2019 Fiscal Year Annual Research Report
戦後における重度重複障害児教育実践の創成に関する歴史研究とアーカイブ化
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16H03811
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Research Institution | Nara University of Education |
Principal Investigator |
越野 和之 奈良教育大学, 学校教育講座, 教授 (90252824)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
玉村 公二彦 京都女子大学, 発達教育学部, 教授 (00207234)
中村 隆一 立命館大学, 人間科学研究科, 教授 (00469165)
河合 隆平 首都大学東京, 人文科学研究科, 准教授 (40422654)
山崎 由可里 和歌山大学, 教育学部, 教授 (60322210)
中村 尚子 立正大学, 社会福祉学部, 特任准教授 (70386514)
荒川 智 茨城大学, 教育学部, 教授 (80201903)
松島 明日香 滋賀大学, 教育学部, 講師 (50710315)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 希望者全員就学 / 不就学児 / 肢体不自由特殊学級 / 重症心身障害児 / 障害児教育権保障運動 / 『夜明け前の子どもたち』 / 『われら人間家族』 / 『一次元の子どもたち』 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、地域(東京)に焦点化して養護学校教育が成立する社会的な土台の形成に着目し、1)重度重複障害児への教育要求・課題を「養護学校」として制度化するエネルギーの生成と組織化、2)障害児教育実践・運動のメディアとしての障害児教育・福祉の映像記録の活用という二つの視点から総括的な議論を行い、歴史叙述に反映させる作業を行った。 東京都の希望者全員就学(1974)は養護学校義務制実現を射程にした、障害児の教育権保障における重要な自治体施策であった。重複障害児問題と交差する肢体不自由児にとっても教育の場がきわめて限られるなか、広域を通学圏とする都立学校ではなく、区市の「特殊学級」開設をめざす運動の特徴は、障害の重い子どもが入級するために軽度の障害を想定した「特殊学級」を見直す必要があったこと、親が主体となって不就学の実態を明らかにして肢体不自由学級の必要性を訴えていたことなどにあった。そして、こうした運動は、重度障害児の発達・権利侵害をとらえ返すことで権利保障の道を探り、運動の参加者自身が矛盾や葛藤と向き合いながら主体形成をはかっていく過程でもあった。 療育記録映画『夜明け前の子どもたち』(1968)は、障害児教育権保障運動に参加する人びとの教育認識を形成し、主体性を喚起するメディアとして活用された。同作品に至るまでに制作された『われら人間家族』(1966)等をはじめとする重度重複障害児の映像作品群を位置づけてみると、重症心身障害児の発達が特殊なものではなく、人間発達の共通する道筋にあること、発達的共感の関係のなかで、障害のある子どもたちも、主体として外界へ働きかけ、自らの発達を獲得していくという問題提起の萌芽が認められ、それらの映像が重度重複障害児の受容や発達をとらえるまなざしを共有するメディアとなり、本格的な記録映画や教育実践の前提をなしたことが明らかとなった。
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Research Progress Status |
令和元年度が最終年度であるため、記入しない。
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Strategy for Future Research Activity |
令和元年度が最終年度であるため、記入しない。
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