物等を訪れ、資料の収集に当たった。今日に至っても解体されずに遺る日本の建造物の実態とともに、日本の植民地政策の一端を大いに学ぶ機会となった。 平成29年度は、4月・6月・9月・12月、の4回の国内研究会において教材案を検討するとともに、韓国側研究者との第8回日韓国際シンポジウムを開催し、その都度、日韓共通歴史教材集(日本語版・韓国語版)の冊子を製本して読み合わせ討論を行った。その活動内容は次の通りである。 第8回日韓国際シンポジウム(平成30年1月6・7日、釜山・釜慶大学校)は、時代別も含めて全体会をもって討議が行われ、新しい教材案を中心に検討を行った。その際、全体の章立てを含めた構成についての確認を行うとともに、教材案そのものの統廃合が検討され、再構成案について合意形成がなされた。なお、教材案の構成(「タイトル→リード文→問い→資料」)や資料にかかわる問いの質(「事実確認の発問」「因果関係や影響など関係を考える発問」「価値判断を含んだ発問」等)、教材解説の構成等については、今後の課題とされた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
日本側は研究代表者と6名の研究分担者(平成29年度は1名が海外研修のため6名の研究分担者で実施)、15名程の研究協力者、韓国側は8名の研究協力者とがそれぞれ国内研究会を定期的に継続開催する一方、平成30年1月6・7日に釜山の釜慶大学校で、第8回日韓国際シンポジウムを開催することができた。シンポジウム開催にあたっては、日韓両国で教材案を提示し合い、その教材案をもとに、シンポジウム開催にあたって、日韓共通歴史教材集(日本版・韓国版)を編集・製本して成果を共有し、かつ進捗状況を確認した。 日韓共通歴史教材集は、まだ検討途中ではあるが、第1章「文化にふれる」、第2章「時代別テーマ(前近代・近現代)」、第3章「歴史問題を考える」、第4章「日本と韓国を歩く」、の4章構成をとり、日本と韓国の類似性・差違性を衣食住などの文化からとらえさせたり、日韓間の現代的な課題をとりあげたり、通史的な視野から主題的なテーマを設定したり、日韓の地域の視点から歴史をとらえるなど、特色ある教材を作成しつつある。 なお、現在検討している教材案を最終年度に刊行することと出版社も決まり、さらに日韓同時出版の計画も進みつつある。
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Strategy for Future Research Activity |
平成28年度の研究課題を継承・発展すべく研究活動を進めてきたが、これまでの日本と韓国双方で進めてきた教材作成に関して、教材作成の方向性や教材全体の構成、書式などの点で、日本と韓国双方の考え方の相違点が顕著になりつつあった。このため、平成29年度にはそうした相違点の課題を解決すべく、日本と韓国のそれぞれ研究代表者が集まって研究代表者会議を開催し、課題に対する両国の認識の調整を行った。 平成30年度においても、こうした日韓の教材案の認識について摺り合わせ作業が必要であり、随時、教材作成とともに並行して行っていくことが大切である。そして、すでに作成された教材や新規に作成された教材について、実際の教育現場における検証の作業も、さらに必要とされている。この点で、日本と韓国の高校教員による検証の作業と共有化をさらに促進していくことが大切となる。 また、科研の最終段階として日韓共通歴史教材の刊行を目標としていることもあり、すでに発刊を行う出版社が決定したが、発刊にともなう目標設定の調整作業を、日本と韓国双方で並行しながら進めていく必要がある。韓国側も韓国版の同時刊行を目指す意向を示したが、この点でも摺り合わせが必要となる。 平成30年度も、数回にわたって国内研究会を行い、絶えず教材案の修正を行っていき、年度末の平成31年1月には、第9回の日韓国際シンポジウムを沖縄・那覇で開催する予定である。このシンポジウムに向けて、引き続き時代別・テーマ別の検討会を開き、修正原稿と新規原稿の検討を進めていく。なお、平成31年度に日韓共通歴史教材の刊行を行う計画をしていることから、平成30年度には、ほぼ教材案の全体構成と内容の検討を終える計画である。
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