2016 Fiscal Year Annual Research Report
Threshold-setting for activation of cyclin B-Cdk1 at meiotic G2/M-phase transition in oocytes
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16H04783
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Research Institution | Ochanomizu University |
Principal Investigator |
岸本 健雄 お茶の水女子大学, サイエンス&エデュケーションセンター, 客員教授 (00124222)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
奥村 英一 東京工業大学, 生命理工学院, 助教 (00323808)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | シグナル伝達 / 卵細胞 / 細胞周期 / G2/M期移行 / cyclin B-Cdk1 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、ヒトデ卵を用いて、卵成熟誘起ホルモン(1-methyladenine, 1-MeAde)が卵表に作用して卵内でcyclin B-Cdk1(Cdk1)の活性化をもたらす際の、閾値設定の分子的背景を明らかにすることを目的としている。本年度は、以下の点が判明した。 1.1-MeAde刺激により、卵内ではGbg-PI3K-PIP3-Akt-Cdc25 & Myt1-Cdk1経路を介して、Cdk1は初期活性化に至る。刺激レベルが閾値以下の場合は1-MeAdeの効果はノイズとして抹消されるが、これは、閾値以下の1-MeAdeによっても低レベルにCdk1は活性化し、そのあとに働くnegative feedback(Cdk-NF)(Cdc25とMyt1のAktリン酸化部位が脱リン酸化され、Cdk1は不活性状態に戻る)によるとの手掛かりを得ている。今回、Cdk-NFは確かにCdk1活性に依存しており、この脱リン酸化の原因として、少なくともフォスファターゼの活性化が関わっていることが判明した。 2.1-MeAde刺激からCdk1の初期活性化に至る経路として、Gbgの下流には、上述のPI3K-PIP3-Akt経路(typical Gbg経路)を介さないが、Cdc25とMyt1のAkt部位リン酸化を促進する別経路(atypical Gbg経路)も存在する可能性を見出していた。そこで今回、PI3Kには結合しないGbgの変異体(D246S)を作製・活用して、atypical Gbg経路が実際に存在することを示した。 3.これらの結果から、1-MeAde刺激によるCdk1の初期活性化の閾値設定において、Cdk-NFと拮抗する相手方には、typical Gbg経路だけでなくatypical Gbg経路も含まれるといえる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
Cdk-NFによるCdc25とMyt1のAkt部位の脱リン酸化ついては、フォスファターゼの活性化とAkt活性の低下の関与が予想される。今回、細胞内において実際にフォスファターゼが活性化していることを示せたのは、in vivo系の複雑さからいっても、大きな進展である。しかし、このフォスファターゼの実体や、Akt活性の低下の有無の解明は、次年度に持ち越したといえる。
他方、atypical Gbg経路が存在することを、Gbgの変異体を用いて実験的に証明できたのは、大きな進展である。これまでの研究ではtypical Gbg経路のみを考えていたので、この発見は、単に本研究課題の閾値設定機構だけでなく、1-MeAde下流でのCdk1の初期活性化機構の解析に大きなインパクトをもつと予想される。
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Strategy for Future Research Activity |
Cdk-NFについては、フォスファターゼの実体解明が優先すると考えられる。しかし、上記の評価でも述べたように、atypical Gbg経路の存在証明は、これまでの1-MeAdeからCdk1に至るシグナル伝達解析について根本的な再考を促す必要を示唆している。そのため、今後の研究で最優先するべきは、atypical Gbg経路の実体解明、特にatypical Gbg経路は何をしているのかの解明であると考えている。
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