2016 Fiscal Year Annual Research Report
マングローブ植物への新たな窒素供給経路の検証ー呼吸根通気システムと窒素固定
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16H04941
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Research Institution | National Institute for Environmental Studies |
Principal Investigator |
井上 智美 国立研究開発法人国立環境研究所, 生物・生態系環境研究センター, 主任研究員 (80435578)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
下野 綾子 東邦大学, 理学部, 講師 (30401194)
高津 文人 国立研究開発法人国立環境研究所, 地域環境研究センター, 室長 (30514327)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | マングローブ / 呼吸根 / 窒素固定 / メタゲノム / 安定同位体窒素 |
Outline of Annual Research Achievements |
申請者はこれまでに,マングローブ植物の根圏で活発な窒素固定が行われていることを見出した.本課題では,(i)マングローブ植物の有機物生産は根近傍の窒素固定バクテリアの活動に支えられている.(ii)マングローブ植物の呼吸根(通気組織)を介した空気輸送経路が窒素固定菌への窒素供給経路として機能している.という,これまで想定されてこなかった新たな仮説を検証し,マングローブ植物の窒素獲得プロセスを明らかにすることを目的としている. 平成28年度は,マングローブ植物の呼吸根に発達している通気組織が地下部の根へのガス供給経路になっていることを検証するための計測系の設計を行った.大気ガスの流入口となっていると想定している皮目(地上部に露出した呼吸根表皮に見られる孔)部に設置する密閉型のチャンバーを製作した.チャンバー内のガスが均一になるように小型のファンを設置し,必要に応じてチャンバー内にガスを注入できるようにした.チャンバーの密閉性や均一性について検証実験を行い,改良を重ねて,実際の計測に使用できる計測系が完成した.また,マングローブ植物ヤエヤマヒルギの根系に存在する窒素固定バステリアの群集構造を明らかにするため, マングローブ林内の土壌と植物根からバクテリアの遺伝子を採取しメタゲノム解析を開始した.解析の途中であるが,根内、根圏土壌、干潟土壌では異なる窒素固定バクテリア群集構造が形成されていることが明らかになりつつある.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は,マングローブ植物の根通気組織がガス供給経路として機能していることを検証するための計測系の設計に従事した.個体によって異なる複雑な形状をもつ呼吸根に設置できるチャンバーを製作し、実際に検証実験に使用できることの確認まですることが出来た.また,窒素固定バクテリアのメタゲノム解析について、マングローブ林内と干潟で採取したサンプルを用いて,遺伝子の抽出・解析手順の感触をつかむことが出来た。 以上のように,次年度研究へ繋がる知見を順調に得る事が出来ている.
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Strategy for Future Research Activity |
設計・製作したチャンバーシステムを実際のマングローブ呼吸根に設置し、ガス供給経路の検証を行う.マングローブ植物は種によって呼吸根の形状が異なる(支柱根、膝根、筍根、板根なそ)が、まずは支柱根を持つヤエヤマヒルギで計測を行う.通気組織の中を実際にガスが流れていることと、窒素固定バクテリアによって窒素が固定されていることを安定同位体窒素で検証する.また,マングローブ植物の根近傍の窒素固定バクテリア群集構造について,メタゲノム解析を継続する.
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Research Products
(11 results)