2017 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
16H04988
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
仙田 徹志 京都大学, 学術情報メディアセンター, 准教授 (00325325)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
有本 寛 一橋大学, 経済研究所, 准教授 (20526470)
松本 武祝 東京大学, 大学院農学生命科学研究科(農学部), 教授 (40202329)
金子 治平 神戸大学, 農学研究科, 教授 (40204557)
藤栄 剛 明治大学, 農学部, 専任准教授 (40356316)
草処 基 東京農工大学, (連合)農学研究科(研究院), 講師 (90630145)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | ミクロデータ / 戦時体制期 / 戦後改革期 / 農家経済 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、戦時体制期・戦後改革期に我が国で実施された複数の農家調査の復元と分析を行うことである。対象となる農家調査は、東京大学、京都大学に所蔵されている戦前期の資料であり、農林省によって実施された「農家経済調査」、「主要産物生産費調査」、「土地売買事例調査」や、京都帝国大学農林経済学教室で実施された「農業経営聴取調査簿」、ならびにその付帯調査として岡山県児島郡興除村で実施された「土地表」、「家系調査表」、「自動耕耘機普及状況」である。本研究により、貴重資料の体系的な保存と、今後のアーカイブズ構築に向けたメタデータが整備され、戦時体制期の統制経済や戦後の農業改革が農家経済に与えた影響を、より精緻に解明することが可能となる。 平成29年度は、28年度に続き、京都大学に所蔵されている「主要農産物生産費調査」の基礎的な整理を実施し、目録作成を行った。また、東京大学に所蔵されている各種資料についても、一次整理を行った。東京大学での一次整理の結果、「土地売買事例調査」をはじめ、「土地所有調査」など、戦前期・戦後改革期における農家調査等の資料の所在が明確になった。「農家経済調査」も新たに発見された。以上のメタデータ整備とともに、利用可能になった資料群、データセットについて、戦前期の定性的、定量的なアプローチを行った。その結果、生産性と規模の逆相関関係や裏作として藺草の導入の意義を、復元した農家調査の個票の再集計により、新たな知見を得ることができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究では、戦時体制期・戦後改革期に我が国で実施された農家調査の復元と実証分析を行う。新たにデータセットの構築を行うものについては、資料の散逸、破損を防ぐために、まず撮影を行い、その後、メタデータの作成、データセットの構築を行う。 平成29年度は、28年度に続き、構築に着手している既存のデータセットによる予備的分析と、新たなデータセットの構築に着手する。新規分については、資料の概要を把握するための一次調査と資料撮影にむけた基礎的整理を行った。また、資料撮影を終えたものについては、二次調査として各資料の詳細なメタデータの作成を行うこととなった。京都大学と東京大学で所蔵している資料については、昨年度の一次整理をもとに、二次的な整理に着手した。東京大学で所蔵資料ついては、二次整理の結果、資料の年度、地理的な所在が明らかとなり、さらに資料群の概要が明らかとなった。また、京都大学所蔵の「主要農産物生産費調査」も二次整理を終え、同資料の年度、品目別の所在が明らかとなった。品目別では60品目あまりの資料が残存し、年度は限定されるが、年度と品目ではかなり高い残存を示すものがあることも明らかとなった。すでに構築されているデータセットからは、復元した農家調査の個票の再集計により、新たな知見を得ることができた。庄内地方を対象に行った分析では、山形県庄内地方の稲作でこの逆相関がみられるか、またその潜在的な要因となる農地貸借市場は効率的だったのかを検証し、検証の結果、生産性および投入強度について、明瞭な逆相関関係はみられないことを明らかにした。戦前期に岡山県で実施された「農業経営聴取調査簿」を用いた分析では、裏作として藺草の導入の意義を明らかにした。以上の結果は、両大戦間期日本における農家の酒と煙草の消費支出の分析も含め、論文としてとりまとめられており、本研究は、順調に研究は進んでいるといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度以降は、以下のような形で本研究を進めていく。 平成30年度も、基本的に、平成29年度までと同様、戦時体制期・戦後改革期に我が国で実施された農家調査の復元と実証分析について進めていく。新たにデータセットの構築を行うものについては、資料の散逸、破損を防ぐために、まず撮影を行い、その後、メタデータの作成、データセットの構築を行う。 平成30年度は、29年度までに引き続き、構築に着手している既存のデータセットによる予備的分析と、新たなデータセットの構築に着手する。新規分については、資料の概要を把握するための一次調査と資料撮影を行う。資料撮影を終えたものについては、二次調査として各資料の詳細なメタデータの作成を行うこととなる。一方で、構築に着手しているデータセットからは、それぞれの調査の調査内容に応じて、戦時体制期・戦後改革期の世帯人口変動、農家経済の生産効率性、人的・自然災害への対処行動、世帯内の労働時間配分、資産蓄積行動などの予備的分析により、分析課題の明確化が行われる。また、戦時体制期の固有の課題を明確にするために、すでに構築されている両大戦間期のデータセットからの分析もあわせて行う。平成30年度は、これまでの3カ年のまとめのカンファレンス等の実施も計画する。 平成31年度も、基本的に、過去3カ年と同様の内容で研究を進めるが、最終年度であるために、研究期間全体の成果のとりまとめを念頭においた活動となり、これまでの研究成果を学会等にて発表していくことが中心となる。また、データセットや目録等の公開は、29年度に引き続き、分析を終えたものからアクセス可能な状態に順次していく計画である。
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