2016 Fiscal Year Annual Research Report
レーザープラズマ光源EUV顕微鏡の開発と広視野マルチスケール観察への応用
Project/Area Number |
16H03877
|
Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
豊田 光紀 東北大学, 多元物質科学研究所, 助教 (40375168)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
大東 琢治 分子科学研究所, 極端紫外光研究施設, 助教 (50375169)
|
Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
|
Keywords | 多層膜ミラー / 対物鏡 / 高倍率 / CCD検出器 |
Outline of Annual Research Achievements |
研究代表者は、独自に見出した多層膜ミラー結像系の設計解に基づき結像型EUV顕微鏡を開発し、波長13.5nmにおいて世界最高分解能30nmを実証した。一方で、研究は原理検証の段階で、提案光学系の高速性(短い露光時間)、マルチスケール性(広視野)、リアルタイム性の実証には至っていない。本研究では、提案光学系とレーザープラズマ光源を組み合わせ、実験室規模のEUV顕微鏡を開発する。さらに、マイクロ-ナノ階層構造を持つ高分子材料や生体を例に、試料を1-shot(10ナノ秒)露光し、直径200μmの広視野の一括マルチスケール観察を実現する。これにより、提案光学系の3つの利点を実証し、顕微鏡を学会・産業界で広く活用される実用システムとして位置づけることを目的にする。H28年度は、EUV顕微鏡システムを構成する要素技術の開発を行った。 ①解析的全幅探索法による結像光学系設計 これまでに見出した3面ミラー設計を拡張することで、実験室顕微鏡に必要なコンパクトな全長(1m)で、高倍率(x1500)と広視野(200μm)を両立する光学設計解を、解析的設計法により大域的に探索した。対物ミラーは、2面Schwarzschild対物鏡の後段に、凹面拡大鏡を付加した2段拡大系とした。28年度末には、解析的に得た複数の実用解の中から、設計解を決定した。さらに、多元研光器械工場と共同で精密ミラー基板の試作を開始した。 ②大面積CCD検出器の開発 マルチスケール観察用対物ミラーの広視野(直径200μm)を回折限界分解能(30nm)で一括観察するため、12000×4000 (50M)の画素数を持つ大面積CCD検出器を開発する。H28年度は、真空槽内に設置するチャージアンプ回路と、真空槽外に設置するクロック駆動、電荷読み出用の電子回路を設計・作製した。今後、電子回路のデバッグを行い、次年度のEUV露光実験に備える。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
EUV顕微鏡システム実現の鍵となる、高倍率対物ミラーとCCD検出器の開発が当初の予定通り順調に進展しているため。
|
Strategy for Future Research Activity |
H29年度は、引き続き要素技術の開発を進め、以下により顕微鏡システムの構築を完了させる。 ③多層膜対物ミラーの開発 H28年度に得た、光学設計に基づき、多層膜対物ミラーを開発する。開発は、曲面ミラー基板の研磨、多層膜の成膜、精密アライメント用ミラーホルダの開発、干渉計を用いた光軸調整、の4ステップが必要となる。曲面ミラー基板およびミラーホルダは、対物用と照明用ともに多元研工場で製作する。サブnmの形状精度が必要な対物ミラー用基板は、3セットを作製し選別し使用する。多層膜の成膜には、現有のマグネトロンスパッタ装置を用いる。周期長・反射率は、現有のX線回折計とレーザープラズマ光源軟X線反射率計(自作)により評価し、膜構造の最適化を図る。作製した多層膜ミラーと精密ホルダを組合せ構成した対物ミラーは、100pmの絶対精度を持つ点回折干渉計(自作)を用いて光軸調整を行う。計測波面からミラーのミスアライメント予測し、ミラーホルダにフィードバックし精密調整を行い、波長13nmでの回折限界結像に求められる、波面収差W<1nm rms.を達成する。 ④EUV顕微鏡システムの構築 H28年度に設計・製作した、大面積CCDを立ち上げ、可視光によるテスト撮影とデバッグを行い、検出器を完成する。また、現有のLPP光源、試料ステージ、および、上記で開発した、対物ミラー、照明光学系、大面積CCD検出器を、新規作製の真空槽に組み込み、EUV顕微鏡システムを構成する。真空槽は、仕様が決まった部分から設計を開始し、年度中旬には、多元研・機械工場において作製を行う。顕微鏡システムの構築には、上述した構成要素に加えて、組み立に様々な治工具が必要となる。これまで開発した放射光顕微鏡システムでの経験を生かし、治工具も含めて設計・製作を行い、顕微鏡システムの構築を着実に進める。
|