2017 Fiscal Year Annual Research Report
圧力波フォーカシングを利用した高純度シリコンクラスタービーム生成技術の高度化
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16H03904
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Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
長谷川 純 東京工業大学, 科学技術創成研究院, 准教授 (90302984)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
岩田 康嗣 国立研究開発法人産業技術総合研究所, エレクトロニクス・製造領域, 招聘研究員 (80356534)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | クラスター / レーザーアブレーション / 衝撃波 / 飛行時間質量分析 / 分光計測 / 原子間力顕微鏡 |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度は、ヘリウムガス中で生成されたシリコンのアブレーションプラズマ中で生成されるクラスターのサイズ分布について、背景のヘリウムガスの圧力と、シリコン標的上でのレーザーのスポットサイズ(但し、フルエンスは同じに保つ)に対する依存性を調べた。TOF質量分析器がイオン化レーザーの不調のため使用できなかったため、急遽、原子間力顕微鏡(AFM)を用いたクラスターの観測に切り替えた。マイカの結晶上に堆積させたシリコンクラスターをAFMで観測し、表面の凹凸の分布から、シリコンクラスターのサイズ分布を推定した。ヘリウムガスの圧力を100Pa, 200Pa, 300Paと変えた場合について比較すると、100Paのときより、200Pa, 300Paの時の方が、クラスターの平均サイズは大きくなるものの、クラスター源の出口から取り出されるクラスターの量は圧倒的に多いことが分かった。300Paになると、平均サイズの上昇とともにサイズ分布の幅が増加した。この結果は、過去のレーザープラズマ蒸着の結果と大きく矛盾はしないが、100Paの時にクラスターがほとんど得られていないことは予想外の結果である。おそらく、クラスター生成キャビティーの出口を通ってクラスターが下流の検出部まで輸送される効率が、背景ガス圧に大きく影響されることが原因と考えられる。一方、レーザースポットサイズを変えた場合については、興味深い結果が得られた。レーザースポット径が約1mmと約3mmの時を比較すると、3mmの時の方がクラスターの平均サイズは小さく分布も狭いという結果が得られた。また、高速フレーミングカメラを使ってアブレーションプラズマの発光のプロファイルの時間変化を取得したところ、スポット径3mmの時の方がアブレーションプルームの進展速度もサイズも大きいことが分かった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度はイオン化用レーザーの不調によりTOF質量分析が行えないという問題が生じた。そこで、TOF計測に代わり、原子間力顕微鏡(AFM)を用いたクラスターの観測に急遽切り替えた。雲母基板上に蒸着されたシリコンクラスターの高さ分布からそのサイズ分布を様々な条件下で測定することができた。それ以外については、おおむね計画通りの進捗状況である。
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Strategy for Future Research Activity |
本課題で開発中のレーザーアブレーションを用いたクラスター生成装置は、最終的に加速器への入射を想定しているため、生成キャビティー下流で得られるクラスターのサイズ分布が重要である。キャビティーからの取り出し効率は単にクラスターサイズの関数であるだけでなく、クラスターがキャビティー内でいつどこで生成されたかにも依存すると予想される。このように最終的に下流で得られるクラスターのサイズ分布は複合的な要因で決定されるため、従来のレーザープラズマ蒸着等で得られたクラスター生成に関する技術をそのまま適用することは難しい。今後の研究の進め方としては、アブレーションプルームの進展方向と同じ方向にヘリウムガスジェットを噴出し、プルームとジェットの界面で、シリコン粒子の初期運動量を保ったまま凝集(クラスター生成)を起こすといった新しい手法の開発に取り組む予定である。
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