2016 Fiscal Year Annual Research Report
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16H04761
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
舘林 和夫 東京大学, 医科学研究所, 准教授 (50272498)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 高浸透圧センシング / 膜タンパク質 / 相互作用 / シグナル伝達 / HOG MAPK経路 |
Outline of Annual Research Achievements |
細胞が物理化学的刺激である高浸透圧を感知する分子機構を明らかにするため、高浸透圧適応に働く酵母のHOG MAPキナーゼ経路において中心的な役割をもつセンサー膜タンパク質(Sho1)と膜アンカータンパク質(Opy2)に焦点を当てて解析を行った。Sho1は自身が有する4回膜貫通領域(TM1-4)でOpy2をはじめとするセンサー膜タンパク質群と相互作用し、高浸透圧応答に働くと考えられる。そこで高浸透圧刺激なしでHOG経路を恒常的に活性化するSho1の膜貫通領域変異体を新たに単離し(=Sho1-A/D)、膜貫通領域を介した相互作用の経路活性化における働きを調べた。Sho1-A/D変異はTM1と細胞質領域の境界部に変異を有しており、分子遺伝学的解析から、HOG経路の活性化に必要なSte11 MAPKKKによるPbs2 MAPKKのリン酸化・活性化のステップでシグナルを増強することがわかった。さらに、Sho1-A/D変異はSho1とOpy2との結合性を増強すること、Opy2のTM-細胞質領域の境界部の変異がSho1-A/Dによる結合性の増強を抑制するとともに、恒常的活性化も阻害することが明らかになった。Sho1はPbs2と、Opy2はSte50を介してSte11と結合することから、以上の結果より、HOG経路の活性化にはSho1-Pbs2、Opy2-Ste50-Ste11という2つの複合体の安定的な相互作用が重要であると考えられる。 上記に加えて、Sho1をはじめ既知の高浸透圧センサー膜タンパク質を全て欠失した酵母において、1M NaClなどの厳しい高浸透圧刺激下でHOG経路が活性化するという興味深い知見を得た。分子遺伝学的解析などから、既知のセンサー膜タンパク質に依存せずに、Pbs2 MAPKKがHog1 MAPKをリン酸化・活性化する新たな活性化機構が存在することが明らかになった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
高浸透圧センシングの分子機構を明らかにすることを目的にした本研究で、今年度は特にセンサー膜タンパク質(Sho1およびOpy2)間の膜貫通領域を介した相互作用の意義を、分子遺伝学、生化学的アプローチにより明らかにできた。また、膜タンパク質による高浸透圧センシングに加えて、細胞質キナーゼがこれらに依存せずに活性化する新しい高浸透圧感知機構の存在を見出したことは、全く予期せぬ発見であり、今後の高浸透圧センシング研究のブレイクスルーとなりうる。
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Strategy for Future Research Activity |
今回経路活性化に重要であることが明らかになったSho1とOpy2の膜貫通領域間の相互作用について、化学的クロスリンク法などの生化学的アプローチでその詳細な結合様式を明らかにするとともに、高浸透圧に応じた結合様式の変化や下流への活性化シグナル伝達機構を明らかにする。また、膜タンパク質によらないMAPキナーゼの高浸透圧感知機構を、活性型変異体単離などの分子遺伝学的解析、生化学や構造生物学的アプローチを駆使して明らかにする。
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Research Products
(3 results)