2019 Fiscal Year Annual Research Report
重質油のスマート変換のための脱アルキル化プロセスの開発
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16H04568
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Research Institution | Tottori University |
Principal Investigator |
片田 直伸 鳥取大学, 工学研究科, 教授 (00243379)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
辻 悦司 鳥取大学, 工学研究科, 准教授 (80610443)
菅沼 学史 鳥取大学, 工学研究科, 講師 (90731753)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 触媒反応 / 重質油 / 固体酸触媒 / シリカモノレイヤー / ゼオライト / モリブデン / 水素化触媒 |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度の計画の4項目について記す. (1) 原料油からの塩基性化合物除去:アモルファスシリカアルミナを吸着剤として,実油中の塩基性化合物を吸着除去する速度を支配する要因(複数)を明らかにし,その影響を定量化する速度式を確立した.これによってプロセス設計が可能となった. (2) 触媒劣化対策:シリカモノレイヤー触媒は実油の反応でも劣化が遅く,さらに反応温度を723 Kとすると高分子アルカンによる劣化を避けられることを実証した. (3) シリカモノレイヤー触媒の優位性,実用性:目的反応(アルキル多環芳香族の脱アルキル化)には細孔径,副反応(アルカン分解)にはブレンステッド酸強度の影響が大きいことがわかった.シリカモノレイヤーは活性・選択性が高く,かつ有用なアルキル単環芳香族は脱アルキル化しなかった.これらは大きな細孔と比較的弱いブレンステッド酸点のためであった.ゼオライトなどは副反応の活性が高く,これは小さな細孔内の強いブレンステッド酸点のためであった.シリカモノレイヤー上でも短いアルキル基を持つ多環芳香族は残ったが,後の極性分離工程に悪影響はない.シリカモノレイヤーの細孔特性は担体のアルミナを引き継いでおり,細孔直径<10 nmのアルミナを用いると活性・選択性が低下するが,それ以上では安定しており,製造しやすい触媒であることが示された.このように詳細にわたってシリカモノレイヤー触媒の優位性,実用性が示された. (4) 多環芳香族から単環芳香族への反応:アルミナ担持Mo種がナフタレンからテトラリンへ反応に高い活性を示し,MoO3モノレイヤーが活性種とわかった.担持量を制御したMo/*BEAゼオライトがテトラリンからベンゼン誘導体への反応を選択的に促進し,これは細孔が充分大きくブレンステッド酸点がMo近傍に存在するためとわかった.このように触媒の選定,製造に必要な情報を揃えた.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
(1)原料油からの塩基性化合物除去,(2)触媒劣化対策で予定通り実用化に資する情報を得たのに加え,(3)触媒の優位性,実用性については,計画ではこれらを実油の反応で検証する予定であったが,これにとどまらず,シリカモノレイヤーが有用なアルキル単環芳香族を変化させないこと,細孔直径>10 nmのアルミナを担体とするシリカモノレイヤー触媒の活性・選択性は高く,極めて似ていることがわかり,触媒製造を安定に行う展望が拓けた.また全体として,触媒に関する情報はほぼ得られた.さらに,(4)多環芳香族から単環芳香族への反応では,既知の触媒を用いて検証する予定であったが,ナフタレン部分水素化にはMoO3モノレイヤー,テトラリン開環には担持量を制御したMo/*BEAゼオライトという新しい触媒が見出されたばかりか,これらの高い活性が活性点の構造情報と結びつけられた.これらは今後の触媒製造に重要な情報を与え,また学術的にも構造と触媒作用の関係を明らかにした点で有意義と考えられる.
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Strategy for Future Research Activity |
基礎研究として必要なことはほとんど完了した.そこで最終年度には(1)~(4)を行う. (1)サウジアラビアの石油会社との連携を目指した成果発表など準備作業 (2)脱アルキル化触媒床出口からの脂肪族と芳香族の混合液体の分離に関する実証実験 (3)ナフタレンの部分核水添に対するMoO3モノレイヤー触媒,テトラリンの開環によるベンゼン誘導体の選択生成に対するMo/ゼオライト触媒の特性と活性・選択性の相関解析と最適化,実油による実証 (4)近年急速に需要が高まっている廃プラスチックの化学リサイクルに関し,ポリオレフィン及びポリスチレンの分解に本研究の知見を活用するための発展的な実験 これらを通じて,減圧軽油からベンゼン誘導体の製造経路を確立する.
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Research Products
(19 results)