2017 Fiscal Year Annual Research Report
Independent control of heat/charge transport using CNT/protein junctions and its application to thermally insulating thermoelectric generators
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16H04333
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Research Institution | Nara Institute of Science and Technology |
Principal Investigator |
中村 雅一 奈良先端科学技術大学院大学, 物質創成科学研究科, 教授 (80332568)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
山下 一郎 大阪大学, 工学研究科, 特任教授 (30379565)
小島 広孝 奈良先端科学技術大学院大学, 物質創成科学研究科, 助教 (70713634)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 熱電変換 / ハイブリッド材料 / カーボンナノチューブ / タンパク質 / 熱・キャリア輸送制御 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、代表者らが基本コンセプトを実証した、「半導体粒子内包かご状タンパク質分子(Dps)を接合部に有する超低熱伝導率カーボンナノチューブ(CNT)複合熱電材料」および「p/nドーピングされたCNT複合材料紡績糸による布状熱電変換素子作製法」を発展・統合させ、低温・低容量な熱源から非接触状態でも十分な内外温度差を得て発電する断熱性フレキシブル熱電変換素子を実現することを最終的な目的とする。 H29年度は、紡糸のための最終分散液中でのDps吸着量の制御法の確立とDps/CNT複合材料を紡糸するプロセス条件の確立を目指すとともに、Dpsの透過関数評価にも着手した。まず、昨年度最適化されたDps吸着CNTの精製法によって改めて様々なアプタマーのCNTへの吸着能を調べたところ、試した範囲で従来から用いてきたNHBP-1が最も汎用的に高い吸着能を示すという結果が得られた。そこで、NHBP-1を付与したDps(C-Dps)を用いて、CNTの分散方法、分散液中のCNT濃度、分散剤やバインダーポリマーの種類と濃度などを最適化した結果、これまで1 cm前後の細切れにしか紡糸できなかったところ、50 cm以上の十分な強度を有するC-Dps/CNT複合材料紡績糸が作製可能となった。一方、CNT原料の熱処理についても検討したが、ニートCNT膜や紡績糸では熱処理による熱電性能の向上効果が認められたものの、Dps複合体では効果が薄いことが判明した。最適化された紡糸プロセスでは熱処理を行わずとも不純物が取り除かれるためであると推測される。さらに、p型特性を示すDps/CNT複合材料紡績糸に対して、特定のポリマードーパントを含浸させることによるn型ドーピングが可能であり、CNT薄膜では不安定とされているドーパントでもDps/CNT複合材料紡績糸では比較的安定であることが見出された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成28年度後半にプロセスの根本的再検討によって計画変更が生じたが、新しい精製法の開発によりCNTへのDps吸着密度がこれまでより格段に高くなり、各種条件の最適化も含めて紡績に用いる分散液中での分散性も格段に高まった結果、当初難航すると予想された吸着量制御が一足飛びに容易になった。そのため、実験計画上のロスを短期間で取り戻すことができた。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度、研究レベルとしては十分な長さと強度を有するDps/CNT複合材料紡績糸の作製に成功したことから、紡績糸の熱電特性や力学特性の評価が容易になった。今後、紡績糸の状態での熱電特性を最適化するために、C-Dps吸着密度のさらなる最適化、C-Dpsコアの透過関数の評価と最適化、より高い性能を有するバインダーポリマーの選択、パワーファクターを最大化するドーピング条件などを調べる。分散液中あるいはそれを塗布乾燥させただけの薄膜中でのC-Dps吸着量と紡糸後に残存する吸着量に差があることが疑われることから、示差走査熱量計、透過型電子顕微鏡、顕微ラマン分光、紡績糸を再分解させての紫外可視分光などを組み合わせて、迅速かつ十分な定量性を持つ吸着量評価法を確立し、その後の実験の定量性を確保する。それを用いて吸着量と熱電特性との関係を明らかにしてゆく。昨年度、Dpsを電極ナノギャップにブリッジさせた単一分子素子の作製に成功したが、これまでのところ低温でのクーロンブロッケード特性が得られていない。Dpsが低温で変性することの影響が疑われることから、それを防ぐ方法や測定可能な温度範囲を調べ、透過関数の直接評価とそれによるコア材料の最適化を目指す。また、p型、n型ともにドーピングを最適化し、パワーファクター最大値を得る条件を見出す。昨年度までに立ち上げた3ω法による糸状試料の熱伝導率測定装置によって、C-Dps/CNT複合材料紡糸の熱伝導率やそのC-Dps吸着量依存性を系統的に調べるとともに、タンパク質分子接合が熱輸送に与える影響を分子動力学シミュレーションなどによって調べる。
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Research Products
(18 results)