2018 Fiscal Year Annual Research Report
重質油のスマート変換のための脱アルキル化プロセスの開発
Project/Area Number |
16H04568
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Research Institution | Tottori University |
Principal Investigator |
片田 直伸 鳥取大学, 工学研究科, 教授 (00243379)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
辻 悦司 鳥取大学, 工学研究科, 准教授 (80610443)
菅沼 学史 鳥取大学, 工学研究科, 講師 (90731753)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 触媒反応 / 重質油 / 固体酸触媒 / シリカモノレイヤー |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度は実油を用いて(1)塩基性物質の除去,(2)アルキル芳香族の脱アルキル化を検討した. (1)実油中のアルキル芳香族を脱アルキル化するためには,前処理として酸点を被毒する塩基性物質を除去する必要がある.これまでにアモルファスシリカアルミナを実油中に混合して塩基性物質を吸着して除去する方法を見出している.今年度吸着速度を求めて実用化するために重要な知見を得た.吸着速度次数は2次で表すことができ,吸着には吸着質及び溶媒のアモルファスシリカアルミナ粒子内での拡散律速が影響していると考えた.そこで吸着質及び溶媒のモデル物質を用いて比較した.異なる吸着質の吸着速度は塩基解離定数の影響がなく,分子サイズの影響が大きかった.異なる溶媒中での吸着速度も分子サイズの影響が大きかった.塩基性物質の吸着速度は吸着質及び溶媒の分子サイズが支配的であることが明らかになった. (2)実油中のアルキル多環芳香族の脱アルキル化では固体酸の細孔構造や酸性質が触媒活性に及ぼす影響を明らかにした.固体酸にはシリカモノレイヤー触媒,アモルファスシリカアルミナ,ゼオライト(USY,ZSM-5)を用いた.脱アルキル化は触媒の細孔構造の影響が大きく,特にメソ細孔以上の細孔径を有する場合に2環以上のアルキル多環芳香族の脱アルキル化の速度が大きかった.一方,副反応として進行する長鎖アルカンのクラッキングは細孔構造の影響よりも固体酸のブレンステッド酸強度が強いときに進行し,目的物質の長鎖アルカンが低分子化した.シリカモノレイヤー触媒ではアルキル多環芳香族の脱アルキル化の反応速度が大きく,長鎖アルカンのクラッキングはほぼ進行しないため,実油において脱アルキル化活性及び目的物選択率が高いということが明らかとなった.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
当初の計画では塩基性物質の除去における原理の確認,アルキル芳香族の脱アルキル化の反応解析を予定していた.研究実績の概要に記載したようにこれらの計画を終えて十分な成果を得ている.塩基性物質の除去では吸着速度を明らかにしたことで実用化に必要な知見が得られ,論文化に必要なデータと考察が揃った.脱アルキル化では蒸留ガスクロを用いた一般的な解析,2次元ガスクロ(GC×GC)と気体のGC測定を用いた詳細な分析法を確立し,アルキル多環芳香族の脱アルキル化と副反応のクラッキングの反応解析を行った.結果,我々が開発したシリカモノレイヤー触媒は工業的に利用されてきたアモルファスシリカアルミナやゼオライトを凌駕する高い目的物選択性を示すことがわかった.これは従来の接触分解や水素化分解よりも優れた実油変換プロセスとして実用的に大きな期待が持てる.また学術的にも論文化に必要なデータと考察が揃った.以上の通り当初の計画以上より進行しているのは明らかである.
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Strategy for Future Research Activity |
(1) 昨年度にVGOから実用性の高いアモルファスシリカアルミナを吸着剤として塩基性化合物を除去する過程の速度解析を完了した.今年度は各種実油を用いて検証する. (2)塩基成分除去後の各種VGOを反応物として脱アルキル化反応を行う.既に実油を用いた際の大きな課題となる触媒劣化の要因を明らかにしており,実油の成分に応じて劣化を避ける方法を提案している.今年度はこれを検証する. (3)モデル物質ではなく実油中のアルキル芳香族・アルカン・芳香族それぞれの定量法を確立したので,(1), (2)を組み合わせた生成物の解析を行い,実油に基づく検証データを得る.この過程ではシリカモノレイヤー触媒の優位性も再度評価する. (4)多環芳香族の単環芳香族への反応についても,原則として既知技術ではあるが,本研究目的に適合する条件での検証などを行う.
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Research Products
(10 results)