2019 Fiscal Year Annual Research Report
水界面の分子構造とダイナミクスの解明および生体膜界面研究への展開
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16H04095
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Research Institution | University of Toyama |
Principal Investigator |
石山 達也 富山大学, 学術研究部工学系, 准教授 (10421364)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 水界面 / 分子動力学シミュレーション / 振動和周波スペクトル / 水素結合 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は,水表面の振動和周波スペクトルに含まれる量子効果について,実験で新たな知見が得られたため,経路積分分子動力学シミュレーションにより実験のスペクトルを定性的に再現するとともに,その物理化学的に起源について明らかにした。空気/水界面では,水のOHは水素結合していないOH(Free OH)と水素結合したOH(H-bonded OH)が存在し,それぞれのOHは空気側あるいは水側を向いていることがヘテロダイン検出振動和周波発生分光法により報告されていた。最近,TianとShenらにより,比較的強く水素結合したOHが空気側を向く結果が報告され,それがOHよりも重水素化されたODの水素結合で顕著にみられることが実験的に報告された。これは,核の量子効果に起因していることが示唆されるため,その効果を取り入れることができる経路積分セントロイド分子動力学シミュレーションを行いスペクトルを計算したところ,実験スペクトルを再現した。もともと,比較的強く水素結合したOHが空気側を向く成分は,水表面で強く水素結合したdimer complexの存在により我々が過去に説明していたが,その後OHの振動領域にはそのような成分は存在しないことが別の実験で示唆されていた。今回,実験によりOH振動ではなくOD振動の領域で明確にその成分が現れることが観測され,我々は理論的にこの構造は核の量子効果の影響を受けることを明らかにした。具体的には,Hの質量はDと比較して小さいため量子効果が大きく水素結合が弱くなり,水dimerの酸素-酸素間距離が比較的大きくなるため,スペクトルに差が生じることが明らかになった。さらに,その傾向には温度依存性があり,低温ほど水素結合構造が強くなることも明らかになった。この事から,実験に先駆けて,低温領域で空気側を向くOHの振動スペクトル成分が大きくなることも明らかになった。
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Research Progress Status |
令和元年度が最終年度であるため、記入しない。
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Strategy for Future Research Activity |
令和元年度が最終年度であるため、記入しない。
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Research Products
(11 results)