2016 Fiscal Year Annual Research Report
炎症反応と低酸素応答を調節するバイオプローブの作用機序と情報伝達の分子基盤の解明
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16H04910
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Research Institution | Kyoto Institute of Technology |
Principal Investigator |
片岡 孝夫 京都工芸繊維大学, 応用生物学系, 教授 (20242307)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
木村 賢一 岩手大学, 農学部, 教授 (30344625)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | kujigamberol / 4-O-methylascochlorin / ICAM-1 / HIF-1α |
Outline of Annual Research Achievements |
Kujigamberolは、岩手県久慈産琥珀から単離された小分子化合物である。ヒト臍帯静脈内皮細胞human umbilical vein endothelial cells(HUVEC)をkujigamberolで前処理した後、interleukin-1αで処理した。Kujigamberolはintercellular adhesion molecule 1 (ICAM-1)の低分子量化を誘導したが、ICAM-1の細胞表面の発現を抑制しなかった。一方、kujigamberolは、vascular cell adhesion molecule 1やE-selectinの発現量を低下させたが、それらの低分子量化を誘導しなかった。Kujigamberolで処理した細胞のICAM-1は、castanospermineや1-deoxymannojirimycinで処理した細胞のICAM-1と同程度の分子量を示した。Kujigamberolは、タチナタマメ由来のα-マンノシダーゼに対する阻害活性を示さなかったが、酵母由来のα-グルコシダーゼに対して部分的な阻害活性を示した。以上の結果から、kujigamberolはHUVECの糖タンパク質のプロセシングに作用するが、その作用は糖タンパク質によって異なることが明らかになった。 4-O-methylascochlorinは、HIF-1αのプロリン水酸化を阻害した。Hypoxia response element (HRE)応答性のルシフェラーゼレポーターを構築し、ヒト繊維肉腫HT-1080細胞にトランスフェクトした。4-O-methylascochlorinは、HRE応答性ルシフェラーゼ活性を顕著に亢進した。さらに、プロリルヒドロキシラーゼPHD2を一過的に発現させたHT-1080細胞において、4-O-methylascochlorinで処理すると、PHD2とHIF-1αの分子間相互作用が観察された。以上の結果から、4-O-methylascochlorinは、HIF-1αのプロリン水酸化を阻害することによって、HRE応答性遺伝子の転写活性化だけでなく、HIF-1αとPHD2の相互作用を安定化する作用も有することが明らかになった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は、おもに炎症性サイトカインの情報伝達や遺伝子発現に対する小分子化合物の作用機序、及び低酸素誘導因子の情報伝達に対する4-O-methylascochlorinの作用機序の解析を行った。Kujigamberol、4-O-methylaschochlorin、allantopyrone A、五環性トリテルペノイドの作用機序について有意義な研究成果が得られ、論文発表と学会発表を行った。
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Strategy for Future Research Activity |
今後、炎症反応や低酸素応答を調節するバイオプローブに関して得られた研究成果をさらに発展させ、論文発表や学会発表を積極的に行う。さらに、NF-κBの情報伝達に関与しているタンパク質の生理機能の解明に取り組む。
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